『傾国』の犠牲と拾われなかった二人
その後どうなったかというと……。
「クソっなんだってこんなことに」
そう吐き捨てながら闇医者から治療を受けるのは、先日メイドさんに腎臓を傾国された復讐者である。
「がむしゃらに無関係の人を傷つけてたんだ。バチが当たったんだろうよ。お前の話は信じられないがな」
「いいや、本当だ。兜越しとはいえ、この目で見た。路地で考え事をしてる時、突然メイドが現れて、次の瞬間には背後から刺されていたんだよ」
「そうかい。まあこれに懲りたら、もう少しマシな方法で復讐対象を探すんだな」
リベンジャーは頭が悪かったからか、手当り次第怪しいと感じた人に襲いかかっていた。バチが当たっても当然の輩ではあったが。
「しかし、よくもまあ腎臓が横向きになってたもんだ。メイドとは思えない趣味だな。あとここに戻ってくるだけでも、体にだいぶ負担を強いてたんだ。死にたくないなら、しばらくは安静にしとくんだな」
「しばらくまともに動けねえのかよ」
不満そうなリベンジャーに闇医者は、死にたくないならなと再度言い聞かせた。
一一一一一
「勇者様に拾っていただけませんでした……やはり私では勇者様は魅力を感じないのでしょうか」
「いいえ! 聖女様が寝ている間でしたが、勇者様は一度拾って行かれました! が、少し経ってから元の場所に戻されました。きっと何か事情があったのでしょう」
「結果的に拾われなかったとはいえ、聖女様は一度お持ち帰りされたんだ……」
「大丈夫だ、お前は剣聖の息子。戦いが始まったばかりで諦めてどうする! お前がすべきは、今回の失敗を次にどう活かすかを考えることだ」
道端で並んでダンボールに入った幼さの残る美女と美男にそう激励するのは、聖女の侍女と当代の剣聖その人だ。
何やらお互いに勇者に拾ってもらいたかったらしいが、見事にスルーされてしまった聖女と剣聖の息子である。そうして落ち込んでいるところを、茂みからこっそり覗いていた二人に励まされているというところである。
しばらくしてどちらも落ち着いたのか、ダンボールから立ち上がって保護者(?)と共に帰路につく。そんな保護者二人は
(最初だからということで、派手な装飾なしに聖女様らしさで攻めたのが効いていたのか? となると以降は、勇者様には清楚な装いで挑むのが正解か)
とか
(十分に早かったと思ったんだが、聖女はそれ以上に早く配置についていたな。そして到着前に一度拾われた、つまりこちらは一度機会を逃しているということ。これは考えている以上に先を読む行動が求められるな)
とか次への策略を練っているのであった。
聖女と剣聖の息子と両保護者が準レギュラーに