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第05話 混乱し始める国

※2019.02.17,18 お陰様でSFジャンルのパニックで日間「一位」、更に週間でも「二位」を獲得させて頂きました!本当にありがとうございます!

「次のニュースです。先日の国会議事堂爆破事件について、警視庁は国際的なテロ組織による犯行である可能性について──」



 点けっ放しのテレビから、聞き飽きた内容のニュースが聞こえて来る。全く変わり映えの無い、同じ内容の情報(ニュース)ばかり。昨日から、どの局もずっとこの調子だ。


 特に何の期待もせずに、俺はテレビのリモコンを手に取った。革張りの黒いソファにもたれ、適当にザッピングする。


「外遊中で難を逃れた矢部首相は、本日記者会見で──」


 次。


「だからこの犯行は動画とは関係無いF国の工作員だって言っ──」


 次。


「暫定政府が発令した非常事態宣言を受けて──」


 次。


「あざとさMAX! キュアフェアリー!」


 ……プチッ。


「はあ……」


 思わず溜息がこぼれた。テレビの電源を切ったリモコンを、無造作にガラス製のテーブルへ放り投げる。静まり返った誰も居ないリビングに、カコンと乾いた音が鳴り響いた。この期に及んでも、この家には両親は居ない。今、一戸建てのこの家に居るのは俺だけだ。


 相変わらずテレビは、昨日と似たような番組ばかり。まあ、安定のテレ京以外は、だけど。ここに来て、まさかプリティキュアとはな……流石だ。


 そのままソファにゴロンと横になり、俺はこの二日間の出来事を思い返した。


 ──国会議事堂が爆破されたあの日。


 直接被害を受けた訳では無いが、交通機関の乱れや事件の影響を心配した亜里沙さんは、急遽、店を閉めた。とりあえず何があるか分からないから、今日の所は帰った方がいいと言われ、俺達は店を後にした。


 亜里沙さんの判断は正しかった。


 流石に大きな混乱こそ無かったが、あの日の夜はちょっとしたパニックにこの国は陥っていた。テレビの中はもう大騒ぎだ。国会議事堂が爆破された事は、俺の知らない色んな所に影響を及ぼしていたらしい。


 しかし、霞が関(この国の官僚)も大した物だ。国会(政治家)なんかが機能しなくても、直ぐに関係各所に手を回して体制の立て直しを図ったそうだ。最低限の治安も、今の所は警察と自衛隊が協力して保たれている。お陰でパニックに陥った国民が暴動を起こしたとかいう事件は今の所起きていない。まあ、K市の救助活動もしている自衛隊は、かなり大変な事になっているのかも知れないけど。


「とりあえずカップ麺(食料)を多めに買っといて正解だったよな……」


 俺はテーブルの上に放置された、空になったカップ麺を見て呟いた。爆破事件の翌日、つまり昨日の事を思い出したからだ。


 事件の翌日は、俺達の生活にも目に見えて影響が出始めた。週刊誌を買いに何気なく行ったコンビニでは、とんでもない行列が出来ていたし、人集(ひとだか)りから店内を覗き込むと商品棚はガラガラだった。特に食料に関しては、スナック菓子に至るまで食べられる物は一切無い。


 行列に並んでいたおばさんに話を聞くと、スーパーやコンビニ等は日本中が同じ状態なんだそうだ。何でも、政府の非常事態宣言を受けた多くの企業が営業を見送った為、大手の物流網が(ことごと)くストップしてしまった事が原因らしい。いつどこでテロに襲われるか分からないという、無責任な不安をマスコミが煽りまくったのも、もしかしたら原因の一つなのかも知れない。


 週刊誌を諦めて家に戻った俺は、他にも色々な影響が出始めている事を初めて知った。


 よく分からないが株価が軒並み暴落し、金融機関をはじめとした多くの企業が大混乱に陥っているらしい。交通機関にも影響は及び、国際線は全てストップ。テレビでは、帰れなくなった人達が空港や駅に溢れ返っている様子が映し出されていた。


 たった二日だが、この国は相当なダメージを受けている。


 流石に民度が高いと言われている日本人だけあって、今の所、国民が互いに協力し合う事で秩序は保つ事が出来ている。


 だが、俺は不安だった。


 このまま復興を目指すだけなら、大きな混乱は起こらないかも知れない。しかし、今は実質F国との戦争中だ。戦争経験なんて殆ど無い人間ばかりのこの国が、更にこれ以上、テロにまで襲われるなんて事にでもなれば……。もし、警察や自衛隊がまともに機能しなくなった時、本当に今の様な秩序が保てるんだろうか。


 既に小競り合い程度なら一部の人間の食料買い占めや、行列への割込み等が原因で起きている。もし、そいつ等を抑止する様な権力(ちから)が失われたら……本当にこれ以上の混乱したら、何が起こってもおかしく無い。民度が高いなんて言ったって、所詮、自分達の生活が保障されていればの話だ。生活に余裕が無くなった時、人間がどんな行動を取るかなんて想像に容易い。少なくとも俺はそう考えている。


「大丈夫……だよな……」


 誰に向ける訳でも無く、不安に押しつぶされそうな意識を振り払う様に呟いた。そして、不安な気持ちになればなる程、救いを求める様に違う感情が溢れて来る。


 ──秋菜に会いたい。


 一度はっきり認識してしまったその感情は、膨らみ始めると止める事が出来なかった。どんどん膨らみ続けたその感情は、やがて俺の意識を支配する。気が付けば俺は、いつ動き出すやも分からない在来線の駅を通り過ぎ、秋菜のいる『妖精の隠れ家』に向かって歩き始めていた。徒歩で行くには少し遠いが、歩いて行けない距離じゃない。それよりも今は、一歩でも秋菜に近づいているという気持ちだけが俺を動かしていた。


 会える筈も無いのに……。


 俺は、本当は今『妖精の隠れ家』が営業していない事を知っている。亜里沙さんが話してたのを直接聞いていたからだ。フリードのアンケートが行われたあの日、仕入れも不安だし明日から暫く店は閉める──と。


 そんな考えを頭から振り払う様に、俺は無心で店に向かった。


 供給が難しくなったらしい、ガソリンを求める車の大渋滞を横目にひたすら歩く。二時間程歩き、ようやく見えて来た見慣れたアーケード街は、いつもよりも閑散としていた。所々で出来ている行列は、数少ない営業中の店で商品を求める人達だろう。食料以外にも、カセットコンロや日用品を大量に抱え込んでいる人もいる。


 俺はそんな人達を後目(しりめ)にアーケードを抜けると、『妖精の隠れ家』のある雑居ビルに辿り着いた。いつもは点いている一階の看板は光が消えている。分かってはいたが……やっぱり落ち込む。


 俺は秋菜の痕跡を求める様に、閉まっている事が分かっている店に向かって階段を上った。登り切った階段の目の前に『Closed(閉店中)』とかかれたプレートが見える。それでも俺は、店のドアの前まで止まらなかった。そして、正面に掛けられたプレートを改めて見つめる。


開い(やっ)てる訳ないよな……」


 何気無しに呟いたその時、店の中から僅かに声が聞こえた。


 ──誰かいる!


 秋菜に会えるかも知れない……! 


 様子を伺ってからにすればいいものを、興奮と期待に我を忘れた俺は思わずドアを開けてしまった。


 カランコロン……


 乾いたドアベルの音が鳴り響き、店内の気配がサッと静まりかえった。思わぬ来客に驚いた様な、警戒した様な張り詰めた雰囲気。店内にいた人間たちが一斉に俺に視線を向けて来る。思ったよりも多い……しかも、知っている顔ばかり。


 ──店内には見慣れた常連客達が、カウンターに勢揃いしていた。


 萌くん、オカキン、リーさん、希ちゃん……そして、亜里沙さんと秋菜。


 もしかして普通に営業してたのか? 


 看板を消して、常連客だけでこっそり集まっていたんだろうか。でも、それならどうして俺には声を掛けてくれなかったんだ。もしかして俺、ハブられてる?


 そんな悲しい気持ちになった俺は、ふと、彼等の雰囲気に違和感を覚えた。いつもの良く知る彼等じゃない。明らかに気まずそうな顔をして、まるで不味い所を見られたと言わんばかりに動揺している。俺に内緒で集まっていたのがバレただけにしては、何かおかしい……。


 訳も分からず混乱して来た俺が、どうしていいか分からずに立ち尽くしていると、カウンターの奥から亜里沙さんがこちらに向かって歩いて来た。そして、いつもと変わらない優しい笑顔で俺に言った……。



「──夏樹君にはいつか話す時が来ると思ってたわ」

※主人公のいるS市は東北…テレ○入るの? 何故テレ○でプ○キ○ア? と言うツッコミは、ご愛嬌と言う事で勘弁して下さい…(^_^;)


読んで頂いてありがとうございました。

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