Ⅱ 家族
Ⅱ 家族
いつの頃だろうか俺が俺でないと感じ始めたのは。意識の中に別の意識が入り込んでくるかんじ。
「朝ごはんできたわよ~みんな起きて~」
「は~い。」
俺の体にでかい足がのっかっている。この足の持ち主が俺の父ゼクス=ゼタシア、
「よいしょ。」
と足をどかした俺は父親の鼻をつまんだ。
「フガッ。」
「なんだよ。」
「おはようお父さん、朝だよ。」
「おう、そうか。おはようイクス。」
「そろそろご飯食べに行かないと怒られちゃうよ。」
「そうだな、起こしてくれてありがとう。」
「うん。」
居間に行くと家族が全員そろっていた。
「遅いよ~、冷めちゃうでしょ。」
腰に手を当てて怒っているポーズをしている女の子は俺の姉セリス、金髪、碧眼の美少女で胸もエリス母さんほどじゃないけど大きい、現在15歳。俺はこの姉がものすごく好きで結婚したいと思っているが、この星でも家族とは結婚できないみたいだ。残念。
「おなか減ったよ~」
テーブルに並んだ朝にしては豪華な食事を見て妹のイリスは文句を言っていた。イリスもまた金髪、紅眼の美少女で8歳。とてもかわいくて日本にいたら子役オーディション受けさせちゃうと思う。
「減った~」
かわいい声でしゃべっている男の子はアクス、イリスの双子の弟8歳だ。この子は我が家のアイドルでみんなに可愛がれている。将来モテモテになるのが確定しているかわいさだ。
「は~いみんな揃ったわね、ご飯食べましょう。」
澄んだ声で着席を促すのが母エリス、金髪、碧眼の超美人だ。子だくさんになっちゃうのは無理もないとても魅力がある女性だ。ちなみに10歳まで一緒にお風呂に入っていたんだけど、もっこりしないように頑張るのが大変で自分から一緒に入るのを断った。そんな俺は現在13歳、家族で俺だけ白髪だ。おそらく風の天使フィンの影響を受けているのだろう。碧眼なのは母親に似ていて気に入っている。
「いただきま~す。」
家族全員の幸せいっぱいのいただきますで食事が始まった。
「もぐもぐ、イクスお前本当に冒険者になるのか?」
「はい、お父さん。僕は昔からお父さんに憧れていて、英雄になろうなんてことは考えていないんですけど、一人前の冒険者になりたいと思っているんですよ。やっとその第一歩が踏めるんです。」
「まあお前と約束しちまったからな、じゃあ今日俺と試合して一本取ってみろ。そうしたら冒険者協会への登録認めてやる。」
「はい。」
父親ロックは英雄を生業としている。英雄っていうのは職業じゃなくてこの世界で魔物を恐れずに戦い、実績を上げた人間に付けられる名称だ。幾百万といる冒険者の中で英雄と言われている人は数えるほどしかいない。だから町の危機や強敵がでた時は討伐の依頼が急遽来ることが多い。そのため父親が家にいることは少ない。その負い目からか家に帰ってくれば家族全員の相手をしてくれる心優しい自慢の父親だ。夜は母エリスの相手で忙しそうだけど。
「あんた本当にお父さんに勝てると思っているの?」
「姉さん、勝てるわけないじゃないですか。でも一撃当てることができればいいんですから、少しはチャンスがあると思っているよ。」
「ふ~ん、ま、いいんだけどね。」
セリスは含みのあるいい方をしている。
「お兄ちゃんはこの家が嫌いだから出ていくの?」
心配そうに話しかけるかわいい妹イリスの質問に俺は少し胸がチクって痛んだけど、
「そんなことないよ。俺は英雄ゼクス=ゼタシアに憧れていて、少しでも近づけたらなって思っているんだよ。ここには弱小の魔物しか出ないからね、もっと強い魔物と戦いたいんだ。」
「じゃあ私のこと嫌いじゃないんだよね?」
「当り前じゃないか。こんあにかわいい妹はいないよ。」
「ふふふふふっ、良かった。」
どうやら機嫌がよくなったようだ。
「さあ朝食はちゃんと食べておけ。エリス、立ち合い頼む。」
「はい。」
さあこれから俺の冒険が始まる。