Ⅺ イノブー掃討作戦
Ⅺ イノブー掃討作戦
「気を付けて行ってくるのよ~。あなたたちなら必ず倒せるから、あわてないようにね。」
「お弁当ありがとう、行ってきます。」
エリスのお手製弁当を持って俺たちを家を出た。
今回はセリスがルナホーク、俺がルナユウナに騎乗して出かける。ルナユウナとルナホークはルナマリアの仔であり、まだ体躯は大きくないがイノブー程度は軽く吹き飛ばせる力を持っている。この仔たちがついてきてくれていることも、エリスがあまり心配していない要因だろう。
「お母さんてさ、いつも心配性だけど、戦いに関しては心配しないよね。自分たちと相手の戦力を分析して冷静に判断する力を持っていると思う。」
「そうだね。それはすごく思う。母さんいざという時は肝が据わっているからな~。ルナユウナよろしくな。」
ルナユウナの頭を軽くなでると、すごくうれしそうにいなないた。額にある角の近くをなでてあげると特に喜んでくれるポイントだ。
「さあ行きましょう。」
「うん。」
パッパッパッパッパッ、ペガサスの走り方は馬とは違い、一回地面に着いた足は飛ぶように跳ねて駆けていく。そのため一回の走りで20メートルほど進むため、馬よりもはるかに速い。その分揺れがすごいのでと酔ってしまうし、落馬すると大怪我をしてしまう。またペガサス種はプライドが高いため自分が認めたもの以外を乗せてはくれない。そのためイリスとアクスはまだ乗ることができない。ペガサスは選ばれりしものの乗り物といえるだろう。
今日の目的地に着いた。今日は農家の人たちが収穫する間、イノブーが出てきたら退治する護衛メインの討伐戦となる。イノブー以外に人も多くいる場面での戦闘のため、昨日より難易度は高い。だが二人の戦闘意欲は昨日よりも増している。セリスにいたっては昨日は農民の回復作業に当たっていたので、「ぶっとばしてやる。」「破壊してやる。」と物騒な言葉を口走っていたので、いつもと違う荒々しいセリスの様子に戸惑ってしまう。
しばらく柔軟体操をしたりして待機していると、ポンという音とともに白煙が上がった。白煙筒は農民全員が持っていて、イノブーが現れたら白煙筒を作動させて白煙を上げ、危険を知らせるようになっている。
「いくよ。」
「はい。」
二人のいるところから100メートルほどのところで白煙が上がっているので、ルナユウナに乗らず走って向かう。
「は~っ。」
イクスは気を体にため戦闘に備える。セリスはすでに魔法の詠唱を始めている。魔法の発動には詠唱が必要だが、強い魔法は詠唱に時間がかかる。セリスがすごいといわしめているのは魔法の発動時間が他者より圧倒して速いからである。魔法詠唱の短縮文字古代コペル文字を自在に使えることにある。古代コペル文字は詠唱が早く行え魔法の発動が早い反面、詠唱が難しく使えるものが少なかった問題があったため、現代の簡易になったコペル文字での詠唱が主流となった。イリスが古代コペル文字を使えたため、家族への魔法指導も古代コペル文字によって行われているため、セリスも古代コペル文字が当然使えている。
余談だがイクスはいくつかの回復魔法は古代コペル文字で詠唱できるようになっている。
「オーロラレイ。」
光の天使オーロラの名を持つ雷魔法がイノブーに直撃する。
「プギャッ。」
と短い悲鳴が上がりイノブーは失神している。俺はイノブーの首に剣を切りつけ、一撃で首を切り落とした。
「あとはお願いします。」
セリスはそういい元居た場所へと戻っていく。
「手際いいじゃない。」
ポスと俺の頭に手をのせてくれた。俺はこの姉に頭を触られるのが好きだ。いいことした時しかやってくれないので、子供の時は率先して掃除したり、風呂の準備をしたっけ。さすがに今は風呂の準備でやってくれることは少なくなったが。
さあどんどんきやがれ。セリス、イクスコンビの強さを見せつけてやるさ。