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勇者などいない世界にて(原本)  作者: 一二三
第一章 二つの世界
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第一章16 裏を目指して

ガタゴトと揺れる馬車に乗って何日が経ったろう。外を見ると長閑(のどか)な平原が広がり、動物が自由気ままに生きている姿を見ることができる。

しかし、そんな景色はもはや見飽きたと言ってもいい。


「お嬢ちゃん、目的地まであと一時間くらいだからあと少しの辛抱だよ〜」


「あ、はい。わかりました〜」


この馬車を毎日のように走らせている御者の人はどんな気持ちでこの仕事をやっているのだろうだとか、そんな考えが頭をよぎるも質問する気は起きない。


大都市ユニ・ベルグズを去ってから、メイアは真っ直ぐアル・ツァーイへ向かっている。

行きはお金を稼ぐため途中下車しながらの旅だったため、多少は気分を紛らわすことができていた。

しかし、帰りは大都市で貯めておいたお金があったため途中下車することもなく、ただただ退屈な時間が過ぎている。


「まあ、長旅ってこんなもんだよねぇ……」


いつか長旅をとても楽にする魔法やらアイテムを開発して欲しいなぁなんて思いながらため息をつく。

転移系魔法を応用すればその可能性は捨てきれないのではないかと思いつくも、途方もない作業になってしまうので今はできないだろう。

それをやるならば、世界を跨いだこの戦いに終止符を打ってから、或いは兄を奪還してからということになるだろう。


そして、特に何も起きずに1時間が経ち……


「着きましたで、お嬢ちゃん。にしても、こんな辺境の地まで大変でしたでしょう。ゆっくり休んだ方がいいですぜ」


「はーいわかりました!」


馬車から降りて御者さんに別れの挨拶を告げる。

馬車が大きく揺れながら走り去っていくのを見送ったところで、メイアは再び歩き出す。


別に、馬車の旅が終わったからといって村に着いた訳ではなく、ここから更に1時間ほど歩かなければならない。

精神的には既に疲労状態のメイアだが、1ヶ月以上にも及ぶ過酷な訓練によって肉体面に於いては余裕であった。

身体は自然と動くのに、心がそれを望んでいない。


退屈とは、訓練するよりも酷かもしれないとそう思うのであった。


例のごとく、ただただ歩くだけの時間が過ぎてゆく。

村まであと少しというところ、ようやくここまで来たかと思いながら林道を1人ぽつんと歩き続ける。

しかし突然、孤独による沈黙が破られることになる。


「おいおィ、こんなところに女1人かよ?危ねェぜ?」


「……っ?! だ、誰?!」


木の陰から現れた男……男達は全部で7人。これがメイアに送り込まれた刺客なら、非常に厄介なのだが……


「ってオメェ、まさか、あの時の女か?!」


「あの時って……あー、その格好、盗賊さんね? なに、また悪さしてたの? 改心したんじゃなかったの?」


「おいおい、やめてくれよ。僕たちは改心したさ。今、僕たちは村の人たちと話し合ってここ一帯の警備を務めているんですよ」


メイアを見て若干恐怖を抱いているようだが、疑惑を晴らそうと必死で訴えかけてくる。

だが、まさか盗賊だった彼らがアル・ツァーイの警備役を務めることになるなんて思ってもなかった。


「ふーん、そう。じゃ、私を村まで案内してくれるの?」


「オメェは十分に強いから大丈夫だと思うげどよォ……いや、なんでもねェぜ」


「よろしくね!」


自然と圧のこもった口調になってしまったが、それが余計に彼らを恐怖に包み込んでしまったようで申し訳ない気持ちになる。

しかし、"退屈"が解消されたことでメイアの疲労も同時に解消されていき、微笑みがその顔に蘇っていた。



そこから村まで、全く飽きることもなくスムーズに進むことができた。

久々の村の門、帰ってきたという実感がやっと湧いてくる。



「おぉ!元盗賊ども、戻ってきたか! んで、戻ってきたってことは何かあったのか……? って、お前、メイアか?!」


そこにいたのは、村の警備班班長のダルジェン・サーケだ。

豪放磊落にして豪胆無比なその人柄は村人からの好感も高く、誰もが認める村の代表の一角だ。

硬くどんな攻撃も通すことを許さないような屈強な鎧を着ており、皆から頼りにされている。


「ダルジェンさん、久しぶり! 警備班の皆は元気?」


「おうよ、あいつらはいつでも煮えたぎってるぜ。ひとまず、村長のところへ行こうや。グランの奴がいねえってのを見ると、何か用があって戻ってきたんだろ?」


「うん、その通り。元盗賊さん、ここまでありがとね」


その感謝には、村まで送り届けてくれたことに加え、精神の疲労を和らげてくれたことも含まれているが、元盗賊の7人には前者の内容の感謝しか受け取っていない。

メイアにしかわからない感謝の意味。伝わらなくてもいいと、言葉にするだけでメイアは満足だった。


「ダルジェンさんも一緒に来る?」


「そのつもりだぜ。俺もメイアの話を聞いておきたいしな」


「わかった、じゃあハバキリさんのところに行こっか!」


ハバキリ、即ちこの村の村長である彼女のもとへ2人で向かうことになった。

やはり故郷とはいいものだ、と歩きながら感じていた。

道のりで何人もの村人に出会い、手を振って挨拶をしながら移動していたので村長の家までそう時間が掛からなかったように感じる。とは言っても、村もそんな大きくないので実際に少ししか時間は経ってないのだが。



「ハバキリさーん!久しぶりです!」


「おや、メイアじゃないか。もうグランを連れ戻してきたのか?」



「いや、それがまだなんです。今日は、奪還のために必要なものがこの村にあるので取りに来たんですよ」


「この村にそんなものがあるのかえ? わしゃそんな物は聞いたことないが……」


初耳の情報を聞きハバキリはその顔に深い皺をつくる。悩める時も怒れる時も、彼女は深い皺を顔に刻む。

そんな老軀であったとしても常に元気があるのは非常に素晴らしいことだと今更ながらに思う。


「そういやそうだな。俺もメイアが何を取りにきたのか想像できねぇよ」


「それが……」


メイアはユニ・ベルグズで知った情報、『オリ・ロート』のことや裏のことについてなど、様々な情報を共有する。


「ふむ、そうじゃったのか。まさかグランの魔法が裏の人類到達不可地に道を切り開く鍵だったとはな……これも不思議な巡り合わせ、或いは必然なのやも知れんがな」


「この情報はエスティア達にも共有しといた方がいいかもな村長。ちょっくら俺があいつらのところへ行ってくるぜ」


「それが良いの。メイアも、ここまでくるので疲れとるじゃろう。家に帰って今日はゆっくりするといい」


「うん、そうだね。じゃ、ハバキリさん、ダルジェンさん、さようなら!」


「おう、またな!」



まだ村に帰ってきて30分経ったか経ってないかくらいだが、一度も休憩してないのでそろそろ休んでおきたい。

いくら修行によって持久力がついたと言っても疲れるのだ。

村長の家からスマクラフティー宅まで近いのが救いだ。


のどかな雰囲気、安寧の村、どれも辺境だからこその良さである。大都市もいいところだが、何しろ広すぎて土地を把握できないのが難点だと思う。

とは言っても他の都市がどんなか知らないので一概に難点だとは言えないのだが。



「ふぅーー。我が家はやっぱいいね〜ゆっくりできるよ」


綺麗に整頓された家のベッドに横たわると眠気が襲ってくる。やるべきことは山積みだが、この日くらいは休憩させてくれと、その眠気を受け入れる。

帰省の際に負荷をかけられた筋肉が、今まで蓄積してきた隠された疲労が、休息によって回復される。

超回復とまではいかないまでも、かけられた負荷を修復することにより筋肉がより強固になるのは確かだろう。


追い込むだけでは身を滅ぼす。休憩だけでも身は廃れる。

鍛錬と休憩は表裏一体、それを忘れてはいけない。



_______夢を、見ていた。


お母さん、お父さん、お兄ちゃんがみんないて、みんなで修行している、そんな楽しい夢を。


父母は私たちの修行を笑顔で見ているのがほとんどだったが、それがとてもモチベーションに繋がって。


お兄ちゃんは、私が知らない、今まで見たこともないような技を私に見せてくれた。

魔法球から魔力が溢れ出るなんて、そんなの初めてみたよ。

知らないうちに、お兄ちゃんもずっとずっと強くなっていた。でも、私も強くなったんだよって伝えたかった。


伝えようとしても、声が出なくて、出し方も忘れちゃって。

そして、突然村を巨大な闇の雲が覆って、私以外の何も見ることができなくなって、孤独になって、それで。


もう、そこには何もなかった_______




意識が覚醒し、メイアはベッドから飛び起きる。

起床してすぐの曖昧な意識の中、外からは鳥の囀る声が聞こえるのを確認し、もう既に朝であることを認知する。

特にやることも思いつかないので、身支度を軽く済ませ家をでる。


日の光が雲の間から差し込んでくる。

夢でみた暗黒の雲が現実になった訳でないことを視認したことで安堵のため息が溢れる。



「あら、久しぶりね!」


「あ、エスティアさん久しぶりです」


「昨日ダルジェンから色々聞かされて驚いたわ。またすぐにこの村を出て行くんでしょ? ならその前に資料室に寄っていきなよ。何か有用なものが見つかるかもしれないし」


「そうですね、じゃあ後で伺います」



村の集会所資料室の司書を務めるエスティア・シンシア。彼女もまた、村が認める優秀な人材の1人である。

彼女はとても可憐でスタイルがいいため村の人々から好かれており、非の打ち所がないと言っても過言ではない。

しかしメイアは、彼女のスタイルの良さに少し違和感があると感じている。

とは言っても何に違和感があるのか説明はしにくく、ただ感覚的に何かが不思議だなと感じただけだ。



そして一旦、2人は別れそれぞれ別の方向へ歩き出す。

メイアには別に行くところもないのだが、久々の村を散策することにした。



「って、いやいや、そんなことしてる暇じゃなかった!」



昨日の時点で家に原初の炎があることは確認済みである。

だからもうすぐに出発することはできるのだが、先程エスティアに資料室に行くと約束していたので急いで向かう。


「エスティアさーん!やっぱ今から行きます! 私早くお兄ちゃんを探しに行かないといけなかった!」


「ふふっ、よかった。メイア、元気だけど虚空を見つめるような表情してたから、心配してたのよ」


「そうですね、ちょっとぼーっとしちゃって」



今やっと、本当の意味でメイアが眠りから覚めた。さっきまで、思考の放棄によって起きているようで脳は起きておらず、ここまでの身支度やエスティアとの会話は無意識位に行われていたものだった。


それはやはり、未来への不安によるものだろう。

これ以上辛い思いをするのはごめんだ、嫌だ。そんな思いの表れが、今朝見た夢にも影響したのかもしれない。


メイアは自分の頬を両手でパチンと叩き意識を引き締める。


「よし!早く行きましょ!」


「ちょっとちょっと、そんな急いでも私が行かないと資料室開けられないんだからね!」



==================



「なるほどな。つまり次に向かうべきは南方都市アンスターというわけじゃな?」


小さな部屋に広がった声の音源は村長ハバキリのものである。エスティアを除いた村の主要残物3人が集まり、次にメイアがどこに行くべきかを話し合っているのだ。


「はい、そうです。その地に裏へ行くための場所があるらしいが、どうやらそこは禁忌とされ封を施されているようなのです」


「そりゃあ厄介だな。だが、それは危険だから、だろ? メイアが力を見せつけてやりゃあ通してくれるんじゃないか?」


「そう簡単に行けばよいがの……」



アンスターとはこの世界の南方に位置する小さな街である。

街の周りには遺跡などが点在しており、それらを調査する為に建てられたのがその街の始まりである。

しかし調査が行われたのは100年も前のことなので、その地はかつてほどの人気もなく静かな街として知られている。


ただ、アンスターは世界で唯一、裏への道の整備権を認められているという特徴がある。

遺跡調査の過程で見つかった裏へ繋がる地点だが、今のところまだ世界でもこの地域でしか見つかっていないのだ。

故に、考古学者などから凄い人気を馳せ、アンスターでは良く学者を見かける。



「そうですね、封を解放してくれるか否かはメイア女史の力量次第ということになるでしょう。それは致し方ない」


「てかよ、グリムお前政務担当だろ? 持ち前の対人スキルで説得とかできるんじゃねえか?」


「もしかして、私にアンスターまで行けと言っているんですかね。はぁ、ダルジェンは毎度毎度よくそんなに凄いことを思いつけるものですね」


「じゃが、わしはその意見に賛成じゃの。グリムの政務能力は折り紙付き。説得、もとい言いくるめが上手じゃろ」


「言いくるめとは酷い評価ですね……」



村の政務を担当するグリム・ベム。

見るからにエリートを思わせるその風貌は初見では冷酷な人間だと勘違いされやすい。口調も堅い印象が強いので、彼を余り知らない人は絡みにくいと感じる者も多いだろう。

しかし、グリムは人を観察して思いやることに長けた温厚な人間なのだ。


「だからよ、俺はお前がメイアと一緒にアンスターまで行ってお偉いさんを説得するのが一番だと思うわけさ」


「はいはい、私もわかってますよ。禁忌を犯すことを簡単に許してくれるとは思ってませんが、やりがいがありますね。とても滾ってきますね」


グリムの得意なことは話し合いである。話し合いをすることで新たな知見を広げていくことができるし、何しろ人の心理を、考えを知ることでより深く相手を知れるというのに魅力を感じているからだ。だから今回も、


「私がこの村を一時的に出ることを許して下されば、確実にメイア女史を裏まで行かせてみせましょう」


討論大好きなグリム・ベムは笑みを浮かべて断言した。



==========================



「え、グリムさんも付いてきてくれるの?! 良かった〜。私の力だけじゃきっと裏への道を開けてくれないと思うから、頼もしいね!」


「それは私としても嬉しい限りです。必ずや道を切り開いてみせます故、期待してください」


「もちろん!」



村の入り口付近に停められた馬車に乗ろうとしたメイアだったが、既に中にグリムが乗っていたことに「ええっー!」と驚愕する。

その後彼から同行についての説明を聞いていざ出発、というのがここまでの大まかな流れだ。


「って、グリムさんが手綱を握るの?!」


「ええ、そうですが。御者を呼ぶのにお金をかけるなら私が馬車を操ればいいだけです」


「えぇー意外だね。今まで見たことなかったよ」


「見たことあるもなにも、メイア女史が私の仕事にほぼ興味を示していなかっただけだと思いますがね」



小言を挟みながら馬車は村を出て整備された道を高速で進んでゆく。

今までの旅では、乗客の安全を一番に考えた上でゆっくり進んでいくだけだった。しかし、グリムの引く馬車は安全を考慮し、それでいて手馴れた手つきで颯爽と駆け巡る。

これまでの退屈な旅とは違って、今回はすぐに目的地に着くような予感がしていた。



と、そう思っていたが馬車は馬車。当然時間は過ぎてゆく。


「あー、やっぱ退屈。グリムさん、なんかない?」


「なんかない?と聞かれても……そうですね、では今のうちに一瞬で街から街へ移動できるような魔法を網出せばいいのでは?」


「ここでやったら私馬車から振り落とされないかなそれ?!」


こんな調子で時間を稼いでいるが、そろそろ限界まである。

しかし、先程から石柱や崩れた建物などが点々と見られるということは目的地が近いということを意味して_____


ガタン!と馬車が急ブレーキする。その反動、慣性の法則によりメイアの体が大きく前へ押し出され頭が窓に激突してしまう。


「ったぁ〜。グ、グリムさん? どうしたのいきなり」


「いきなり止めてしまいすみません。ですが……」


メイアが窓から顔を出すとそこには巨大な障害物が。

いや、大きいがために障害物だと錯覚してしまったのだ。

実際にそこに()()のは岩を纏った鳥。

もっと的確に言うならば……


「これは、近頃巷で波乱を巻き起こしていると話題のフェストグリフォンです! なるほど、纏った岩の保護色で遺跡の石柱などに紛れるように生息、そして近くを通る我々を襲うという厄介な生態をしているようで」


「グリムさん!大丈夫よ、私がすぐに倒すよ!」


しかし、馬車を降りようとしたメイアに向かってグリムが鋭い目つきで掌を向ける。


「いいや、ここは私が引き受けます。メイア女史は私の馬車に乗る物、言わば客です。乗客に戦いを任せるような人間ではないのでね、私は」


「で、でも、このグリフォンについては村でも話したよね?冒険者がたびたび襲われて緊急指定モンスターになってるってこと! これには気をつけようって_____」


「_____ですから……私に任せろと言っている!私も久々に動けそうなんで血沸いているんだ」


血沸いている、という表現は正しいのだろう。ついさっきまでのグリムの丁寧な口調が変貌している。もはや荒んだ口調に丁寧さは見当たらない。

そして何処から持ってきたのか、彼の手にはレイピアが握られていた。鋭く研ぎ澄まされた銀剣は日光を受け一層白銀の輝きが強くなる。


「任せて、いいのね? ……わかった、見守ってるよ」


「それでいい、メイア。さあ、邪魔だそこの愚鳥。さっさとご退場願おうかおい!」


眼鏡を外し、レイピアの先端をグリフォンへ向け号する。

睨みつけるその気迫は普段の彼からは想像し得ない。


「さっさとご退場願おうかと言ったんだ!ほら、私の言った通りにしてもらおうか!」


鋭く、精密で、高速で、正確に、巨鳥の身体を突いて突いて傷をつける。それに負けじと岩の花で攻撃を防ぎ、強力な羽ばたきで岩を飛ばし反撃するも、鋭い白閃はそれをも貫通しいともたやすく身体に穴を開けてゆく。

グリフォンの羽ばたきは突風だ。

普通なら風邪を受ける面積を最小にして堪える必要があるはずなのに、荒れ狂う政務担当の彼は風がまるでないかのように走り回ってはレイピアで敵を貫いている。


今のメイアなら彼と同じように風を無視して動くこともできるだろうが、ひと月前ならそんなことはできなかったろう。

緊急指定モンスターとされている目前の鳥が反撃も許されず圧倒されるのを見ていると、グリムがこんなにも強かったのかと思い知らされる。 



あっという間に巨鳥の岩部分は粉砕されただの四つ足の鳥にしか見えない。血が吹き出し目は潰れ、何もできずに滅びてゆくのだろう。 そして……



「『ホーリーペネトレイト』! くたばりやがれぇぇっ!」



細剣に光を纏わせ威力を高めた一撃が心臓部に叩き込まれ、光が体の内側から爆発。

そのまま、臓器を破壊させられた巨鳥はゆっくりと倒れる。

近くを通った馬車を襲おうとしたフェストグリフォンがあっけなく返り討ちにされたなどと冒険者が知ったらどれだけ驚くことだろう。

メイアだって驚いた。戦いと全く関係ないと思っていたグリムがそれを成し遂げたのだから。



「す……す、凄いよ! グリムさん、凄い!」


言いながら、メイアが馬車を駆け降りてグリムのもとへ駆けてくる。


「ふぅ……いいえ、それほどでも。いや、メイア女史が私たちを知らなすぎるだけですよ」


「え、口調切り替わるのはや!」


「戦闘に入ると口調が変わるのは私の悪い点ですね。全く、お恥ずかしい限りです。あぁ、それと、これを機に言っておきますがね、私たち4人は皆戦えるんですよ。村長はもうご老体で戦いに参加はできないでしょうけどね」


「え!じゃ、じゃあエスティアさんも戦えるってこと?! そ、それは知らなかったなぁ」


「さあ、こんなところでゆっくりしている暇はありません。急いでアンスターへ向かいましょうか」


「って、ちょっと待ってよ〜!」



そそくさと馬車の手綱を握って出発の準備をし始めるグリムを見てメイアも急いで馬車に乗る。

ちなみに、倒したグリフォンは近くの街で報告すれば回収して資源にしてくれるため、持ち運べない場合は一旦放置しておくのも手だ。

今回のメイア達も、流石に馬車にはグリフォンを乗せられないので都市アンスターで報告するつもりでいる。



_____件の街まであと少しだったので飽きる暇もなかった。



「いやぁ〜古風な石造りの街ってのもいいね〜」


「観光気分ですか……まあ、そのくらい余裕でいた方があなたらしいですかね。私は先程のフェストグリフォン討伐を報告してくるので、メイア女史は禁忌の扉でも見てくるといいでしょう。私もすぐそちらへ向かいますので」


「わかったわ。そしたら2人でここのお偉いさんに扉を開けてもらうよう頼み込みましょう」


「ええ、ではまた後で」



2人はそれぞれ別々の方向へ歩き出す。

この街には初めて来るのでここらの地理に詳しくないが、明らかに異彩を放っているものが遠くに見えるのでおそらくそれが裏への道を閉ざしている扉だろう。

なら、迷うことなくその扉へ向かって歩くだけ。迷う心配は無いと言うわけだ。


てくてくと、てくてくと、一つの目的地に向かって歩く。

そしてそこに到着した時、遠くからではわからなかったその大きさに圧倒されそうになった。


「これが禁忌の扉……やっと、私のお兄ちゃん探しの旅が進んでるって実感が湧いてきたね」


これを閉じたと一言で言っても、こんなに重く硬い扉をどのように閉じたのかが全くわからない。

そもそも、これをどう作ったのかすら理解できないのだから開け閉めの方法なんて勿論考えられない。


「でも、閉められてるってことは開けられるってこと。待っててね、お兄ちゃん!」



そして振り向くと、丁度グリムが扉の前に到着していた。

お読みいただきありがとうございます!

また次回もお楽しみに!

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