勇者とメイドさん その97
朝早め。
「おーはよう。デュラハンの……今回は一人だね」
「……」
「こんな朝早くに何か用かな?」
「……」
花が上手く咲いて以来、すっかり習慣化した毎日の水やりの時間。夏は早朝にあげるために起きてきているのだが、そこにデュラハンの一人が来たという話。
「……」
「剣ね」
「……」
「一度模擬試合してほしいってとこかな?」
剣を抜いて構えてきたから、恐らくそういうことなのだろう。その証拠にガチャガチャ鳴ってる。勇者という存在に興味もあるのだろう。せっかくの同居人だ、失礼のないように対応しなければ。気づけば隣にいたメイドさんから剣を受け取り、ゆったり構える。
「さあこい」
「……(ガッ」
「ほーう。悪くはないね、だが」
「!!(ギンッ」
上段からの振りかぶり、恐らく力の限りを尽くしたであろう一振を剣を横に受けてから、振り払う。デュラハンにしてはなかなかだろう。
「さすがご主人様です。私が受けた時は、鉄板なければ腕が粉々にされていました」
「何してんのよ……」
「……」
「いや、経験上デュラハンにしては強い一撃だと思うよ。あとは技能の方も見てみたいけど……別にそんなに急ぐこともないし、今日はここまでで」
「……」
そもそも今は、あまり乗り気ではないのだ。寝起きでゆっくりしていたのだから当然だろう。花に水やって部屋戻ろう。
その日の夕飯はお好み焼きだった。
剣のことなんてよくわかりませんが。