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Ⅻ イノブー掃討作戦②

Ⅻ イノブー掃討作戦②




 その後もイノブーは幾度となく現れた。その都度セリスのオーロラレイから俺の斬撃というコンビネーションで何匹も倒した。ある程度倒したイノブーの血を集めて撒く作業を始めた。イノブーはもともと臆病なモンスターであるがグランでの大規模戦争の余波で興奮したイノブーは人を襲うようになっているが、イノブーの血の匂いを嗅ぐと危険を察知してそれ以上は進軍してこなくなる。そのため首を切ってたまったイノブーの血の中に小石を入れ、血に染まった小石をバラバラと撒く作業をしている。この作業は農民たちがイノブーがいないことを俺たちが確認の上行っている。俺たちがさぼっているようにみえるが、イノブーの血の匂いが漂っているとイノブーが寄ってこなくなるので、戦闘する人間はこの作業をしないのがセオリーとなっている。また農民たちは血の匂いがすることで襲われにくくなるメリットがある。

 「じゃあ少し場所を移しましょうか?」

 「うん。」

 小石を巻いたあたりにはイノブーが来ることがないので、セリスと俺は少し離れた場所に新しい陣をはった。

 「さっきいってたわよ、手際のいい切り方だって。」

 姉は嬉しそうに俺がほめられたことを話してきた。なんだか照れてしまうが、実際のところ一度も外すことなく一撃でイノブーを失神させている姉の力量の方がはるかにすごい。出力をあげればイノブーを殺すことも簡単にできるはずなのに俺の出番を作ってくれる。これには理由があって、戦闘によって得る戦闘スキルの上昇のほかに、敵を倒すことで得る7大天使の恩恵によるレベルアップがある。この7大天使による恩恵は簡単にいうとゲームにおけるレベルアップと同じである。モンスターを倒すたびに自分の能力が上がっていく。ステータスを見ることは個人ではできないが、イノブーを倒すたびに力が上がっていっているらしい。魔王という存在を通常の人間で倒すことはできないだろう。モンスターを倒すことでレベルアップをして元の能力の何十、何百倍の強さとならないと魔王は倒せないだろう。そしてこの恩恵は敵と戦ったすべての人間に与えられる。姉だけで倒してしまうと俺は恩恵を得られずレベルが全く上がらないままである。そのためセリスは俺のために考えてやってくれているのには感謝しかない。

 がるるるるぅぅぅぅ

 低音の唸り声が聞こえてくる。

 「ママが出た~~~」

 小石を撒いていた農夫から叫び声が上がる。

 想定内のうちで一番の大物が出たみたいだ。イノブーマザー通称ママはイノブーを産みだす巨大なイノブーで体調は5メートルを超える。今日倒したイノブーの中に自分の子供がいたのか恐ろしいほどに狂暴なオーラを出している。

 「全力で行くからサポートをお願いね。」

 「分かった。」

 セリスの本気の魔法は自身が恩恵を与えられている風魔法になるだろう。セリスとイノブーの間に立った俺は気功で自分の力を高めていく。

 「火の天使マグナよ、我が剣に灼熱の業火を!マグナダリア!」

 ゼクスに教わった魔法マグナダリアで剣に炎をまとわせる。体に炎をまとわせたら大やけどしてしまい、けがの治療が終わった後母さんと、姉さんに大目玉を食らったっけ。この辺の麦は燃えちゃうけど勘弁してくれよ。さすがに5メートルのイノブーは初見のため、こちらも手加減している場合じゃない。

 さすがのイノブーマザーも急に出てきた炎に一瞬たじろぎ足を止めた。

 「行くわよ。」 

 セリスが合図をする。

 「オーロラレイ!!」

 ズガーン

 オーロラレイ本気バージョンがさく裂した。イノブーマザーの背中は黒く焼き焦げていて、絶命していた。

 「姉さん凄いよ、一撃必殺だね。」

 「えへへっ、姉さん本気出しちゃいました。でもイクスの出番取っちゃってごめんね。」

 「いやそんなの気にしないで。マザーを一撃で倒せる姉をがいて、誇らしいよ。」

 「えへへへへっ、じゃあ頭をなでてくださいな。」

 さわさわさわ、セリスの髪はさらさらしていてなでている方も気持ちが良かった。セリスはニコニコ顔で撫でられいる。いつまで撫でていればいいのか分からなくなってきた頃に、

 「あの~、マザーはどうしますか?」

 姉をなでる姉弟の姿を見られ、居合わせた全員が気まずい雰囲気になった。

 「イクスが荷台まで運びますのであとはよろしくお願いします。」

 さっきのことが何もなかったようにふるまい、セリスは指示を出した。

 「マザーの血は通常のイノブーの血より忌避効果が高いと思いますので、あとで血を希望者に配りたいと思います。」

 イリスに人間の治癒魔法を習っているセリスは、人体の仕組みに精通しているため、モンスターの解体も躊躇なくできる。マザーの血を欲しがる街の人が多いと考えたセリスは自分たちの敷地で裁こうと考えていた。

 冷静、迅速に対処できる姉を俺は誇りに思っている。

 「マザーくらいじゃ私たちのコンビには楽勝すぎるね。」

 姉さん、俺は活躍していないので楽勝なのかどうかはコメントできないよ。

 マザーを倒したおかげで、その後は他のイノブーは出没しなかった。

 「イクス、お疲れ様~」

 「姉さん、お疲れ様。」

 「イクス今日頑張ったから背中流してあげようか?」

 「姉さん、俺も年ごろだしお風呂は一人で入るよ。」

 冷静に話すよう努めていたが、心臓はバクバクしている。一緒にお風呂入ったらギンギンになっちゃうからね、お風呂一緒に入るのは断固拒否を貫くよ。

 この後、お風呂一緒に入る、入らないの攻防が繰り返されることとなる。


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