表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/22

その13

「“ランプ! ランプ!”」

 メイの言葉に、うれしそうなドラゴちゃん。

「それは、3回何でもお願いを聞け、ということかな?」

 龍が聞くとメイは首を振った。

「いいえ。私がミコトさんによって開かれた時に、その力に振り回されないように、戒めの品が欲しいんです」


「あれ…?」首を傾げるミコト。「魔法のランプの話って、3回願いを叶えてくれる以外に何かあったんだっけ? 鈴露、知ってる?」

「いや…ランプこするとランプの精が出てきて、願いを聞いてくれるとしか…」鈴露も自信がなさげだ。

「メイちゃん、違うの?」祭も不思議そうに聞く。


「子供向けの話としては、そこをクローズアップするから、そこしか覚えてなかったりするのよね。それに元々の話は中国なの、アラビアじゃなくて」

「へえ」口をそろえる3人。

「魔法使いから、魔法のランプ探しを手伝ってくれと言われたアラジンが洞窟へ行って、ランプを見つけるんだけど、ランプじゃなくてお宝を持ち出そうとしたものだから、怒った魔法使いがアラジンを洞窟に閉じ込めちゃうわけ」

「ああ。欲が出ちゃったんだな」頷くミコト。


「で、お守りの指輪から出て来た魔人が脱出させてくれるのね。でも結局お宝は持ち出せず、ランプだけ持ってこられたの。

 それを磨いて売ろうとしたら、有名なランプをこすって…という流れに続くのよ」

「結構、欲にまみれた人なのね、アラジンて」祭が笑う。

「結果的には皇帝にまで登りつめるけど、ランプ探しに行った時点ではぐーたらなニートなのよね…」


「そして、魔法使いにランプを奪われそうになった時に助けてくれるのが、再び、指輪の魔人です」

「なんか、いちばんすごいのは指輪の魔人なんじゃないの?」

「私もそう思うわ」笑うメイ。

「じゃあ、おねだりが違ってないか?」鈴露が言う。「龍の宮さまには、指輪をお願いすればいい」

「鈴露さま…それじゃ戒めの品になりません」祭が苦笑する。


「でも、ランプだって力があるわけだし、戒めになるわけ?」

 不服そうな鈴露にミコトが言う。

「指輪は突発的に、結果として自分を助けたけど、ランプは最初から3回確実に願いが叶う。そういう意味ではランプが最強だな。しかも使い方によっては、怖いことになる」

「…そうだな。力というものは、それをコントロールできる人間しか使ってはいけない。それは“命”の力でも同じだ」


「そう。だから、ランプを持って、それを自分のために使わずにおく。そういうふうに自分を保つことが必要だと思うの」

「そうね」祭が言う。「メイさんは西園寺華織の直系。何だかんだで開いたら最強のはず。龍おじさまや華音おばさま並みに力が出ても不思議じゃない」


「えっと」ミコトが慌てた様子になる。「メイさんがしんどい思いをするなら、開かなくていいよ。今までだって大変な思いをしてきたのに…」

「ばかねえ。お兄ちゃんが守ればいいでしょ」

「え?」

「能力者はそれなりに皆しんどい思いをするのよ。そこに抗っても仕方ないわ」

「祭…」


「だから工夫をすればいいのよ。自分にできる形で。そして他の人にも助けてもらいながら。ばあちゃんだって、じいちゃんだって、そうしてたわ」

「“タスケル!”」

「ほら。ドラゴちゃんも、メイさんを助けるって言ってるわ」

「“リュウ、オク、イク!”」


「奥…?」ミコトが龍を見る。「どういうことですか?」

「さあ。せっかくだから行ってみればいいのでは」

 そう言った龍の姿が、ふんわりとミコトの目の前から消えた。


  *  *  *


 その直後、龍の目の前に開けた光景は、聖人の家だった。

 白虎神が雄たけびを上げ、龍の登場を迎え入れる。

「よく来たな、龍の宮」

「この度は、よろしくお願い申し上げます」

「“ヨロシク!”」

 いつの間にか、ついてきていたドラゴちゃんが、尻尾をぶんぶんと振る。

「そなたも覚醒の時か…?」


「龍おじさん!!」

 龍を探す声と共に、その場に現れたミコト。その横にはメイもいる。

「あ。龍おじさま…」目の前にいる龍を不思議そうに見つめるメイ。「ここは…」

「聖人の家だよ」

「白虎さまもいらっしゃる…」

 大きな白い虎を目の前にして、緊張気味につぶやくミコト。


「“メイ、キタ!”」

 さらに尻尾を振るドラゴちゃんの、「メイ」という単語に反応して、朱雀も現れた。

「ようやく、ここまで来たか、小娘」

 振り返ったメイは、かがむようにして下を見つめた。

「ここは、あんな感じのほうが…」

 掌で大きな姿の白虎を指し示すメイ。


「共に移動しやすい形にしたまで」赤い鳥のぬいぐるみが言う。

「…私が連れて歩くんですよね」

「当然であろう」

「ていうか、どこかへ移動するんですか?」

「“カケラ!”」

 ドラゴちゃんを抱き上げ、頭をなでたメイは、足元の朱雀を無造作につかむ。

「私、これから、行くところがあるんですけど、行き先は同じですか?」


「簡単に進めると思うな」

 ミコトが、朱雀を強く握ろうとするメイから、朱雀を取り上げ、丁寧に撫でた後、尋ねた。

「何かまた、課題があるんですか?」

「然り。メイが開くかどうかは、それで決まる」

 メイは、その言葉に、腕の中のドラゴちゃんを、ぎゅっと抱きしめた。


  *  *  *


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ