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勇者とメイドさん その6

メイドさんのメインウェポン

復讐者(リベンジャー)ですか?」


「そ。まあ言ってしまえば、めちゃくちゃに強い暴漢が最近この近辺に出没するから、出歩く際は注意してねってこと」


「私怨で民衆に当たり散らすとか、復讐者でもなんでもないのでは。そもそもそこまで噂が広がっているのに、城は何してるんですか」


「なんでも神出鬼没で風のように去っていくらしく、毎回足取りを掴めてないらしい。そのせいでみんな外出は最低限にしてるとか」


 復讐ですか。一般市民の私には縁のない言葉ですね。



「ん……、それリベンジャーというかただの通り魔では」


「そこはね、騒ぎに集まった野次馬の一人が『リベンジャーとか大層に名乗ってるけど、お前ただの通り魔だろ』って叫んだ途端標的にされてたから、多分触っちゃいけないとこ」


「ええ……」


「かっこつけたがりな年頃なんでしょ。ただ実力は本物らしいだけにタチ悪いんだよね。漆黒の鎧に魔剣使ってるらしいから、見ればすぐわかると思う」


 魔剣所持ともなると強さはかなりですね。


「見かけたらこっそり逃げる。標的にされたらこれ使って。転移(テレポート)魔術の魔石、考えた場所に回数制限なしで移動できるから」



 そう言ってご主人様が手渡してきたのは、透き通る水色の魔石でした。魔石は基本的に使い捨ての道具、となるとこれは。


「ご主人様のお手製ですか」


「そそ。リベンジャー(笑)なんかに有能メイドさん取られちゃ、たまったもんじゃないからね」


「その口ぶりから察するに、ご主人様なら五秒とかからず制圧出来るのでは」


「やだ。こっちから探すの面倒じゃん」



 すぐにでもご主人様に排除していただけると、私としては非常に助かるのですが、面倒ならどうしようもないですね。注意して外出するとしましょう。




「!」


 数日後、食料品を買いに出た帰路の途中、人のいない路地に佇むリベンジャーとやらの後ろ姿を見つけました。相手はまだこちらに気づいていない模様。ならばするべきことは一つ。ご主人様には逃げろと言われましたが……。


 転移の魔石を握りしめ、懐に手を伸ばす。そして一瞬にして視界が切り替わり、リベンジャーの眼前に転移する。初対面の相手に挨拶は基本です。


「はじめまして」


 突如目の前に現れた私に驚いたのか、固まっているリベンジャーの真後ろに即座に転移。懐から抜いた傾国の聖剣を、リベンジャーの腎臓に突き立てます。もちろん九十度です。おや、体内から何やらミチミチとグロテスクな音が。


「二つあるので、迷惑料として一つもらっていきますね」


 声にならない叫びをあげて、頽れるリベンジャーとやら。これで回復するまで活動は大人しくなるでしょう。




「えっ、リベンジャー倒してきたの?」


「腎臓を一つもらってきました。こう、傾国でサクッと」


「そうじゃないから。危ないから逃げてって言ったよね」



 事の顛末を聞いたご主人様は呆れてるような、かつ悲しそうな表情でした。


「大丈夫です。メイドさんはそこまで弱くありません」


「メイドさんは慢心とかしないだろうけどさ、ほんとにこの世界には、魔王とか俺みたいな化け物じみた生物が潜んでるからさ、無茶な行動はやめてよね……」



よく考えればご主人様の心配も当然のことでした。私はどこにでもいるような一般的なメイドさん、相手は手練の戦士。今回は隙をつけたから良かったものの、一歩間違えれば死んでいたかもしれません。


「もし今日私が帰らぬ人となっていたら、ご主人様はどうしてましたか?」


「烈火の如く怒り狂って、リベンジャー(笑)を一年くらい苛烈な拷問にかけ続けた後、勇者の力を存分に使って世界を滅ぼしてたけど。それがなにか?」

 

「……えーと、そんなに私は必要なのですか」


「必要。『勇者あるとこにメイドさんあり』とまで言わせたいくらいには」



確証はありませんが、ご主人様はこんなメイドさん一人に対して、恐らく恋をしているんでしょうね。ただ私をそこまで想ってもらえる、というのも嬉しいものですね。




ご主人様に自覚はなさそうですね。

襲撃イベントは鉄板

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