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五十二話 心得 ②

「明鏡止水と先手必奪……?」


 コウジさんの言う二つの心得。「明鏡止水」に「先手必奪」。どういう意味だろう?


「まず明鏡止水だが、明鏡は一点の曇りもなきよく映る鏡のことで、止水は流れがなく止まって澄んだ水面のことだ。そして、これら二つのように迷いなく落ち着いた心を明鏡止水と言う。簡単に言えば常に冷静であることと言う事だ。何が起ころうと何を言われようと心を乱さず平常心を保つこと。それが明鏡止水」


 常に冷静で平常心を保つこと。確かに冷静でいるのは大切だと思うけど、それが出来るだけで強くなれるのかな? まあ、「明鏡止水」って響きがカッコよくていいけど。


「心が顔に出ているぞミイナ。たかが冷静でいるだけで何が明鏡止水だ強くなれるなんてわけないと思っているだろう」

「え゛!?」


 顔に出てた!? 私そんなに顔に出やすいタイプだっけ!?


「ふっ。甘いなミイナよ。明鏡止水は簡単に言えば冷静であることだが、戦闘時において冷静で平常心を保つことの難しさを理解していない。戦闘時には様々な感情が湧き上がる。敵対する者への殺意、傷を負うことや死への恐怖、焦り、優越感、快楽。などのものが湧き上がる中で心を揺らがさないことがどれほど難しいことか」


 戦闘時に湧き上がる感情か。確かに恐怖で動けなかったこともあったし、武器に怖がりすぎてそれから目が離せなかったりもした。快楽は無いけど、あの予選のおじいちゃんに対して優越感みたいなのを感じてた気もする。私全然なってなかった。湧き上がる感情に振り回されてたんだ。


「そして、君は明鏡止水の真髄を理解していない!」

「え!?」


 し、真髄!? 明鏡止水の真髄!? 明鏡止水の真髄は冷静で平常心を保つことじゃなかった!? 本当の真髄は別にある!……の?


「まあ、今の君にはまだ早い話かもしれないが」

「ええ!? 教えて下さいよ!」


 そんな真髄がーとか言いながら君にはまだ早いから言わないなんて言わないで欲しい。それならはじめから言わないでよ。


「いや、今の君も十分に魅力的だ。何も焦る必要は無い」

「焦るって言うか気になるじゃないですか! そんな真髄とか言われたら!」

「ふむ。それもそうだな。では、教えようじゃないか。明鏡止水の真髄。それは……」

「それは!?」

「……大人の魅力だ」

「……は?」


 明鏡止水の真髄が大人の魅力……?


「明るく元気でエネルギッシュなレディも素晴らしく魅力的だ。だが! 大人の、大人の落ち着きを持つレディもそれは魅力的なものだ! 明鏡止水の如く穏やかで良妻賢母の如く慈愛に溢れるレディ! それそれは魅力的なものだ!!」

「あっ、はい」


 ああ、話がズレていく。この人は何でもかんでも女性のことに結びつけるんだなあ。そう言えば、武闘会の控え室でも師匠の話をしていたら、いつの間にか天使と小悪魔理論を熱弁されたっけ。今回は大人の魅力か。……ちゃんと聞いとこう。


「……であり……なのである! 大人の魅力、理解したかね?」

「はい!」


 今回のコウジさんの女性講座は為になった。大人のレディの魅力。私も十分に理解したし、なりたい。シオンさんとかいつも馬鹿にしたり子供扱いしたりするもん。だから、大人の魅力を身に着けてそんな扱い止めてもらいたい。逆にたしなめてシオンさんを子供扱いしてやるんだ。そのためには、


「ミイナ。君は今まさに大人の階段を登っている途中だ。そして、その途中でこの明鏡止水を会得出来るかどうかが大人としての魅力を得られるかどうかなのだ! 明鏡止水を会得すれば君は素晴らしい大人の魅力が得られる! どうだ!? これでもまだ明鏡止水を馬鹿にするのか!?」

「しません! 最高です、明鏡止水!!」


 何としてでも明鏡止水を会得しなければ!

 

「そうだろうそうだろう。まあ、これは今すぐ会得出来るものではなく、経験を積み重ねる以外に方法は無いがぜひとも頑張ってくれたまえ。今の君も十分に魅力的だが、これを会得した暁には十二分に魅力的なレディとなれるだろう」

「はい! 頑張ります!」


 大人のレディになるんだ! 明鏡止水を会得して強くなるのと大人の魅力を身に着けるんだ! これは頑張らなくては!


「さて、それでは次に『先手必奪』へと行こうか」

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