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ⅩⅤ 表彰②

ⅩⅤ 表彰②




 ガラガラガラ、ワゴンで豪華な料理が運ばれてきて、漂ってくる匂いを嗅ぐだけでよだれがこみあげてくる。

 「イクス君とセリスさんより討伐したイノブーの肉を提供してもらいました。皆さん存分に食べましょう。」

 ワアアアアアア~~~~

 今までで一番の声援が上がっている。みんな現金だよな~まあこのにおい嗅いだら誰だってテンション上がるけど。

 「いただきます。」 

 ローストされたイノブーは上質な脂ののったビーフに味は似ているが、とろりと柔らかく、肉がほぐれる舌触りは豚の角煮のようであり、簡単にいえばすごくうまいということ。

 「おいふぃね~〇△□〇△□」

 イリスが口いっぱいに肉をほおばりながら、話しかけてきたが後半は何を言っているか分からなかった。

 「ちゃんと口は拭いてから食べなさい。」

 エリス母さんに口を拭いてもらっている。

 アクスにいたっては服にべったり肉汁をつけてしまっている。

 「母さん、俺が見ているから食事をしてよ。」

 「あなたたちのお祝いなんだ、おなか一杯食べてなさい。でも食べすぎておなかを壊さないようにね。」

 「うん、ありがとう。」

 「やあ、ちょっといいかな。」

 190センチはある金髪のさわやかそうな青年が話しかけてきた。

 「おめでとうイクス君、セリスさん。僕は今回派遣されてきた兵士の隊長を務めるヘイク=マクガーデンというものだ。よろしく。」

 さっとさしだされた手をイクスは握り握手をした。ギュウウウウ~、握手にしてはかなり強い握り方をされ、イクスも同じように握り返した。」

 「ほう、華奢だと思っていたんだけどかなり鍛えているんだね。ごめんごめん、試すようなことをしてさ。こんな辺境なところに配置されて暇をしていたんだ。ここの悪口を言っているわけじゃないんだが、大人のお楽しみスポットがないからさ。もう暇で、暇でね。」

 茶目っ気たっぷりに話すこの男は男の俺から見てもかなりもてる男だと思う。現に女性の何人かはチラチラとヘイクを見ている。

 「ここに派遣された兵士って何かしらやらかして飛ばされているんだよね~」

 「そうなんですか?」

 「ああ、俺はこれね。」

 小指をたてて俺に見せる。二股三股かけていてもおかしくないもんな。

 「はははっ、女の尻ばかり追いかけているわけじゃないぞ、モンスター討伐はがんばらせてもらうから、お互い怪我には気を付けよう。デートもできなくなっちまうからな。」

 中指と人差し指をたてて、額から俺の方へ向けるしぐさはキザだけど様になっていた。

 「あなたはあんな男にはならないでね。」

 とげのある言い方でセリスは話しかけてきた。

 「はははっ、俺にはヘイク要素全くないですよ、姉さん。」

 「そうね、あんなふうになったらオーロラレイ100発くらい頭に落として、元に戻すしかないわね。」

 「怖いですよ、姉さん。」

 本気トーンで話す姉さんはとても怖かった。

 ヘイクは両手に女性の肩を抱いて楽しそうに会話をしている。ちょっと憧れるけどね、恋愛したことがない俺には眩しくうつる。

 「イクス、ちゃんと食べてるだか~」

 話しかけてきた女の子は俺より1つ上の14歳、アリサ=ヘーデルナッツ、幼馴染で料理が得意で、よく手料理をふるまわれる。腰付近まである茶髪をきれいに編み込んである。素朴な雰囲気ではあるが、顔は整っていてどちらかというとキュートなかんじで、前世で同じ学校だったら恥ずかしくて話すこともできなかっただろう。しかもセリスと張り合える大きな胸がエプロンの上からでも大きいことがよくわかる。

 「みんなイノブーに夢中で食べてくれないんだよ~」

 今日の表彰式の料理を手伝いに来ていたアリサは自慢のポテトサラダを持っていた。

 「俺がいただくよ。アリサのポテサラおいしいからね。いただきます。」

 俺はポテサラを頬ばった。素朴な芋の味が口の中に広がるが、新鮮な卵で作ったマヨネーズがいいアクセントになりとてもおいしい。

 「あいかわらずおいしいよ。究極のメニューに入れたいくらいだよ。」

 「ほめてくれてありがとう。でもイクスはたまに変なことをいうだよな~。究極のメニューってなんだべな~。」

 山岡士郎の話をしても分からないと思うので、話は流すことにした。

 「はははっ、すごいおいしいから俺が毎日食べたいってことだよ。」

 「そうだかね~。じゃあ全部置いていくから食べてね~」

 ドンと1キロくらいあるポテトサラダをテーブルに置いた。

 「アリサ元気そうね~」

 「セリスお姉さんこんばんは~。今日はイクスとセリスさんのお祝いですもの、料理張り切りましたよ~」

 にこ~と無邪気にほほ笑んだアリサの前に、何かを言いたかったセリスは言いよどんでいた。

 「そう、アリサも手伝いそこそこにして、料理楽しんでね。」

 「はい、ありがとです。」

 ぺこりとお辞儀をして、アリサが他のテーブルの用意をしに席を離れると、ムフ~と大きなため息が聞こえてきた。

 エリス姉さんは俺とアリサが仲良くしていると、割って入ってくることは子供の頃からよくあった。ただアリサは俺とアリサが仲良く遊んでいるのを快く思わなくて邪魔をしに来ているんじゃなくて、一緒に遊びたいんだと勘違いをして遊んでいたことが多い。魔力が高く、気が強い姉さんが唯一負けるのはアリサなのかもしれないな。天然てすごいな。キャバクラにいたらめちゃくちゃモテそうだな。うん

 「このポテサラおいしいわね。」

 「そうなんだよ、コクがあって深い味だよね。」

 「私が作ったのよりおいしいかな?」

 半分目が笑っていないんですけど姉さん。

 「どっちもおいしいよ。味のベクトルが違うから優劣はつけられないけどさ。」

 「そう、良かった~」

 ふぅ返答に間違いはなかった。

 「ところでさっきのキザ兵士、あなたの力量伺いに来たわね。」

 「ただの力比べじゃないの?」

 「いいえ、最初の二人は兵士より目立ったあなたに嫌味をいいたかっただけだけど、ヘイクは違うわ。あなたの力を全身でつかもうとしていたわ。微量な魔力があなたを包んでいたからね。」

 「へぇ~、そんなことできるんだね。」

 「高等魔法よ、辺境に追いやられる兵隊長じゃ使えないようなね。」

 「ヘイクには何かあると?」

 「注意しておきましょう。」

 「うん。」

 その後に運ばれてきた料理はどれもおいしくて、明日のモンスター狩りに影響が出るくらいおなかが膨れたことは母エリスには内緒にしておきたい。


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