その16
「そういうことだったんですね…」
朱雀の顔を両側から、ぎゅうぎゅう揉むメイ。
「いたた…何をする小娘!」
「それはこちらのセリフです、朱雀さま」
「どういうこと? メイさん」
朱雀をメイの手から取ろうとするミコト。だが、メイと引っ張り合いになってしまう。
「痛いぞ! 小僧!!」
「すみません!」
ミコトが手を離した時、メイも同時に離したため、朱雀は地面に落下した。
「…よけいに痛いではないか!」
「すみませんでした!」
ミコトは平謝りだが、メイは何も言わずに朱雀を拾い上げる。
「埃が付いてしまいましたね。払いませんと」
パンパン朱雀を叩くメイ。
「……痛い」泣きそうな朱雀。
「メイさん。朱雀さまが可愛そうだよ。やめてあげて」
「ミコトさん」メイが無表情にミコトを見つめる。「可愛そうなのは私たちのほうよ。本当のことも知らされずに、わちゃわちゃと動かされて」
「ど、どういうこと?」のけぞるミコト。
「最終目的は、昇生おじさまの力を開いて、単独で神との交渉ができるようにすること。そうですよね、朱雀さま」
「…然り」
「え? そんなの、龍おじさんたちが、ちょいちょいってやればいいんじゃないの?」
「おそらく、華織さんが昇生おじさまの力を封じたんだわ。その設定の中に、ミコトさんと私が力を得て、その力でおじさまを開くというのがあったんじゃないかしら」
「龍おじさんや華音さんでは戻せないようになってるってことか…」
「華織さんのご宣託も、開くか閉じるかで逆になるのかも…」
「え??」
「ご宣託は、こうよね。“赤の子は龍の子を開き、龍の子は赤の子を閉じる。これぞ二つの命の理。悪しきもの清らに流れ、真の祭は己が役目を終える”」
「うん」
「凛おじさま、鈴露、祭ちゃん、赤ちゃんを当てはめるバージョンは、正しくない形に開かれた一条家の二人を閉じるのが目的で、このご宣託はこのまま当てはまる」
「前に解釈した通りってことだよね。赤ちゃんがパパのために大活躍で、祭も頑張りましたってやつ」
「そう。そして、もう一つのバージョンが、封じられた昇生おじさまを開くことなのよ。その場合、華織さんのご宣託も逆になる」
「逆ってことは…“赤の子は龍の子を閉じ、龍の子は赤の子を開く”になるの??」
「そういうこと。“赤の子は龍の子を閉じ”というのは、雀のお宿の人でもあった華織さん=赤の子が、青龍さまを主神とする清流旅館の子であるミコトさんの力を封じたってこと」
「ふむ」
「そして、“龍の子は赤の子を開く”の前に、カッコで但し書きが入るんだわ」
「どんな?」
「カケラが集まることで、生まれ損ねた青龍さまが復活する」
「えーと、そのカケラを集めるのがメイさんと俺」
「そう。そして、復活した青龍さまの力を得て、ミコトさんが開かれる」
「なるほど。俺の力が一瞬開いたかに見えたのも、青龍さまがらみだったし、影響を受ける前提なんだな」
「さらに、龍の子であるミコトさんは、赤の子である昇生おじさまを開く。それが、“龍の子は赤の子を開く”」
「うんうん」
「“これぞ二つの命の理”というのは、ミコトさんを指す“命”と、西園寺の“命”を指す“命”」
「そういうことか…」
「“悪しきもの清らに流れ、真の祭は己が役目を終える”というのは、西園寺を取り巻く環境が一掃されて、真大祭は紗由さんの希望通り行われなくなる」
「祭を行うかどうかは、むしろ跡継ぎである俺が決めるんだよね…」
「ただのお祭りになって、青龍さまの負担をなくせばいいだけよね」
「まあ…そうだね」
「以上です」
「え? ちょっと待って。それだとメイさんが開くっていうのは?」
「今の謎解きをできるようになるのが、私が開くということなんじゃないかしら」
「うーん。確かに俺にはこの謎解きは出来なかったと思うけど…これだけのためにメイさんを呼ぶというのはどうなんだろう…」
「じゃあ、それはミコトさんが解いて」微笑むメイ。
「う、うん…」
「どのみち、この後、カケラを集めて青龍さまを復活させなくちゃ」
「うん、そうだね」
「そういうことで、よろしいんですよね? 朱雀さま」
「全部が終わらぬことには判断はできなかろう」
「否定はなさらないんですね」
「判断できぬと言ったまで」
「あ! 見えて来たわ、ドラゴンブル」
ミコトはメイが指さす方向にある、自分の定宿に目をやった。
そして、嬉しそうなメイの横顔から朱雀へと視線を移し、その耳元で囁いた。
「悠斗さん以上にメイさんに甘いですよね、朱雀さまは」
「な、何を…!」
困惑する朱雀に微笑みながら、ミコトは再度、ドラゴンブルを見つめた。
* * *




