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その22

「詩音ちゃんたちに過去を拾ってきてもらう? 何を言っているの?」華音がメイを問いただす。

「えーと、前回のお祭りの様子を、プロジェクションマッピングしてほしいんです、会場で。そのために過去の様子を持ってきてもらいたくて」

「臨場感あふれるライブ中継ってことです」ミコトがフォローする。

「私も紗由さんのように、皆の幸せを願いつつ、足りないところは力を貸してもらいながら何とかできればって思うの」

「よろしいですわね」微笑む史緒。


「あ。そうだわ!」メイがミコトを見る。「朱雀さま、白虎さま、玄武さまにも、赤ちゃんの怒りを流すのを手伝ってもらえばいいのよ。そうすれば青龍さまの負担が減るし…」

「そうだね。今回の真大祭を、四神による新バージョン、ファーストステージにすればいいんじゃないかな」

「白虎さまと玄武さまは、真琴おばさまのお願いなら聞いてくれそうよね」

「朱雀さまは…」


「うちのおばあちゃまにお願いさせましょう」

「メイ、あなたがおやりなさい」不機嫌そうな華音。

「私、いろいろ忙しいし、朱雀さまとあんまり仲良くないし…」

 うつむくメイに華音は冷たく言い放つ。

「獣神さまたちと心を通わせられない人間の力が開くことなどありえません」華音の声が大きくなる。


「あ、あの、華音さん。こう見えてメイさんは朱雀さまにすごく気に入られてるんです。一見、仲が悪く見えるのも、朱雀さまがツンデレ気質だからです」

「わかっているわ、ミコトさん。メイに、甘えすぎるなと言いたいだけなの。正直、相手が黄龍さまだったら、今頃とんでもないことになっているわ」

「…黄龍さまじゃなくてよかった」ぼそっとつぶやくメイ。

「あのね…そういう問題ではないの。何だかんだで自分が助けられている、その事実にきちんと感謝をなさい」低い声で言う華音。

「はい…」


「うらやましいですわ。京都のグループには、きちんと守って下さる獣神さまがいらっしゃらないので」史緒がつぶやく。

「いらっしゃらない…? 大きなグループなのにですか?」驚くメイ。

「一条の黄龍さまがいるからという、伊勢の判断なのでしょう」

「え…それって…ひどくないですか??」メイの眉間にしわが寄る。

「何でも一条ありきだったんですね…おばあさまの気持ちも考えずに、じいちゃんもばあちゃんも…」ミコトがうつむく。


「いいえ。それも含めて、お二人は何とかしようとしてくださっていたの」

「でも、何ができたのかな、じいちゃんとばあちゃんには」

「確かに、“命”の家ではない立場で出来ることは限られていました。能力を見せつけるようなことをすれば、また西園寺が叩かれますし」

「人の妬みって、いやですね」

「でも、お二人は京都のグループにも未来を下さったの」

「どういうことですか、おばあさま?」

「いずれ、わかります」


「それから、メイ」華音が言う。「いろんな立場や思惑があることを忘れないでね。私たちは恵まれている立場ではあるのよ」

「それはまあ…特殊能力は別にしても、うちはお金持ちだし、何不自由なく暮らしてきて、好きなように勉強もさせてもらえて、欲しいものを買ってもらえて、いろんな習い事もできて…」

「しかも美人で可愛くてスタイルもいいし、性格もいいし…」真面目な顔で言うミコト。

「ミコトさん。そんなにあからさまに口説かれたら、メイさんが困ってしまうのではないかしら」


「おばあさまは困ったんですか? おじいさまに口説かれて」

「口説いたのは私のほうですから」

「ええーっ!」ミコトとメイが声を揃える。

「欲しいものは欲しいと言う。そして、叶うと信じる心があれば、神は味方をして下さるのです」

「わかりました。俺もがんばります!」

 ニコニコ顔のミコトに、微笑み返す史緒。


「とにかくあなたたちは、このランを運んで、古の青龍さま、若青龍さまと共に、やるべきことをするのがよろしいわ」

 史緒がミコトとメイに微笑んだ時、ヘリコプターのホバリング音が聞こえて来た。

「な、何?」上を見るミコト。

「“キタ!”」ミコトのリュックから顔を出すドラゴちゃん。

「な、何が来たの…?」

 ヘリコプターの風から顔をかばうように腕を添えるメイ。

 上空のヘリコプターのドアが開き、そこから縄梯子に結びつけられた巾着袋が降りて来た。

 目の前に来た袋に気付き、縄梯子から外して受け取るメイ。

 ヘリコプターは、メイが袋を受け取るとあっという間に飛び去って行った。


「これって…カケラ…なの? でも、カケラはもう揃っているのでは…?」

「“エライカケラ!”」

 ドラゴちゃんは、尻尾をぶんぶんさせながら叫んだ。 


  *  *  *


青龍之巻4 終 続いて 青龍之巻5 その1へ


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