勇者とメイドさん その98
ルール知ってる程度でチェスはほとんどやりません。
「メイドさん強くない?」
「そうですかね」
「……あ、まず」
「チェックメイトです」
最近はご主人様が影でちょくちょく奔走している効果か、ご主人様周りの調整やらの仕事が減少しているため、こうしたチェスをする時間も取れるようになりました。
「何が原因なのか……。そうだ、メイドさんでしょ? 次からはチェックメイドって言ってよ」
「……。それは……」
「いいじゃん。そんな強いんだから、ドヤ顔で恥ずかしいこと言った上で普通の対応するから、そこで恥ずかしがるメイドさんを見てみたいってだけの話」
「言いませんよ?」
手を抜くのも失礼と思うので、毎回しっかりやっていますが、勝ち続けるのも失礼に感じてきた今日この頃。いずれしてみるのもありかもしれませんね。……別に恥ずかしいとは思わなさそうですが。そこに昨日の早朝にご主人様の元に来たデュラハンが。
「お、デュラハンの一人じゃん。……その袋を持ってるってことはだ、快諾ってことでいいのかな?」
「……(ドシャ」
「オーケーオーケー。勇者宅はあなた方を歓迎するよ」
「これからもよろしくお願いします」
「……」
そうして袋を置いて、私側のコマを一つ取り上げて、動かしました。これは。
「やりたいの?」
「(ガシャガシャ」
「よし、歓迎するよ。ルールは知ってる?」
「……」
「まずはルール教えたげる」
ご主人様の対面を譲り、デュラハンが着きました。ご主人様とも、上手いことやっていけそうで安心です。不安要素があるとすればもう一人のデュラハンですが……。一応結論を出すにあたり、部屋からガチャガチャ聞こえてきていたので、この方の独断ということはないでしょう。ですがあまり姿を見せないあたり、どうなのか気になるところではあります。
新たな同居人。