勇者とメイドさんはその977
勇者といえば相対するは魔王。
「うげろげろォーー!!」
「メイドさん!? 何の前触れも無しに吐いちゃったけど、大丈夫!?」
「も、問題ありません。まだ本調子に戻りきっていないだけです」
「昨日は問題なかったけど、やっぱり寝てた方がいいでしょ」
突然メイドさんが吐いてしまった。まあ、げろげろしてるのはいつもの事ではあるのだが、気持ち悪いという意思表示や、決定的な原因の後であった。しかし今回は、突然ゲロを吐き散らしていた。心配にもなるというものだ。
「それで、なんの話をしていましたっけ」
「本調子に戻ってないとかいう、手前のレベルじゃないじゃん。布団に格納する?」
「いえ、も、問題ありません。……恐らく」
「そこでパッと言えないあたりもね……」
「フハハハハ! 我こそ魔王様の懐刀の道化である」
吐瀉物の後処理をしながら話していれば、そこに突然魔王の懐刀とやらが現れた。ただしここは自宅なのだが、なのだが。一方の懐刀さんも、眼前で行われる珍事に絶句していた。仕方ないので後処理を進める。
「真面目な話なら後にしてもらえる? 具体的には数日後で」
「勇者……お前は何をしてるのだ?」
「メイドさんの逆流してきた中身の処理。慣れてくると、いっそ他の誰にもやらせたくない、みたいな使命感にすら駆られてくる」
「……」
「すぐにはわからなくとも、懐刀さんもげろげろする人を近くに置いておけばわかると思う」
「いや、そういうことではない……」
「あ、違ったか。不都合なのはメイドさんの調子が悪いから。日を改めるなら聞くけど、今日って言うなら聞かない」
とりあえず懐刀さんは気がつけば消えていた。というかなんだ、やっぱりあれか。ここまで来たのにまだ魔王勢力に襲われていないあたり、何か人間にだけ襲われるよう呪われているのだろうかとすら思う。
その日の夕飯はシチューだった。
間の悪さは一級品。




