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四十二話 かくれんぼ ⑦

「ミッちゃーーん!」

「あっ、リンさん。……とシオンさん」


 ドンさんに町へと送ってもらい別れた次の日の昼前。シオンさんとリンさんが迎えにやって来てくれた。


「ミッちゃ、って左腕どうしたの!? 怪我したの!?」

「えーと、色々ありまして……」


 私は二人に昨夜のことを話した。シオンさんに飛ばされそこでヴォルフに襲われたこと。そして、ドンさんと出会い、手当てをしてもらい町まで送ってもらったこと。


「へえー。あの葉巻きゴリラがそんなことをねぇ」


 ああ、リンさんの中じゃもうドンさんは葉巻きゴリラで定着しちゃったんだ。確かに見た目はそう見えなくもないけど。デカイし、顔怖いし葉巻きだし。でも、中身はすんごく良い人なんだよ。みんな分かってあげてよ。


「あっ! そんなことより早く怪我治してあげてよ! シオンのせいでこんなことになったんだよ!」

「はいはい。さっきからうるせえなこのガキは」

「誰のせいだと思ってんの!?」


 リンさんが言ってくれたお陰で怪我をシオンさんに治してもらう。一瞬で何事もなかったかのように治る左腕。でも、ドンさんの手当てがなかったらこうはいかなかったかもしれない。壊死とかしてたかもしれないし、出血しすぎで死んでたかもしれないし。



「ねえ聞いてミッちゃん! シオンったらひどいんだよ! ボクもミッちゃんと同じく飛ばされてね。武器の一つもない状態でどこか分からない山奥にだよ!」


 ああ、やっぱりリンさんも飛ばされてたんだ。しかも、武器無しで山奥って。かわいそう。私もだけど。


「それで帰り道も分からないから交換魔法で帰ってきたんだけどね」


 あっ、そう言えばリンさんそんな魔法使えたっけ。自分と何か物と場所を入れ替える魔法だっけ。え、それならリンさん全然かわいそうじゃない。


「でも、帰ってきた瞬間また飛ばされたんだよ! それでもう一回やってもまた飛ばされて! 結局、交換出来るように指定していた物全部交換しちゃって帰れなくなって、山の中を彷徨いながら一晩かけて帰ってきたんだよ!」

 

 なんだ結局リンさんもかわいそうな目にあってたんだ。ああ、なんてかわいそうなリンさんと私。私達をこんな酷い目にあわせるなんてその人はどんな人でなしなんだろう。


「そうそう。こいつちょっと目を離すとすぐこっち帰ってきてるから大変だったんだぜ? 油断も隙もありゃしねえ」

「大変ならそんなことしなければいいじゃないですか」

「俺を放置したんだ。そのお仕置きは必要だろ?」


 やっぱりシオンさん放っておかれて帰られたこと怒ってたんだ。いや、そりゃ悪いことしたなとは思うけど、それに対するお仕置きが酷すぎる。この人でなし。


「それにこいつがすぐ帰ってくるからミイナの方全然見れなかったしな」


 え、シオンさん昨日ずっと見てたんじゃないの? シオンさんのことだからいつもみたいに見えないだけでどこからか見ていて笑ってるものだと思ってた。


「こいつがすぐ帰ってくるわ、泣き喚いて辺りの木とかに八つ当たりして痛くてさらに泣くわ、諦めて歩いて帰るにも方向が分かんなくて泣くわで見ていて面白かったからな。ミイナの方は俺は全然見れなくてな」


 え、何それちょっと見たい。絶対可愛い、じゃなくてなんて酷い。しかも、そのせいで私の事放ったらかしだったなんて。師匠のくせに弟子のこと放置か。ドンさんが居なかったら私死んでたんだぞ。ちょっとは反省してほしいものだ。まあ、死んだところで生き返らせられるんだろうけど。


「ね、ひどいでしょ!? ボク見知らぬ土地に飛ばされて色んな魔物に襲われて一晩中歩かされたのに、ごめんの一つも無いんだよ!? ひどいよね!?」

「あーはいはい。ごめんごめん。どうだ二回も謝ったぞ?」

「心全くこもってないじゃん! ゼロだよゼロ! もう、あっ……ふっ……。……もう無理。ねむい……」


 適当に謝るシオンさんとそれに怒るリンさん。シオンさんは変わらずヘラヘラしてたけどリンさんはあくび一つした後眠そうに。そう言えば、一晩かけて山奥から商業都市に帰って来てそのままこの町まで来てくれたのかな。それならずっと寝てないことになるな。かわいそうに。人でなしのせいで。


「宿屋は向こうにあるそうですよ」

「うん……、ありがとう……」


 ふらふらとした足取りで宿屋へと向かうリンさん。ゆっくり休んで下さいね。おやすみなさい。


「ふう。ようやくうるせえのが消えたな」

「うるさいってシオンさんのせいでしょ」

「はいはい悪うございました。でも、あいつずっとミッちゃんミッちゃんってうるさかったんだぜ? ここにもすぐ連れてけって言って聞かねえし」


 リンさん……。自分も酷い目にあって疲れてたはずなのにそんなに私の事心配してくれたんだ。すごく嬉しいな。それに対して、心配なんてかけらもしてなくてヘラヘラ笑ってるシオンさん。良い師匠と悪い師匠。対照的だなぁ。


「さて、お前はゆっくり休んだみたいだし成果でも見せてもらうか」

「え? 成果ってなに、うひゃぉ!?」


 なになに!? なんでいきなり攻撃するんですか!? 変な声出ちゃったじゃないですか!


「レベル三の続き。そろそろクリアしてくれよ?」


 完全に忘れていた避けるのレベル三が不意打ちで再開された。さすが人でなし。


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