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天才だった自分に出来ること  作者: 海純/六郎
第一章 小学生編
13/56

11.壁

 昼休みも終わり、午後の授業も終わった。

 けれども雄大は進一と一切話さなかった。

 その理由は、単純で、木下竹男達に嫌がらせを受けたからだ。


(進一に近づくな、近づいたら殴るからな)


 竹男の言葉が響く、その声と共にさっき理科の時間に殴られた腹と蹴られた左足に痛みが走った。

 竹男達が何故こんなことをするのかわからなかったが、これ以上怪我をしたくなかったので仕方なく進一を無視することを選んだ。

 選んでしまった。

 進一を無視する日々が続いた。

 その間竹男達からの嫌がらせは続いていた。

 3月に突入し春休みまでもうすぐとなったところだった。

 雄大はいつも通り進一を無視していた。

 そんな時雄大は自分の机の中に見知らぬ紙が入っているのに気づいた。


 ━━もしかしたら竹男からの手紙かもしれない


 恐る恐る紙を見ると、『今日の放課後、音楽室に来い。進一』

 進一からの呼び出しだった。

 雄大は竹男達が怖かったが、進一を無視し続けることに罪悪感をもっていたため、今日進一と会うことに決めた。


 進一視点――――


 進一は音楽室で仁王立ちをしながら考え事をしていた。

 進一は、ここ数日間雄大に急に避けられていた。

 進一にとって見に覚えは一切ないはずだった。

 しかし、進一は何となくだが木下竹男が関わっていると考えた。

 何故なら雄大が進一を避け始めたのは、竹男に呼び出された後からだったからだ。

 進一は数少ない話し相手を失くしたくない。

 失いたくない。

 そう思っていた、だから今日雄大を呼び出した。


 ガラリ……


 音楽室の扉が開いた。

 雄大が音楽室に入ってくる。

 周りをキョロキョロと見回した後こちらをみてギロリと、睨んできた。


「何か用かよ」


 雄大が言った。

 進一はその言葉を聞いた後、ふっ、と息を吐き口を開いた。


「何故、俺を無視するんだ」


「そんなの俺の勝手だろうが」


 進一の質問に雄大が答えた。

 雄大は少し暗い顔をしていた。

 進一は一歩前へ進み雄大に近づく。


「何か俺に問題でも不満でもあるのか」


 進一は雄大に問いかける。

「…………」雄大は黙って首をふった。

 進一は少しホッとしたが、まだ解決はしていない。

 進一は続けてこう言った。


「竹男関連か」


 雄大の表情が変わった。

 少し顔が青ざめた気がした。


「何があったんだ、教えてくれ」


 進一は畳み掛けるように言葉を続けた。

 すると雄大は、顔を赤くし手を出し進一に掴みかかってきた。

 進一は、自分の襟を掴んでいる雄大の手を掴んだ。


「どうしたんだ、お前おかしいぞ」


 進一の襟を掴む力が少し強くなる。

 雄大は凄い表情で進一をにらんだ。


「何も知らないくせに、俺の苦しみもわからないくせに」


 雄大が進一に向かって言った。

 雄大の力はどんどん強くなった。

 進一は、手に力を強く込め、雄大の手を自分の襟から外した。


「俺はお前が嫌いなんだもう関わらないでくれよ」


 悲しい表情で進一に向かって雄大がいい放つ。


「嫌だね、俺にはお前の言葉が全部嘘に聞こえるからだ」


 進一は言い返した。

 雄大は図星だったのか、ハッとした後、こちらに殴りかかってきた。

 進一はその拳を避ける。


「俺は嘘つきじゃない」


 雄大が言う。

 そしてもう一度、進一に殴りかかってきた。

 進一はわざとその拳をよけなかった。

 何故なら雄大の服の隙間に痣が見えたからだ。

 進一は頭の中で全て繋がった気がした。

 雄大の拳は、進一の鼻に当たり、進一の鼻から血が垂れる。

 進一はその血を拭い、雄大のほうに向き直る。

 雄大は目に涙を浮かべながら、もう一度殴りかかってくる。

 次は腹に一発、肩に一発入った。

 雄大は息を荒くし、進一を殴ろうとする。

 進一はそれを止め、雄大を睨んだ。


「何があっても俺は平気だから」


 進一は余裕のある言葉をはいた。

 雄大は力を弱め青ざめた顔をしてそのまま音楽室から出ていってしまった。

 進一は少しフラフラとしながら音楽室を出て、階段を降り始めた。

 壁に体を預けながら、階段を降りる。


「絶対に許さねぇからな」


 進一の口からは自然とそうこぼれていた。

 そして不気味な笑みを浮かべていた。

 雄大との間に少し壁ができたきがした。


 そして雄大と仲直りせずに春休みに入った。

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