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勇者などいない世界にて(原本)  作者: 一二三
第一章 二つの世界
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第一章30 大侵攻 〜綻び〜


 突然のことだった。目の前のイッポスから闇の気配がなくなると同時に苦しみ出したのだから。

 当然のことに、ハンニバルとナハトはそれぞれ焦りの色を出すも、何も対処できない。見ていることしかできず、ただただ固まっていた。



 彼らは知らないことだが、それは以前、メイアの身にも起こった現象だった。

 何かが割れるような音がすると同時に、メイアは突然苦しみ出し、そして正気を取り戻すという現象が起きたことがある。それが今こうして、イッポスの身にも起きている。

 いや、イッポスだけではなく、実は他の場所でも起きていたと言うのが正しいだろうか。



_____ある場所では



「ぐ、んんんッ、ゔぁあ……あ」


 閉ざされた空間。そこは闇で、床に張られた魔法陣が唯一の光源。そんな場所で昏睡状態に陥っている者もまた、苦しんでいた。

 何よりも幸運だったのは、昏睡状態にあると言う点だろうか。彼女、バーティが目覚めていたならば、手を拘束され自由に動けないその状態で激しい苦しみを体感しなければならなかったのだから。


「んぐ、ぁぁ……」


 闇の中で、長い間彼女の苦しむ声は続いていた。




_____ある場所では



「ゔっ!あ……な、なんだ、この激しい痛みはぁッ!ぐぉぁあ、くそ、くそっ」


 豊かな大地に囲まれ、しかしそんな中で木によりかかって苦しむ者がいた。独りで森を歩いていたところ、なぞの音と共に喪失感に襲われたと思ったら今度は突然の頭痛が襲い、立ってもいられず木に寄りかかったところだ。


 彼、ザガンはアンスターから追い出され裏という世界まで戻されたわけだが、このまま帰ったらラグラスロや他の奴らに殺されそうだな、とか考えながら歩いていた。

 しかし、頭痛に苦しんでいる今、苦しいはずなのに、何故か清々しくも感じている。


 何かが割れる音がしてからそうだ。自分の中に渦巻く悪い流れがなくなったような気がして、もう向こうの暗い世界に行くのも億劫に感じ始めてしまっている。



「ちょいとここで……苦しいが、一眠りでも、するか…な」



 己に課せられた侵略という任務を放棄して、彼は眠りについた。




_____ある場所では



「え……はァ? なにが、どうなッてんだ。足元がふらついて、頭が痛くなッてきやがッたぜェ?」


 大きな遺跡の見える荒れた戦場で、疑惑の声を上げる者がいた。


「_______!」


 そして、その隙を見逃さんと一閃が男、カラピアを襲い、胴体は貫かれる。

 貫いたのは氷の薙刀。つまり、メイア・スマクラフティーの攻撃だ。彼女は既に業炎を身に包み焼け爛れ、死の一歩手前と言っても過言ではない状態で戦っていた。



「ふがぁ……お、オメェ……の、勝ちッて訳かァ。ッたく、仕方ねェよな、俺が、隙を見せちまッたんだから、なァ。にしても、頭が痛ェよ。貫かれたのなんてどうでもいいくれェにな……」



 ばさっとカラピアは崩れ落ちる。ついに、メイアはカラピアを破ってみせたのである。

 が、戦闘が終わると同時、ついに執念の心も尽きたか、メイアも同じく崩れ落ちてしまった。しかも、燃えたまま。



「メイアさんっ!」


 そこに駆けつけた女性、ミステルーシャ・アプスがメイアを呼ぶ声ももう聞こえない。

 ルーシャが侵略者ゴースとの戦いで受けたダメージを回復させ駆けつけなければメイアは死んでいたことだろう。



「生きてもらわなくちゃ、困りますからね!」



 2人の侵略者ゴースとカラピアは、既に2人の女性に討たれ苦しむことなく眠っていた。

 もうそこには、ルーシャの声しか響いていない。


 遠くに見える月の光に照らされて、響いている。




_____ある場所では




「う、うおおおおぉぉ! 痛い、痛い! あの巨人に殴られるよりも、痛い!はぁ、はぁ、はぁ、無理だ、耐えられないかもしれない……」


 簡素な村の中心で喘ぎ苦しむ者が1人。


「かはっ!ぐ、ぐおぉ、これは……俺の身体が悲鳴を上げ始めている。まだ2分もたっておらんのに、もう駄目なのか」


 いや、苦しむ者はもう1人いた。



 前者は痩せ細った鎖の侵略者、アスタロだ。彼は他の侵略者同様、パリィンと心の奥底の枷が外れたような音とともに苦しみだしており、全身につけられた無数の切り傷など気にしてすらいないらしい。


 そして後者は、そんなアスタロに無数の数をつけた男、ダルジェン・サーケである。彼は『魂の輪舞曲(アニマ=ロンド)』という魔法で警備班員の魂と融合、そして燃えるような闘志を見に宿し、ほとばしる戦闘力を手に入れていた。

 しかし、人の身で10人分の魂を吸収したら、だれがそれを耐えられようか。限られた器に、その容量を超えた力を注いだら壊れるのは当然のこと。

 ダルジェンの身体では1分耐えるのもやっとと言ったところである。



「ダ、ダルジェン!どうしたの!敵、敵があなたの攻撃に苦しんでいるわ!早くトドメを刺さないと!」


 そしてもう1人、2人の戦いを傍観していたエスティア・シンシアも喋り出す。が、


「いいや、エスティア。彼奴はこの剣の傷に苦しんでいるのではない。もっとべつの、さっきの音が原因だろうか」


 エスティアの言葉に返すと同時、ダルジェンの纏っていたオーラが消失し、普通のダルジェンに戻ってしまった。そして、追い討ちをかけるように強い力を行使した反動が返ってくる。


「はぁ……はぁ……エ、エスティア!お前が、あいつにトドメを刺すんだ。もう俺は動けない、お前がやるしかない!」


「え、あ……わかったわ!私に、あとは私に任せてちょうだい!」




 そして、レイピアを強く握り、頭を抱えてのたうち回る痩躯を、ひと突き。アスタロは亡き者となった。




_____【侵略者 対 光の世界の住民】はこうして終了した



 不運にも侵略者達を襲った不快感の喪失と、不快な頭痛。これが大きなきっかけとなったことは言うまでもない。メイアやダルジェン、エスティアはこれがなければ負けていただろう。

 この突如一斉に起きた異変は何が原因なのか。それは今は誰にもわからない。



 だが、残るは、闇の世界のグラン達だけだ。それさえ終われば世界は平和に。グランは勇者となり得るかもしれない。




_____時は、最終決戦の、グランが眠りにつく時点まで遡る



 乾いた風、時の変化もわからない、そんな、ひたすらに暗い場所。

 そこで横たわるグランとファーストの姿と、それを見下すラグラスロ____否、リゲイリアスの姿。



「弱い、ただ弱い。此度もハズレだったか……或いは、今までに比べればアタリだったというべきか」


 既に決戦に決着はついている。終焉を迎えている。


「我の姿を取り戻させた汝を祝して、特別褒美をやろう」と竜は呟き、何かを唱えるように続ける。


「本来在ルベキ光ノ意思ヲ、此処ニ呼ビ戻シタモウ」



 誦んずると、遥か上空、深淵に塗りたくられた空に、白い弧が浮かび上がる。その円の中を塗りつぶすように、少しずつ白い光を帯び始め、完成する。

 世界を覆う蠢く闇とは似ても似つかぬ、相反するそれは光のカーテンで世界を優しく照らし始める。


「汝らの功績を讃え、この世界から月を復活するさせてやろう。それも、太陽の光なしに世界を照らせる月を、な」



 月の慈しみのカーテンはグラン達を照らし、



「無様よな。期待された者が敵の前で地に伏し、汝らが求めた光によって無様な姿が晒されることになるとは」



 だが、だからこそ、この物語は終わらない。



(なんじ)が光を復古させるなど、此度の失踪者は相当お気に召したということか」


 その声は、リゲイリアスのものでは無かった。しかし、グランのものでもフィーストのものでもない。

 もっと歳をとっている男の声。それが聞こえた瞬間、場は凍りつくように変わった。


「何故、ここにいる。動けぬはずの亡者めが」


「爾を滅す為。それだけの為。今宵、この月の光に照らされて、彼は爾を討つ」



 初代失踪者にして名もなき古城の王、デアヒメルが月明かりの下に登場した。


珍しく短くなりましたね。

というのも、これは今までのVS侵略者の戦闘を簡潔に完結させたかったからですね。


さて、これを読んでいる方は、この先の展開がどうなるか予想できますでしょうか。

是非、予想しながら読んで頂けると嬉しいです!


ではまた次回もよろしくです

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