勇者とメイドさん その93
ポテトチップスコンソメがすき。
「たまにはこういうのもいいでしょ」
「……スナック菓子ですか」
「お得用菓子を他の人とつまむのは、精神衛生上素晴らしいので」
「他の人と同じ皿をつつけないとか、生理的に受け付けない人以外に限りそうですね」
それもそうだけど、今は置いといてとりあえずスナック菓子よ。話はそれから。
「でね、ちょうどその瞬間飛んできたセミが、勢いよく振られたバットに爆散させられてね」
「偶然とはいえ感謝ですね。人類の敵がまた一つ消えました」
「一方で三振だっただけに不憫でしかないけど」
「私が審判ならホームランにしていました」
パァンと乾いた音を鳴らし、直後に響くスリーアウトチェンジの叫び声。たまたま通りかかったら、草野球でのすごい光景を目撃してしまった話。
「逆に考えるのです。守るために攻めるのではなく、とにかく保身に走ればいいと」
「まあそういう考えもあるよね」
「事件に巻き込まれたのであれば証拠を逃さず、襲われた時は正当防衛とか言わずに大人しく退散です」
「そもそも面倒事は遭遇しないのが一番だけどね」
人生何が起こるかわからないから、正直回避しようがない。けど対応の方針を事前に考えておくのは、有効ではないだろうか。その場で頭を回せるかは別として。
「やっぱりスナック菓子は正義だわ」
「やめられないとまらない、とはよく言ったものですね」
「なんでこの健康に悪い物体が美味しいのか」
「不思議ですね」
たまにはこういう時間も悪くない。
その日の夕飯は冷やし中華だった。
かっぱえびせんはしばらく食べてない。