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七尾梢はすぐに見つけることが出来た。
彼女は公園のベンチで、まるで勇斗を待っているかのように座っていた。
勇斗はまっすぐに梢に向かっていった。それを梢は決して驚いている様子はなかった。
「ナオに何をしたんだ?」
「どうかしたんですか?」
梢は静かに聞き返す。
「ナオが足に違和感があると言ってる」
梢は表情を変えなかった。まるではじめからそれをわかっているかのようだ。
「そう。それをどうして私に言うんですか?」
その梢の目がまっすぐに自分に向けられているのを感じ、勇斗は思わず目をそらした。
「君なんだろ? 頼む、ナオを助けてくれ」
「尚子さんを助けたいんですか?」
「当たり前だ」
「尚子さんを大切に思っているんですね。でも、それを出来るのはあなたじゃないんですか?」
「僕? 違う。君だろ。君が何かしたんだろ? そうでなければナオがそんなふうに思うはずがない」
「――はずがない? どうして?」
「どうしてって……それは……」
勇斗には答えられなかった。
(なぜ?)
知らないわけではないはずだ。だが、それを口にすれば全てが終わってしまうような気がした。その様子を見て梢が再び口を開く。
「尚子さんの右足が既に存在していないから?」
その言葉に勇斗はギョッとした。
「な……何を言ってるんだ?」
自分の声が震えるのがわかる。
「私が言っているのはただの真実です」
「真実? そんな馬鹿なことがあるか。ナオの足が無いなんて……そんなことはここではありえないはずだ」
「ここでは?」
「あ……いや……」
「そうです。この世界は本当の世界じゃありません」
「本当の世界じゃない? 教えてくれ。君は誰なんだ? 何をしようとしているんだ」
「私は尚子さんの友達です」
「友達? 違う……尚子は君のことなんて知らなかった。それに……君はずっと事故で入院していたじゃないか」
「それは、そういうふうに思い込まされていたから」
「思い込まされていた? 誰に?」
「私はある妖かしを追ってここに来ました」
「妖かし?」
現実離れしたその言葉ではあったが、不思議なことに勇斗はそれを素直に受け入れることが出来た。
「ここは尚子さんの夢の世界。そして、今、その妖かしが彼女の夢を支配しているんです」
「それは?」
「その名を『夢憑き』」
「夢憑き?」
「そう、それがあなた」
梢の目が真っ直ぐに勇斗を見つめる。




