5/56
4.足取り
進一にとって変わった日。
逃げていただけの彼から大きく変わった日。
彼は、わくわくしながら明日を待っていた。
今までの彼だったら怯えていた明日が、待ち遠しく、早く来てくれと願うほどのものになっていた。
ベットの中で天井を見ながら今日あったことを少しずつ頭の中で整理する。
これは彼が毎日欠かさず行ってきた日課だ。
しかし、この日はその日課がうまく行かないほどわくわくしていた。
そんな事を考えていると夜は耽っていくもので、進一の瞼も重くなり、そのまま眠っていた。
翌朝……
母親が、今日も学校に行くのかと尋ねられた。
進一は、軽く頷き、母親が用意してくれた朝食を頬張る。
いつもどうり素早く食べ終え食器を片付けて、着替え、ランドセルを背負って登校する。
「ふぅ、普通に登校するのも緊張するな」
進一はそっと誰にも聞こえない声で呟いた。
足取りは昨日より早く。
学校に向かっていた。
進一の足音には少し期待が有った気がした。