〜今宵木の下で[失礼ですがあなたは]・[恋って不思議]〜
狼はなぜシの神がこんなにも、初日と比べ話さないのか、疑問だった。
赤ずきんなら気づいたかもしれないが、狼の頭では難しい事だった。
その時にはもう遅かった。
「お出ましのようだよ。隠れたらどうだい?」
細道に通じている草が揺れ、時折、赤ずきんの赤色の服が見える。
「お言葉に甘えて。」
言い終わるが速いか、狼は木に隠れた。
そしてその直後に、赤ずきんが現れ、最初に目に写ったシの神に声をかける。
「初めまして。あなたもここで待ち合わせですか?」
「奇遇ですね。私もなのですよ。」
しばらく、風が草を揺らす音と、それに混じって狼が木から様子を見る音が響いた。
赤ずきんは様々な事を考えた。
この人は誰か。
狼はどこか。
服は汚くないか。
待ち合わせ場所を間違えてはいないか。
どこかに約束した日に書かれていたような印はないか。
そして手っ取り早い方法を選んで、シの神に聞く。
「黒い人を見ていませんか?優しい狼です。」
「会いましたよ。ここで。今もそこにいます。…私はあなたを待っていました。」
シの神は偽善者ぶって、どこか落ち着きのある声で答える。
「では、ひょっとして呪いを解く方法はご存知で?」
赤ずきんは期待を込めた目で聞く。
「はい。私がその鍵です。」
嬉しい答えが返って来た。
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「この赤ずきんとかいう小娘、意外と利口だよね。」
「全くだ。」
ホヘトの神とイロの神は、赤ずきんの質問が、シの神に与えられた情報から本質だけを見抜いたを返答だと、高い評価をした。
要は、シの神の話は遠回しすぎて、長年付き合って来た自分達さえ混乱するのに…。と、すごい読解力の持ち主だと言いたいのだ。
…だがホヘトの神の性格上、認めたくはない。
「あのバカ狼のどこがいいんだろうね。」
ハニの神は狼と比べて評価した。結果二人ほど評価は高くなかったが、呟いた言葉は的を射ていた。
イロの神もホヘトの神も、誰にもわからないと、沈黙が訪れる。
「それはそうと、あの馬鹿狼は本当に馬鹿だよねぇ。この後の事を知らないからこそ、赤ずきんをここに連れて来て来ちゃったんだろうねぇ。」
ハニの神はまたも的を射て話す。
「先に呪いを解いてもらえると思ってたなんて、鵜呑みにするにも程があるというか、本当にお人好しというか。」
水晶玉に目を写したホヘトの神は、狼が木の裏で様子見しているのを見て、言う。
イロの神とハニの神はそれを聞いて頷く。




