〜大切な人[届けこの気持ち]〜
「ガオ」
「ガオ」
「ガァー」
「クゥーン」
狼と熊が争う。
部屋に血が飛ぶ。
おばあちゃんは気絶している。
こんな恐ろしい戦いで、狼は小さい頃の寒い巣穴を思い出していた。
こんな血だらけの僕を見ても、赤ずきんは僕を好きでいてくれるだろうか。
赤ずきんは今どこだろう。
******
小走りでやっと家が見えた時、日は丁度南にあった。
ドアの開く音がする。
「誰だろう?」
赤ずきんは息切れを落ち着かせながら、ドアの方へ歩いていく。
******
腕のいい狩人は、悲鳴の方へやってきて驚いた。
熊と狼が戦っているのだから。
「こりゃ面白い。」
よぼよぼのおばあさんが、ベットの近くで倒れている。なのに狼も熊も人間を食べようとしない。
それどころか、狼はおばあさんを背にし熊を抑え、まるでおばあさんを守っているように見える。
しかし俺も狩人。金がないと生きていけない。こんな一石二鳥の狩りは逃すわけにはいかない。
「バンっ‼︎」
相棒の鉄砲を軽く出し、狙いを定め、引き金を引く。
全てが華麗だ。音が止むと熊がどさりと倒れる。
狼がこちらをチラリと見て驚く。
「悪いな。」
引き金に手をかける。
その時、後ろのドアが勢い良く開いた。
「やめて!打たないで~!」
引き金にかけた指がひかれる。
赤い頭巾の少女が、銃と狼の間に立ち塞がった。
「何を…」=何を馬鹿なっ!




