表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/22

その6

 ミコトが駆け付けると、そこにはバラバラになったタンスの木片が重なっていた。

 その上に、青龍がとぐろを巻きながら座していたが、龍とミコトの姿を認めると、ふわりと天に消えた。

 ドラゴちゃんはというと、木片の上に浮かび、キラキラしていた。足元には巾着がある。


「えっと…タンス、壊したの?」

「違うわ! 一番下の引き出しの鍵穴に、宝箱のカギを差し込んだら、いきなりメリメリっていって、バラバラっていって…壊れちゃったの」

「で?」

「その中から巾着が出てきて…ドラゴちゃんがそれを開けて、中身を自分にかけた…のよ」

「かけた中身って…」

「“カケラ”じゃないかしら」

「うーん」

 メイが言う状況を確認していくミコト。


「ところで、祭と鈴露は?」

「青龍さまが連れて行っちゃって…」

「はあ?」

「今、タンスの上にいらっしゃったのは青龍さまだったのでは?」龍が尋ねる。

「え?…すみません、見ていませんでした…」


「青龍さまは、祭と鈴露くんをどこに連れて行ったんだい?」メイを見つめる龍。

「具体的な場所は言ってませんでしたけど…祭ちゃんと鈴露のために作った伊勢へつながる道、みたいなことを…」

「そうか…」龍がため息をつく。


「おじさん、心当たりがあるんですか?」

「私の家の敷地内に鳥居がある。伊勢につながる場所だ」

「伊勢に?」首を傾げるミコト。

「関係者の家なんかはグーグルマップで全部見てますけど、そんな場所どこに…?」メイも首を傾げる。

「その手のものには引っかからないよ」笑う龍。


「連れて行ってください、そこに」

「うーん…私はガイドにはなれない」

「どういうことですか?」

「私が場所を貸し、紗由と翔太が、祭と鈴露くんのために作ったものだ。だが…今、その鳥居に入れるのは祭と鈴露くんだけだ」


「“トリイ、ハイル!”」

「え?」

 振り向く3人の視線の先には、キラキラしたドラゴちゃんの姿。

「そうか…」

 龍が着物の袂から取り出した石を掲げると、ドラゴちゃんが腕を上げて叫ぶ。

「“イイモノ!”」


「この石は、紗由が亡くなる一週間前、自分の石を預かってほしいと言ってきた時に、おまけだからと、くれたものなんだ」

「この石が欲しいの?」

 メイが尋ねると、ドラゴちゃんは尻尾をぶんぶんと振る。

「“ホシイ!”」

「じゃあ、あげよう」

 龍が石を差し出すと、受け取るドラゴちゃん。

「うわ…キラキラがさっきよりすごいや」


「“トリイ、ハイル!”」

「もしかして…この石って、その場所への入場券みたいなものなんじゃ?」

 ミコトが言うと龍が頷いた。

「おそらく、そうだろう」

「あの…石がひとつで何名まで入場できるんでしょう」

 真顔で聞くメイに、龍が笑い出す。

「みんな、入れるよ」

「よかった…」


「じゃあ、行こうか。心配はないと思うが……」

「思うが?」

「いや、とにかく行こう」

 ミコトは、少々歯切れの悪い答えをする龍をいぶかしく思いながら、再び、龍の家へと向かった。


  *  *  *


 龍の家の離れの裏の竹に覆われた小径をしばらく歩くと、竹がなくなり、視界が開けた、

遠くに鳥居が見える。


 龍はその前でピタリと止まり、ドラゴちゃんを抱っこした。

 すると、まるで目の前に透明な壁があるかのように、ドラゴちゃんは左手のひらで空気を横に撫で始めた。

 ドラゴちゃんの手が、ある一点で止まる。

「“ココ!”」

 龍は、ドラゴちゃんの左手に自分の右手を重ねた。

 ドラゴちゃんがグッと空気を押すと、二人の重なった手は空気を押し破る。

 そのとたん、サーっと一陣の風が吹き、空の雲が姿をひそめた。


「お伊勢さまかな…?」

「本物?」

 半疑問形のミコトと疑問形のメイ。

 あたりをきょろきょろと見回し、意見がそろう二人。

「知ってる伊勢と違う…」


「一般人が入れないエリアだ。“伊勢の奥”と呼ばれる、“命”の機関が置かれている場所」

「メイさんと俺、一般人なんじゃ…」

 そう言いつつも、どんどん鳥居に向かって歩いて行くミコト。

「二人とも“命”の血筋だから問題ない」

 龍の言葉にドラゴちゃんが反応する。

「“トリイ、ハイル!”」

 反射的に鳥居の前で止まり、一礼するミコトとメイ。


 ミコトが駆け足気味に、メイがそっと鳥居をくぐると、その先に青龍神の後ろ姿が見えた。

「おひげがちゃんと見えないわ。どちらの青龍さまかしら…?」

「髭で判別してるのかい」下を向いて笑う龍。

「あとは声ですね。古の青龍さまは、お声が速水奨みたいで、若青龍さまは三木眞一郎みたいです」


「青龍さま!」

 ミコトが唐突に叫ぶと、青龍神は振り向いた。

「古いほう!」

 メイが叫ぶと、ぎろりと睨む青龍。

 龍は、舌を出すメイの横で名乗りをあげる。

「“西園寺の命”西園寺龍にございます。“一条の命”一条鈴露さまと、その妻、祭はこちらでしょうか?」

「そうだが、今は会えぬ」

 青龍神は、それだけ言って姿を消した。


  *  *  *



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ