勇者とメイドさん その16
像。
「……ご主人様、その像はなんですか?」
「え? ちょうど完成したコンパクトサイズな神々しいメイドさん」
「えーっと……」
いきなり何を言っているのでしょう。ご主人様の行動が突飛なのは今に始まったことではありませんが、今回ばかりは即座に適応出来ませんでした。
「……なぜ私の像を」
「いや、とある事実に気づいてね。いくらお金の浪費を控えているとはいえ、この家にはインテリアが少なすぎるということにね。そういう訳でお手製の像をね」
「インテリアが少ないから作ったまでは、まあいいとしましょう。しかしなぜ私ですか。普通ならこの家の主である、ご主人様の像になるのでは」
「そりゃあね、この家はメイドさんありきで回ってるから、それを知らしめるために」
コンパクトな像を作ってもらえたのは嬉しいです。ただまあこれを飾るとなると、人を招いた場合に面倒なことになりそうですね。主人を差し置いてメイドの像が飾られてるとか……。
「そうですね、ご主人様。素材は残ってますか」
「うん。残ってるけど使う?」
「はい、このままだとそのうちあらぬ誤解を招きそうなので、この場でご主人様の分を作ってしまいます」
「メイドさんにしてはノリノリだね」
ご主人様の好意を無下にすることも出来ません。となると、行き着く答えはこの一つですね。あとノリノリではないと思います。
そうしてリビングに二つの木像が飾られるのでした。
要求されるのは器用さ。