Ⅵ 託すもの・託されるもの
Ⅵ 託すもの・託されるもの
イクスたちが暮らすラウドの街は7大陸の1つグレンにあり、ここには3つの王国がある。グレン東部にある交易と農業で栄え12大国の1つにあげられるオースン王国、グレン中央で畜産、農業で栄えるモゴル王国、そして現在魔王軍の急襲を受けている山岳王国グレン。
ラウドはオースンに属しモゴルとの国境付近にある街で人口5千人と小さいが、土壌が豊かなこの土地は作物が豊富に取れ、穏やかな時間が流れるいい街である。
「エリス、イクス、セリス、イリス、アクス行ってくるよ。」
ゼクスはペガサス種のルナマリアに跨ると、さっそうとグランに向けて旅立っていった。
「さあ、ゼクスはいなくてもいつものカリキュラムはやりますからね。」
やさしくみんなを促し家へと帰っていく。
「イクスは無理しないようにね。」
「は~い。では行ってきます。」
イクス以外の子供たちは賢者であるエリスの指導のもと、魔道の勉強をする。座学と詠唱の練習をする。通常詠唱は魔法の発動につながるため、家の中で行うことはしないが、賢者であるエリスは子供たちが唱えた魔法をすぐさま相反魔法で打ち消すため問題がない。火の魔法が発動したら水の魔法で打ち消すといったように。
俺の技は魔法の理とは違っているため、エリスが教えることができないため独学での練習となる。新しい技を練習するたびどこかしら怪我をしてしまうため、母さんはやめさせたいらしいけど、ゼクスが認めてくれて自由にやれている。母さんの気持ちはうれしいが、やはりせっかく授かったこの力で冒険に挑みたい。
いつもと同じ町から少し離れた茂みの中で練習をしに出掛けているが、いつもとは違い今日は昨日貰ったばかりの剣を帯同している。
「イクスお前の攻撃はとても強いだが、体がついていっちゃいない。そのままのお前じゃ冒険なんて続けられないぞ。戦闘するたびに怪我をしてしまうんならな。だからこれを持っていけ!」
ゼクスに渡された剣は黒色に輝いていた。
「昔魔道国家フレイヤで手助けした時にお礼に貰ったものだ。剣自体に魔力が込められていてとても耐久力がある。お前は剣筋もいいから基本剣を使え、本当にやばい時と技の熟練度があがって怪我をしなくなったらおまえの技を試せばいい。いいか冒険は一人でやるもんじゃない、そこのところは肝に銘じろよ。」
トントンと拳でおれの胸元を軽く小突いた。
「分かったよ、ありがとうお父さん。」
「改まって言うなよ、恥ずかしいだろ。本当は俺が教えなくちゃいけないのにな。まあ頼んだ相手はお前を鍛えるのにはちょうどいいやつだから、いっちょもんでもらえ。」
「どんな人なの?」
「はははっ、会ってからのお楽しみだ。」
「ケチ。」
ガシッと俺の頭を捕まえたゼクスは、
「無理はするなよ、家族全員悲しむんだからな。あと手紙を定期的に送れよな。俺もおおざっぱな人間だが、手紙だけはちゃんと送っていただろう。」
そうゼクスはさっぱりとしておおざっぱな父親だったが、定期的に手紙を送って来てくれて、俺はそれを呼んで冒険者への憧れを強くしていった。
「約束するよ。」
「ああ、そうしてくれ。あとこれな。」
金貨や銀貨などが入ったコブクロだった。
「まあ俺が言うのもなんだけどよ、俺って割と有名人なわけだよ。というわけでお前も注目されちまうと思うので、身なりはきれいにしておけよ。あとさっき渡した剣は結構な値打ちのもんだ、絶対なくすなよ。俺がす~ごく怒られることになるからな。肌身離さず持っておくように。」
「分かったよ、ありがとう。」
「じゃあ以上だ。」