勇者とメイドさん その17
嘘を見抜くゲーム。
「最近は人狼ゲームっていうのが流行ってるらしいよ」
「人狼ゲーム……ですか?」
「その反応を見る限りメイドさんは知らないっぽいね」
「はい、お恥ずかしながら」
人狼ゲームが流行ってるらしく、面白そうだからやろうと思って声をかけたものの、俺も詳しくは知らない。もちろん詳しく知らないだけで、少しは知ってるけども。
「ルールはシンプルかつ単純。人間に紛れた人狼、まあ人に化ける狼がいるから、それを騎士やら占い師やらと協力して、人狼の嘘を見破って殺せば勝ちらしいよ」
「人に化ける狼……それだけ卓越した変装ないしは魔術を使えるのなら、並大抵の知能ではないでしょう。人里に降りてこなければ人狼の勝ちなのでは?」
「言われてみればそれもそうだ。もし人の言葉で意思疎通が出来るのなら、協力の対価にどこかしらの研究機関に匿ってもらうという手もあるだろうに」
なんだこれ、どんどこ人狼の失敗が浮き彫りになってくる。
「そもそも人里に紛れた人狼が殺されてない、噂程度の存在だったとすると、それまで人に危害を加えていないはず。そんな非好戦的、場合によっては友好的な相手をわざわざ探し出して排除するなど……人間は愚かですね」
「まあ同じ人じゃないってだけで、友好的な相手を殺すのはねー。その神経を疑うね」
人狼ゲーム、ゲームと楽しそうに謳っているものの、その実人間の愚かさを題材にした、残酷な現実を描いた恐ろしいゲームだったのか……。
「ひとついいですか? ご主人様」
「なに?」
「最初に騎士や占い師と協力するって言いましたよね」
「うん、言ったけど」
「推理ゲームの上に人狼役も含めると、そもそも私とご主人様の二人では遊べないのでは」
「あっ」
人数という前提条件で躓いたから結局やらなかった。
その日の夕飯はロールキャベツだった。
騙くらかせる知性があるなら共存しよう(ゲーム放棄)