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その8

 ミコトたちは小屋の中のほうに入ったものの、そこはなぜか一本の通路のようになっており、薄暗かった。

 だが、道はまだ先の方まであるようだ。


「外から見た時、そんなに大きい小屋じゃなかったのに…」メイが不安げな声でつぶやく。

「鈴露。どこまで続くんだ、これ」

「いや…30畳くらいの部屋だったはずなんだが…」鈴露も不思議そうに呟く。「どこかと混ざってるな」

「どこかって、どこと? 何で?」


 興奮気味のメイに、ミコトが言う。

「これ、サンドウなのかな」

「神社の鳥居からお賽銭箱までの道?」

 メイの答えに、後ろにいた龍が思わず笑う。

「あ、失礼。わかりやすい説明なんだが、ミコトが言うのはたぶん出産の産道じゃないかな」

「はい。それを模した場所なのかと」

「私たちも生まれるの? 何で?」メイの頭は疑問だらけだ。


「えーと、メイさん。ところで、ドラゴちゃんはどこに行ったの?」

「あ! いない!!」自分の周りを見回し探すメイ。

「龍のぬいぐるみなら、祭の傍に来てたよ」

「いつの間に…」

「もうちょっとだな」

 そう言って先頭に出る大斗の後を、一行はついていった。


 ふいに目の前が開け、明るい光が射してくる。

 目の前にいたのは、ソファに座ってくつろいでいる祭と、祭の腕に抱かれたドラゴちゃんだった。

 そしてドラゴちゃんは、布に包まれた卵を二つ抱えている。


 慌てて祭の元へ走り寄るミコトたち。

「祭…! 大丈夫か!?」

「おにいちゃん…。大丈夫よ、私なら」ニッコリ笑う祭。

「え…と…それ、ドラゴちゃんか?」

「そうよ」


 ドラゴちゃんは、祭の腕から降りると、ミコトの後ろから入って来たメイに卵を差し出した。

「“ウマレタ!”」

「お、おめでとう…」うっかり卵を受け取るメイ。

「“イトコ!”」

「ドラゴちゃんのイトコなのね」

「何気にメイさんになついてるな、こいつ」ミコトが小声でつぶやく。


「おお…美しい卵だ」龍がのぞき込み微笑んだ。

「ところで…」大斗が鈴露を振り向く。「一条の宮さまは何を慌てていらっしゃったのでしょう」

「卵が大きくなって行くものですから…」汗を拭う鈴露。

「あ。本当だわ。さっきより大きい。今…鶏の卵を越えたくらいかしら」

「うずらの卵くらいって話でしたよね」ミコトも卵をまじまじと眺める。「アッハ体験だっけ。じわじわ変わってく、あれみたいだね」


 大斗はメイから卵を受け取ると、台座に置かれた二つのカゴに、卵を一つずつ入れた。

「ねえ、大斗おじさん」

「何だい」

「確か、青龍さまの卵って、孵化するまで、どれぐらいかかるの」

「二日程度かな」


「祭の体も、その間、気を付けて見ていた方がいいってことですか」真剣な顔で尋ねる鈴露。

「ふむ。古い文書によれば…孵化する時に、祭ちゃんに何らかの反応が起きる可能性はある」

「大斗くん。祭のこと、よろしく頼むよ」

「もちろんです、龍の宮さま」


「ええと、それから、孵化した後は…」メイが天井を見上げ何かを思い出している。「88日間かけて育てるんでしたよね。『紗由・翔太之巻』に書いてあったわ」

「誰が育てるの?」ミコトが聞く。

「小説の中では、青龍さまがダウンしてたから、白虎さまと朱雀さまと玄武さまがシッターだったみたい」

「つまり、今回は…??」

「青龍さまたちが清流旅館で育てるのかな…」鈴露がつぶやく。


「あのお、それだと、うちは青龍さまだらけになっちゃいませんか?」

 首を傾げるミコトに祭が噴き出す。

「いいじゃない。セイリュウ旅館なんだもの、うちは」

「いや、そういう問題じゃなくて…」


「青龍さまはひと柱だけって誰が決めたの?」

「そうよ。ミコトさん、若青龍さまにお願いしてたじゃない。古の青龍さまと一緒に旅館を守って下さいって」

「そうだけど…」


「安心しろ、ミコト。卵が孵化したら私が引き取る」

「龍おじさんが?」

「ああ。古の青龍さまにも、我が家でご静養いただこうと思う。伊勢は、我々が“命”を抜けたことで揉めていて、ご静養には不向きだ」

「うーん。翔太さんのおじいさんの飛呂之さんだったら…『わくわくドラゴンランド』とか作ってひと儲けってところですよね」

 真顔のメイに龍も真顔で答える。

「考えておこう」


「そう言えば、龍おじさん」メイがさらに真顔で言う。「さっき、言ってましたよね。龍の卵を産んだ前例があるって」

「…ああ」

「黄龍さまの卵だって。それって、鈴露の家の黄龍さまなんですか? 誰が産んだんですか? そもそも龍の卵を産むのは何のため?」


 矢継ぎ早に質問するメイに、祭は言った。

「その質問には私が応えます」

「祭ちゃんが?」

「それと…おにいちゃん。質問への答えとも関係するんだけど、旅館のことで、大事な話があります」

 祭は居住まいをただし、メイとミコトを見つめた。


  *  *  *


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