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その5

「青龍さまの気配、感じないわ…」戸惑う祭。

「どこに来たの?」メイがドラゴちゃんに尋ねる。

「“セイリュウ、キタ!”」

「清流旅館に来たってことか?」ドラゴちゃんをのぞき込む鈴露。

「うちに着けばわかるかなあ。運転代わるよ、鈴露」

 ミコトは運転席に乗り込み、助手席の祭にドラゴちゃんを抱かせると、車を発進させた。


  *  *  *


 ミコトたちが清流旅館に到着し、タンスを紗由の部屋に運び込んでまもなく、龍と奏子が到着した。

 二人で話そうと龍が言う。

 ミコトは、メイたちに、神箒の箱の鍵がタンスに使えるかどうか確かめておいてと言って、龍の後についていった。


 翔太と紗由の祭壇の前に座る龍とミコト。

「なんで突然、ああいう質問になったんだい」

「その前に聞きたいんですが、前の真大祭のことが書かれている小説はないんですか?」

「…ないよ」

「あってもいいですよね。すごく大事な行事なわけだし。あったら、それを読めって言われるでしょうけど」

「そうだろうね」


「それはさておき、華織さんが神箒を宝箱に入れたのが、ばあちゃんが7つか8つの時ですよね」

「そうだな」

「でもって、ばあちゃんは享年71歳だから、華織さんが言ってた60年後の未来は、正確には、ばあちゃんが67歳か68歳の時。3~4年前ですよね」

「…ああ」

「でも、約60年後ということなら、この前の真大祭の時期かも」

「ふむ」


「そして、前回の真大祭は60年前。ばあちゃんが11歳くらいの時、翔太じいちゃんは13歳くらい、龍おじさんは14歳くらい。皆、それなりの年齢だし、何か記録を残しておいてもいいと思うんです」

「それは人にもよるんじゃないかな」

「ばあちゃんはマニュアル作りが好きだったというか、誰にでもわかるように整理して記録して…旅館の仕事はそうやってました。だから長い間、清流を離れていた俺にでも、旅館のことが、そこそこわかってるんです」

「紗由なら、何か書き残しているはずだと」

「はい」


「清流旅館の祭って、誰のためのものなんだろう」

「また唐突だね」笑いだす龍。「神への感謝であれば神のためのもの。神への祈願であれば人間のためのものだろうね」

「ばあちゃんや、じいちゃんなら、前者だと思うんですよね」

「ああ、私もそう思う」

「だとすれば、ばあちゃんは、赤子流怒真大祭をやめさせたかったんじゃないのかなあ」

「なぜだい?」

「だって、いつもお世話になってる神様を消耗させる祭でしょ? しかも、60年に一度のバージョンはすごく大事そうだし…」


「紗由がやめようと言って、なくせるものだと思うかい?」

「じいちゃんが賛成すればなくせると思います。だって赤子流怒は、直接“命”の制度や運営とは関係がないから」

「……」

「西園寺家や一条家がいろいろ協力してくれるのは、清流旅館に世話になっているからであって、赤子流怒自体がものすごく大切な祭というのとは違うと思うんです」


「おまえの考えはわかったよ、ミコト」

「あ。まだあるんですけど」ニッコリ笑うミコト。

「…なんだい?」


「華織さんは“命”制度をやめさせたかったんじゃないかなあって」

「…おばあさまは誰よりも“命”制度のために働いて来た人だ」

「やむを得なかったんじゃないですか」

「いやいや、やっていたとでも?」不機嫌そうな龍。

「そうじゃなくて…龍おじさんの世代は能力者バブルだったわけですよね。みんなの面倒見なくちゃいけないんじゃないかと。有力者の四辻奏人さんが抜けちゃったし」

「それは…」口ごもる龍。


「それに、龍おじさんたちの“命”のやめ方が気になったんです」

「何がだい?」

「メイさんに言われて、ああそうだ、やめよう! みたいな流れになってましたけど、そもそも“命”制度とほぼ関わってなかった、ポッと出の若い子の一言で、そんな大層なことしますかね」

「メイちゃんは西園寺華織の直系。貴重な人材だ」

「でも、“あーくん”なんかは直系の割に扱いが雑じゃないですか」

「いや、それは…」苦笑する龍。

「元々、どうやって皆で“命”をやめるか、考えていたんじゃないんですか?」


 龍が何か言おうとしたその時、メイが祭壇の部屋に息も絶え絶えに駆け込んできた。

「ミコトさん、大変!!」

「どうしたの?」

「タンスとドラゴちゃんと青龍さまが大変なの!!」

「え?」

「とにかく来て!」

 メイはミコトの手を引っ張り駆け出し、龍は難しい顔をしてその後に続いた。


  *  *  *


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