勇者とメイドさん その96
あ、もちろんデュラハンは頭がないから喋りませんよ。
「心配することはありませんよ。ご主人様は知り合いには優しい方ですから」
「……」
「あれで時折見せる弱い面が、全部私ですから。それこそ私に危害が及べば、死んだ方がマシとまで思わされるでしょうけど」
「……」
あの後、ご主人様と倉庫部屋の整理と掃除をしました。プレハブへの運搬は、デュラハンさんが請け負ってくれました。
「……」
「何をすればいいかですか? 特にありません。自由にしていていいです。 庭で剣の修行でもいいですし、ご主人様との交流でも、お好きなことをどうぞ」
「……」
「ただここの近辺は主に人の住まう地なので、申し訳ないですが外出は控えていただくことになります。人目につかないための対策があれば、その限りではありませんが」
合わせて家の案内と諸々の説明を。途中ご主人様の部屋で、デュラハンさんは真っ黒な剣を渡されていました。
「お近づきの印に、業物ではないけど剣をあげよう。頑丈だから雑に使っていいよ」
「……」
「スペアを持っとくに越したことはないからね。邪魔なら保管しててもいいし」
「……」
その日の昼は、デュラハンさんがサンドイッチ以外を食べるかの検証のために、唐揚げにしました。
「……」
「……」
「サンドイッチ以外でも問題なさそうですね」
「ほーん。不思議なもんだね」
ご主人様は私が鎧に唐揚げを格納する光景を、興味深そうに眺めていました。
転がり込んできた友人夫婦みたいなノリ。