■78.MOABはもー危ない!w スタヴァッティ社もスタンバイでい(江戸っ子)ってか!w
その大重量故に通常の攻撃機では搭載が困難であり、輸送機による投下が求められる怪物はパラシュートを展開したパレットに載ったまま、貨物扉から引き出された。
そしてC-2が離れるとともに、パレットから円錐状の弾体が離脱する。8トンを超える炸薬を内蔵した大規模爆風爆弾――通称MOABは姿勢制御用の翼を展開すると、そのまま人民革命国連邦軍・親衛軍集団司令部目掛けて加速していった。
親衛軍集団司令部のスタッフは、己に近づく死を知覚出来ないままこの地上から消滅した。
地上から数メートルの高度で炸裂したMOABは、1秒前後という僅かな時間で巨大な火球を生み出した。放射状に火焔と熱線が広がり、生体が熱さを感じる――その前に、爆心地周辺の地上建造物や地下壕は、トンで測られる規模の重圧を受けて圧し潰された。続けて横殴りの衝撃波が、地上に存在するもの全てを薙ぎ倒していく。
市街地の外れにある人民革命国連邦軍・親衛軍集団司令部と軍関係施設は、これまで真剣に敵の空襲に晒される可能性を想定してこなかった。
衝撃波によって壊滅し、半ば真空と化す爆心地。そこへ今度は外側から中心部へ爆風と、それに乗った瓦礫と炎が吹き戻っていき、地上に残っている人工物に襲いかかった。
一面に広がる大破壊。
それを睥睨するのは、立ち昇るキノコ雲である。
天地を揺るがす轟音に跳ね起きた市街一円の核心者らは、軍幹部らの墓標をただ茫然と眺めているほかなかった。
「司令部と通信不能?」
翌日の正午。
起床したばかりの独裁者カーブリヌ=ワンは、思わぬ報告を受けた。
人民革命国連邦軍・親衛軍集団司令部との連絡が途絶。加えて連邦南部の沿岸工業地帯が複数回に亘って爆撃を受け、深刻な被害が出ているという。
だがカーブリヌ=ワンは指揮系統の崩壊や生産施設へのダメージもさることながら、最前線の戦況を気にしていた。
「最後に親衛軍集団司令部が報せてきた戦線の位置は?」
と問うと、どうやら攻勢開始から戦線は動いていないらしかった。
「長期戦になるだろうな」
カーブリヌ=ワンは左右にそう伝えた。
容易く敵の防衛線を破り、息の根を止められるならばいい。が、そうなる見込みがない以上、南部の生産設備の疎開等も検討しなければならないだろう。
しかしこの時カーブリヌ=ワン以下、人民革命国連邦軍の指導者層は正確な日本側諸部隊の位置を把握出来ていなかった。友軍が不利に陥り、戦線が後退しつつあるという情報さえも、新たな軍集団司令部を立ち上げてようやく伝わったほどである。
実際のところ、日本側は旧ソ連めいた無停止攻撃を敢行していた。
環境省環境保全隊と国土交通省緊急災害派遣隊が先陣となり、戦線を突破して前進に次ぐ前進。さらに他省庁の諸隊が続き、そして追い越して敵地深くまで斬り込んでいく。対する人民革命国連邦軍の戦闘部隊は機動防御など夢のまた夢、敵味方の位置さえよくわかっていなかった。
「は? 敵?」
「おかしいだろうが……ここは最前線から150kmは離れているんだぞ!?」
予備戦力として後方に残されていた人民革命国連邦軍第112戦車師団は、突如として前方に現れた敵部隊との遭遇戦を強いられた。
遭遇戦、というよりも一方的に打撃されたに等しい。
第112戦車師団の物資集積所が航空攻撃を受けたかと思うと、移動中であった一部の車列もまた激しい砲爆撃に晒された。
「航空部隊は何をやっているッ!?」
第112戦車師団長は、激昂した。
彼は航空部隊が敵位置の通報を怠り、敵砲兵に対する対地攻撃にも手を抜いていると思ったのである。
現実には人民革命国連邦軍の航空戦力は大打撃を被っており、一部を除いては身動きが取れない状態に追い込まれていた。
「ドロップ」
無抵抗の第112戦車師団に襲いかかるのは、文部科学省・初等中等高等教導評価隊制空教導隊のSM-27Jマチェーテだ。
二重反転プロペラを機体尾部に備えるスタヴァッティ社製のこの戦闘攻撃機は対地ミサイルを次々と発射したかと思うと、機首を翻して飛び去って行く。
最大速度はマッハ0.6に過ぎず、ジェット戦闘機の前では無力に等しい。
が、AGM-65マーベリックなら8発、ヘルファイア・ミサイルであれば18発を装備可能。胴部には30mmガトリング砲を備えており、近接航空支援にはもってこいの低速航空機である。
とはいえ彼らはその30mmガトリング砲を使用するほど、戦闘空域に長居するつもりはない。
「油断するな。このポンコツじゃ、敵レシプロ戦闘機でも十分すぎるほどの脅威だ」
SM-27Jを駆る初等中等高等教導評価隊制空教導隊の隊員らは、地上でのブリーフィングで幾度も警告されていた。
「しっかしお偉方はなんで高等練習用軽戦闘機として、こいつを導入したんだ……」
スタヴァッティ社の営業がやり手だったのか、それとも採用を決めた当時の文部科学省関係者が無類の震電好きだったのかはわからないが(震電とは大日本帝国が第二次世界大戦末期に開発を進めていた戦闘機で、機体後部にプロペラを配している)、ただひとつ言えることは実戦で使うには少々……というかかなりしんどい性能であることだった。
軍事オタクからの評価は「邪神」「脆弱なA-10」「ルーデルも最初の被撃墜で戦死するレベル」と散々である。
それを全国の小学生・中学生・高校生を教育して回る初等中等高等教導評価隊制空教導隊の隊員らは、自身の技量を磨くことでカバーしていた。
SM-27Jと敵戦闘機イリーシャとの戦闘は、1度だけ生起した。
航空攻撃に向かう4機のSM-27Jに対して、有利な頭上からイリーシャが仕掛ける形で始まった空戦は、すぐさま彼我入り乱れての格闘戦となった。SM-27Jの対空兵装といえば、主翼下に2発抱えたAIM-9サイドワインダーのみ。AIM-120のように敵レシプロ戦闘機をアウトレンジできる装備はない。
(この21世紀に……ッ)
マチェーテの御者は内心で舌打ちをしたが無理に旋回することなく、速力を増してイリーシャを振り切り、優速を活かした一撃離脱戦法に移った。
また1機、また1機と撃墜されるイリーシャ戦闘機。
繰り広げられる蒼空の決闘の下では、日本側の地上部隊が快進撃を続けていく。
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次回更新は2月21日(日)を予定しております。
※この作品はフィクションです。作品内に登場するあらゆる団体・商品名・人名は架空のものです。
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せめて文部科学省はスーパーマチェーテを導入すべきでしたね……。




