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SMALL BRAVE ~小さな英雄~  作者: 黄田 望
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第2話 【 緊急連絡 】


 修羅の様に怒り狂ったドンナーから逃げた翌日。 ライトは性懲りもなくリュックを背負ってギルド職員に足を運んでいた。

 いつも通り受付に行けば厳つい顔したチョビ髭の男が出てくると思っていたのだが、今日受付から出てきたのはフワフワとしたピンク色の髪で服の上からでも歩くたびに胸が揺れているのが分かる女性職員だった。


 「こんにちは! 君がライト・カレッジ君だね!!」

 「は、はぁ。 そうですけど・・あの・・。」

 「あははは! ごめんね急に! 今日からドンナーさんに代わって君の管理職員になりました! 【サクラ】っていいます! よろしくね!!」

 

 サクラと名乗った女性職員はフワッとした笑みを浮かべて僕に手を差し伸べる。


 「代わったっていうのは、おっさん・・・ドンナーさんに何かあったの?」


 僕は握手を返す事もせずに質問をした。 するとサクラはゆっくりと顔を横に動かす。


 「いいえ。 違うよ? ドンナーさんは今日も元気に職場に来てる。」

 「じゃあ何で急に。」


 するとサクラは僕の目の前に1枚の書類を手元に出した。


 「これは?」

 「それはギルドで取り扱っている求人票よ。 ギルドではこうやって冒険者になれなかった。 向いていなかったという人の為に無料で転職できるサービスを行ってるの。」

 「・・・。」

 「私が言いたい意味、分かるかな?」

 「・・・。」


 ライトは黙って書類を凝視する。 その間二人には会話はなく自然とサクラの手に汗がにじみ出る。

 今迄どうすればランクを上げれるかと相談に来る冒険者は山ほどいた。

 リストのランクを上げれば上げる程ダンジョンの奥に潜る事が許されより高い報酬のクエストを受ける事が出来る。 しかし、人にはそれぞれに限界という物がある。 どれだけ努力をしてもそれ以上進めない壁という物があるのだ。

 ギルド職員ではそういった人達に残りの人生を無駄にしない為にもこうやって他の職を選ぶ事が出来る転職サービスをしている。

 冒険者や団員いう人達は体力もあれば臨機応変に態勢を整える能力が一般の人よりも断然に高い。 いつも死と隣合わせの仕事をしている事もありすぐに退社する人もほぼいないのだ。

 だからサクラはライトの様に才能がないと見た人にはひたすらに転職サービスを勧めるようにしている。 それがその人の今後の為だと信じて。


 「ふ~ん。 はい。」

 「え?」


 ライトは渡された書類をサクラに返すと出口に向かって歩いて行った。


 「え? ちょっとまって!! どうするの?!」

 

 サクラは慌ててライトを引き留め転職の案について返事を聞く。 するとライトは顔だけをサクラに向けた。


 「明日も来るよ。」


 そう言ってライトはそのままギルドから出て行ってしまった。


 ◇ ◆ ◇ ◆


 「おぅ。 お疲れさん。」


 事務所に戻ると熱いお茶をすすりながらデスクワークをしていたドンナーがサクラに声をかけた。


 「ドンナーさ~ん。 あの子この転職求人の書類見せたらまた明日も来るって言って帰っちゃったんですけど。 ハッキリと才能ないっていった方がよかったんでしょうか~。」


 サクラは少し落ち込んだように肩を落としながらドンナーの隣のデスクに腰を下ろした。


 「はっはっは! 残念ながらそれも無理だな!」

 「なんでですかぁ~?」

 「俺もすでに何度も言ってるからな! 貴様には才能がないってな!」

 「・・・・え?!」


 サクラは一瞬目を見開いてドンナーを見た。


 「あのガキには冒険者としての才能はない! ましてや基本の魔法も使えない誰が見ても分かる落ちこぼれだな。」

 「そ、それだけの事が分かってるならなんでもっと別の道へ教えてあげないんですか!? あの子はまだ14歳なんでしょう?!」

 

 サクラは陽気に笑うドンナーを見てデスクを強く叩きつけ怒鳴った。


 「いくらまだ子供だからと言ってもリストも取得できない子をこのままにしてたらいつか本当に取り返しがつかない事態になりますよ!! そうなる前に私達職員がちゃんとあの子の道を正してあげないと!!」

 「あ~・・・まぁ、な。」


 ドンナーはここでまたお茶をすすり一息つく。


 「あのガキな。 リストの取得試験をした後何するか予想できるか?」

 「え? い、いや・・特訓でもしてるんですか?」

 「いいや。 ボランティアしてるんだよ。」

 「はい?」


 サクラは首を傾げた。


 「しかも1つじゃねぇぞ? 街のゴミ拾いに鍛冶屋の手入れの手伝い。 他にも雑用みたいな仕事のボランティアを頼まれたら率先して自分からしてるんだよあのガキ。」

 「ボランティアって・・・なんでまた。」


 コップの中身が無くなった事に気づいたドンナーはデスクから立ち上がってまた熱い茶を入れ直す。


 「なんでもな。 アイツにとって冒険者ってのは英雄なんだそうだ。」

 「英雄?」

 「あぁ。 人の為、誰かの為に危険な場所へ足を運び時に誰かを助け、時に誰かを守る仕事。 それがあのガキの冒険者としてのある姿らしい。」

 

 その話を聞いてサクラは腕を組んで頭を悩ませた。


 「え~? 冒険者っていうのはダンジョンを探検する人の事ですよ? 何がどうなってそんな考えを持ってしまったんでしょうか?」


 サクラの正論の答えにドンナーはクスリッと笑みを浮かべる。 しかしその笑みにライトを馬鹿にする雰囲気は微塵も感じ取れなかった。

 その笑みに納得できないサクラであったが、追及しようとした時に窓から折り紙で鳩の形に創られたものが事務所に入って来た。


 「これは・・・緊急連絡鳥きんれんらくちょう?」


 ボーダーにはいくつもの冒険者が集まる団体が存在する。 それらの団体の冒険者のリストもギルドが管理している為、どの団体の冒険者がダンジョンに何かあった場合は連絡用魔法具である折り紙に内容を書きギルドに飛ばす事になっていた。


 サクラはすぐに魔法を解いて手紙の中を確認する。 すると、サクラの顔は徐々に青くなっていった。


 「ドンナーさん! 大変です!!」

 「? どうした?」

 「十二支連合の【龍団】から緊急要請!! 龍団が・・・禁忌魔法を発動させて成功・・したと!!」

 「!?」


 サクラのこの報告にその場にいたギルド職員は不穏なざわめきをしだした。


 

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