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ⅩⅥ アリサ

ⅩⅥ アリサ



 表彰式の翌日、朝起きると居間には昨日の表彰式の残り物が並んでいて、とても豪華な食事となった。昨日の夜、アリサが残り物を詰めて持ってきてくれたのだが、帰り道に何かあるといけないからとアリサを送って行った。

 「逆に悪いことしちゃったね。イノブー退治で疲れているのに送って行ってもらっちゃって。」

 「毎日トレーニングをしている俺にしてみれば大したことないさ。今日食べすぎちゃって苦しいから、腹ごなしに運動するのがちょうどいいっていうのが大きいんだけどな。」

 「イクスがすごい努力をしていたの知っているから、無理しないで頑張ってね。」

 「ありがとう。無理しないで頑張るよ。今日のポテサラめちゃくちゃおいしかったよ。

昔から料理おいしかったけどさらにおいしくなったね。」

 「ふふふっ、私はねレストランのオーナーになるのが夢なんだ。だから今日より明日、明日より明後日はもっとおいしい料理が作るって思ってやっているんだよ。」

 「アリサだったら凄腕料理人になれそうだね。もしアリサがレストラン出すときは出資するよ。」

 「出資?」

 「ああ、レストラン出店するのにもお金がかかるだろう?俺が冒険して稼いだお金を出資するよ。もちろん儲かったら返してくれよ。」

 「ああ、そんなこと言ってもらえるなんて。あれだか、お金を出すから私を愛人にするとかそういう話か?」

 顔をあからめ、もじもじと照れながらアリサは質問をしてきた。

 「いやいやいや、愛人とか考えたことないし!ていうかそういうのって結婚している奴がする奴じゃないの?結婚どころか恋人もいないぞ、俺は!」

 結構焦りながらアリサに返答をする。

 「そうだよね~、ちょっと先走っちゃったみたい。でもイクスの申し出とてもうれしいよ。その時はイクスがレストランの名前を考えてね。」

 「そうだね。その前に稼げるような立派な冒険者にならないとな~」

 「イクスならなれるよ、なれるにきまってるべ。イクスが英雄の息子だからってことじゃなくて、英雄になるために努力していたの知っているもの。よく怪我して帰ってきたものね。」

 「アリサには全部知られちゃっているからな~、ははっ恰好つかないな。」

 アリサの好きなとこはこういうとなんだよな。英雄の息子だからできて当たり前とか言われ続けていたけど、アリサは俺の努力を評価してくれている。アリサが認めていてくれたから、腐らずにやれていた部分があるんだよな。ありがとう、俺の幼馴染。声には出さなかったけどアリサにお礼をいった。

 「自分でも無謀なことしたと思っているよ。治療してくれたのがエリス母さんじゃなかったら今頃ボロボロの体になっていたよ。」

 「エリスさんにすご~く怒られていたよね。」

 「ああ、母さん怒ると怖いからな~」

 「あんないい人怒らせちゃだめだべ。」

 「ははっ、本当にね。怒られないように気を付けます。」

 ガヤガヤガヤ、アリサの家の方からにぎやかな声が響き渡る。アリサの家は家庭料理メインの料理屋を経営している。

 「にぎやかだね。」

 「ええ、表彰会場で物足りなかった人たちが飲みに来ているの。おかげさまでがっちり儲けさせていただいています。」

 「それは良かった。じゃあここで帰るよ。」

「ごちそうさん。」

 店から出てきた男は、町役場で嫌味を言ってきた兵士だった。

 「おっ、よう英雄の息子。いいご身分だな、可愛い彼女とデートか?」

 「どうも。」

 さりげなくやり過ごそうとしたが男に肩を掴まれた。これだから酔っ払いというやつは嫌だ。

 「何か用?」

 平然とすましたように話しかけた。

 「俺たちはよう、わざわざこんな田舎まで来てイノブー退治に来てやってんだよ。そんなつれない返事はないだろう?」

 大きな声で話しかけてくるがさして怖くもない。ぐいっと肩に置かれた手を払った。

 「なんだよ、何か文句でもあるのか?」

 「こちらにかまわないで貰えればそれで。」

 「あ~ん、その態度が気に入らないんだよ。」

 「酔っ払いのたわごとにかまってられないよ。」

 「あ~んやろうってのか?」

 「あんたがやりたいなら構わないよ。」

 こちらの世界に来てからこんなくだらないこと言っている大人に出会っていなかった俺はどうやら我慢の限界のようだ。

 ガンガン、ホーンは自身のこぶしをぶつけあって、今すぐにでも襲い掛かってきそうだ。

 「アリス少し離れていて。」

 「ええ。」

 「なんだよ、女の心配してる場合か、おまえはこれからぶっ倒されるんだぞ。」

 「くだらない酔っ払いにやられるほど、やわな鍛え方はしていないよ!」

 「しゃらくせぇ。」

 ホーンがイクスに殴りかかってくる。酔っぱらっているからか動きが遅い。

 「はあ~っ。」 

 気功でオーラをまとうと、対人戦用に温めていた技を使うことにした。孤高のストリートファイターリュウの必殺技昇竜拳を。

 「うおおおぅ。怒・髪・天!」

 ホーンの体めがけて回転して体重がのった右手の拳を繰り出した。

 ドーン!

 右手のこぶしが腹をえぐり、あごにめり込んだ。メリッと嫌な音がしてホーンは吹き飛んだ。勝利を確信した俺は心の中でYOU WIN !!と唱えていた。どうだ参ったか、リュウがサガットに決めた時と同じように決まった。

 「おい大丈夫か?」

 仲間の兵士に介抱された男は、肩に担がれて運ばれていった。

 「アリサ、怖がらせてごめんね。さー家に入ろう。」

 「ううん、イクス本当に強いね~。あの人大丈夫かな?」

 「内臓のダメージ大きいのとあごが壊れちゃったからかなり痛いと思うけど、回復魔法かけてもらえばそのうちに治るよ。」

 「何となく兵士さん大丈夫そうじゃないけど、回復魔法で治るよね。じゃあうちに帰るね。ありがとうイクス。」

 「何かあったら式紙飛ばしてくれればすぐ助けに行くから。じゃあね。」

 アリサは元気よく手を振ってくれた。イクスも軽めに手を振り帰路へとついた。

 「やるね、イクス君。」

 ヘイクが帰り路に立っていた。

 「酔っ払いに負けるようじゃ冒険者に慣れませんから。」

 「ははっ、いうね。あいつも今回の討伐参加できそうもないから、帰ったら相当怒られると思うわ。まあ自業自得だがね。」

 「連帯責任取られたりしないんですか?」

 「真面目に報告などしないよ。討伐中怪我したってことにしとくさ。まあその分残ったメンバーで頑張らないといけないけどな。」

 「謝りませんよ。」

 「君は悪くないさ。ホーンがバカだっただけ、そうだろ。」

 「ははっ、助かります。ではまた。」

 「モンスターの討伐が終わったら君に対戦を申し込みたいよ。」

 「ははっ、考えておきます。」

 ゲーセンで100円入れて対戦を申し込むように簡単に対戦を申し込まれてもごめんこうむりますよ。じっとりと手に汗をかいていた。もし対戦相手がヘイクだったら負けていただろう。まだまだ修行をしなきゃな。守りたい人間も守れない。一層の決意を新たに持ったイクスであった。


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