表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

その3

「神箒の入った宝箱、あれの鍵が使えそうな気がしない?」

 祭の言葉に、メイは前に乗り出し、タンスの鍵穴を眺める。

「使えそうな気がする。じゃあ、なおさら運ばないとね」


 そこに龍が部屋へ入って来た。

「持って行くものは整理できたかい?」

「はい。これを」

 タンスを指し示すメイの顔を、龍はまじまじと見つめた。

「大荷物だね…」


「でも、女のカンでこれにします」

「“コレ、ハコブ”」

「ほら。ドラゴちゃんも、そう言ってます!」

「何だかメイがどんどんミコト化してるような…」

 ぼそっとつぶやく鈴露に祭がささやく。

「おにいちゃんを越えた気がするわ、この天然ぶり」


「ん? 祭、天然のブリが食べたいのか?」

「妊婦さんは、お刺身は控えたほうがいいわよ」

 部屋に入って来たのは奏子だった。

“天然率がさらに高くなった…”

 鈴露と祭は同時に思ったが、口にはしない。


「はい、大根と煮物にします」

 微笑む祭に微笑み返す奏子。

「そうそう、あなた。皆に連絡取れました。今夜からお祭りが終わるまで、清流旅館に再度集合して、お手伝いすることになりましたから」

「そうか。わかった。でも…恭介くんは仕事そんなに休めないよな」

「夏休みを取ってなかったから、ここで取るって言ってましたわ」


 有川恭介は、祖父同様、外務大臣をしていた。

 本来、政治の世界に関わる人間は“命”になれないのだが、その“外交手腕”で、なることを認めさせた、ある意味、つわものである。

 ただし、奏子には子どもの頃から勝てない。


「あのー、今夜、祭たちの祝いの席を設けるとして…真大祭まで数日ありますよね。何でまた連続でご逗留なんですか?」

「何度も行ったり来たりは面倒でしょう?」

「はあ…」

「それに二人の留守中、お祭りの準備が駆くんと深潮ちゃんだけじゃあ、大変ですもの」

「あのう、私もおにいちゃんもいますけど?」


「わかった! ミコトさんと祭ちゃん、どこかへ行っちゃうんですね」

 龍が大きく咳払いするが、奏子は意に介さない。

「史緒ちゃんの筆がそう言ってるから…」

「俺、どこに行くんですか」

「えーと、西園寺涼一研究所と西園寺龍邸は終わったから、清流にいったん戻って、それからね。グランフェスタ・ドラゴンブル、西園寺聖人邸、高橋悠斗邸」


「…何をしに?」

「さあ?」

「探し物の続きかしら?」メイが言う。

「真大祭までに戻れるのかな。このタンスを開けて検証しないといけないし…」

「これから行く3か所は二手に分かれればいいんじゃないか。ドラゴンブルへは俺と祭、高橋悠斗邸っていうか、メイの家にはメイとミコト。聖人おじさんちは皆で合流」

「そうだな。そうしよう」

 段取りも決まり、ミコトと鈴露は部屋から大きなタンスを運び出した。


  *  *  *


 清流旅館へ向かう車の中、ミコトは寝入ってしまっていた。

 その胸元には、メイが置いたドラゴちゃんがいる。

 ミコトは夢の中で、まだ小さな子供だ。

 紗由のひざに抱かれて、話をしている。


「もうすぐおまつり!」

「そうねえ。ミコトはお祭り好き?」

「うーん。すきときらい」

「好きは、何が好き?」

「みんな、おどるの!」

「翔太じいちゃんと、駆パパが踊るものねえ」

「かみさまも!」


「…嫌いは、何が嫌い?」

「かみさま、つかれちゃう。かわいそう…」

「そうか…。そうよね…」

「ばんそこ、はる?」

「そうね。じゃあ、ミコトを、神様に絆創膏を貼る係に任命します!」

「はい!」

 紗由とミコトは楽しそうに笑った。


  *  *  *


 ミコトは胸の上に圧迫感を覚えて目を覚ました。

 ドラゴちゃんの顔が目の前にある。

「うわあっ!」

「“ミコト、オキタ”」

 転げ落ちそうになるドラゴちゃんをキャッチし、抱きしめるメイ。

「おりこうさんねえ」

 喜んでいるのか、尻尾がばたばたするドラゴちゃん。


「動くんだ…!」

「小説の中だと歩いてたわよ、ぬいぐるみたち、みんなで」

「そうだけど…」

「うれしそうな顔して寝てたけど、いい夢見てた?」

 メイが微笑むと、紗由を思い出すミコト。

「うん、すごくいい夢。でも、気になる夢だった…」


「何が気になったの?」

 ミコトはメイの問いに答えず、電話をかけ始める。

「龍おじさん? さっきはありがとうございました。…ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな」

 電話の向こうで、龍はどうぞとでも答えたのか、ミコトはすかさず質問する。

「前回の赤子流怒真大祭って、やったの?」


 ミコトの唐突な質問に、メイと祭がミコトをまじまじと見る。

 運転席の鈴露も、振り向きそうになるのをこらえて質問する。

「何、聞いてんだよ、ミコト…清流旅館の大事な祭だぞ?」


「引っかかることがあるんだ。龍おじさんなら知ってるかと思って…」

 ミコトは龍への質問を続けた。


  *  *  *



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ