表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

〜お互いの認識〜

偶然、いつもの場所で、いつもの時間に赤ずきんと狼は同じ人にもらった、同じ本を読んだ。


「おばあちゃんのお見舞いに行くわ♪…あるところにいる赤ずきんという少女は、心優しい女の子で、今日はおばあさんの家まで行くところでした。」

赤ずきんはひなたで。

狼は日陰で音読をする。

「おいしそうな人間だ。婆さんとあの女の子を食べようじゃないか。…おばあさんの家の近くの森に住む狼はお腹が空いていました。そんな時通りかかった、赤ずきんはたいそうご馳走に見えたのです。」

「木苺だわ!折角だからばあちゃんの好きなジャムを作りましょう。」

「狼はしばらく赤ずきんを観察し、おばあさんの家で待ち伏せする事に決めました。」

「わあ⁉︎狼だわ!」

「パクリ、ゴクリ。狼はおばあさんを食べてしまいました。」

「おばあちゃん。お見舞いに来たのよ。…赤ずきんがおばあさんの家に着くと、待っていたのはおばあさんに化けた狼でした。」

「赤ずきんよ。美味そうな小娘だ。パクリ、ゴクリ。…そうして狼は、赤ずきんも食べてしまったのです。」

「キャーー…赤ずきんの悲鳴を聞きつけやって来たのは一人の狩人でした。おばあさんの家に上がってみたのは、満腹になった狼。」

「バンッ‼︎…狩人は狼を殺し、狼のお腹から赤ずきんとおばあさんを助け出しました。」

「こうして赤ずきんとおばあさんはしあわせに暮らしたのでした。」

「「おしまい」」

読み終わると、なんだか憂鬱な気分になる。

話があまりに似過ぎている。

もしも話どうりなら…。いろんな考えが巡る。

しばらくの間が空いた。

「赤ずきん。私もそう呼ばれているわ。」

「ピヨ助の言ってたことが本当なら…」

もし本当なら、この感情はなんだろう。

口に出して、頭が整理された。

すると今度は、気持ちが整理されていく。

「「私は[俺は]狼を[赤ずきんを]好きになってしまったの?」」

「…絶対に離れたくないなんて思っちゃってる。」

話どうりなら、そんな事が可能であるわけがない。

「この話だと、いつも木陰にいる狼さんが私を食べる。」

「見つかった俺が狩人に殺される。」

「「ああ…シナリオが変わってくれればいいのに」」

本を見ながら同時に溜息をつく。

誰も返事はしない。

解決策も見当たらない。

風が木々を揺らし、去っていく。ただそれだけ。

「…でも、私が悲鳴さえ上げなければ、きっと。」

「たとえ、俺が死んでも赤ずきんは幸せになれる。」

自己満足な解決策が見えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ