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二十五話 受身 ②

 受身の修行を始めて早三週間。私は今日も元気に受身を取る。


「きゅーう。はい、じゅーう。よしよし。最低限は出来るようになったな」

「本当ですか!?」

「ああ。最低限だけどな。ま、次の修行に移るか」


 やった。やっと受身が終わる。この三週間ずっと受身をしていた。後ろ受身に始まり前受身、横、前回り、後ろ回り受身。色んな受身を取らされていた。それがやっと終わる。


「次は何するんですか?」


 これまで逃げる、避ける、防御(受身)と来てるんだから、あっ、これまだ防御続くな。防御って言っても受身しかやってないし次も防御だな。


「あっ、やっぱり言わなくていいです。防御ですよね。まだ終わってないですよね」

「は? 防御はもう終わりだぞ」

「え?」


 終わり? 防御もう終わり?


「終わりって受身しかやってないですよ?」

「じゃ、終わりだろ?」

「え?」


 受身で終わり? え、受身だけで防御は終わり? 全然身を守る術が身についてないと思うんだけど。


「まさか次は攻撃をまともにくらうことがしたいのか? お前Mかよ」

「は!? ち、違いますよ!」


 は? 私は別にMじゃないし! Mじゃない、でも、攻撃をまともにくらって、それを防ぐのを次に修行するんだとは思ってた。


「Mじゃないなら自殺志願者か?」

「違います! なんでそうなるんですか!」


 私はMでも自殺志願者でもない! なんでそうなる!


「だって、そうだろ。ミイナみたいな貧弱な身体で、攻撃をまともに食らったら死へ一直線だろ?」

「だ、だから、それを守るための術を……」

「そんなものは無い」

「ええ!?」


 そんなものは無い!? なんで!? 防御の術は一つもないの!?


「人間の身体なんて、どれだけ鍛えた所で脆いもんだ。威力の高い攻撃をまともにくらえば簡単に壊れる。だから、攻撃に当たらないことが重要だ」


 まあ、それはそうだと思うけど。その脆い身体を固くするのが防御じゃないの?


「そのために逃げる、避けるなど攻撃を身に当てさせないための行為がある。そして、防御は避けきれず攻撃が身に当たる時にする行為。受身により受けた衝撃を軽減したり、打点をずらさせて威力を軽減したり。防御は受けるダメージを軽減するためにある」


 ふーん。防御は受けるダメージの軽減のためかぁ。身体を固くするって言うより、攻撃を弱めるためにするんだね。


「まずは避ける。避けれなかった時に防御だ。でも、打点をずらさせるとかは難しい。ミイナみたいな(才)能無しはもちろん、(才)能有りでも出来ない奴もいる」


 悪かったですね(才)能無しで。でも、(才)能有りでも出来ない人がいるんだ。それほど難しいんだ。


「だから、ミイナに出来る防御は受身。ただこれだけだ。よって、防御は終わり次の修行に移る。才能があれば続いていたのになあ?」

「ぐっ……」


 また私に才能が無いから指導が出来ないと。くそう! あのニヤニヤ顔腹立つ!


「だから、次は……」

「ミッちゃんーー!」


 シオンさんの言葉を遮る元気な声。これはリンさんの声だ。

 

「聞いて聞いて! ボクね、Aランクになったよ!」

「Aランク!?」


 Aランク? Aランクって冒険者のランクが!? リンさん、ついこないだまでEランクだったのに!


「ほぉー。やるじゃねえかリン」

「ふふん! 楽勝だよっ!」


 すごい。リンさんAランクかぁ。私は今だにFランクなのに。


「……二人がボクのこと除け者にするからね。上がっちゃった」

「すまんすまん」


 そう言えばリンさんは、私が受身の修行を始めてから居なくなってたなぁ。受身ってしてる間って、他のこと出来ないからリンさんが暇してたんだよね。その間にクエスト受けてランクアップしてたと。


「でも、すげえじゃねえか。その歳でAランクなんてそうそう居ないだろ」

「うん? そうなのかな? でも、ギルドじゃ史上最速でSランクになった人の噂ばっかりしてたよ」

「へえー。最速で」


 史上最速でSランクかぁ。Sランクって最高ランクだよね。それに史上最速でなったのか。すごいなぁ。私と違って(才)能有りなんだろうなぁ。


「そいつは誰かと違って(才)能有りなんだろうなあ」

「言うと思いました」


 はいはい。予想通り。言うと思ってたし、自分でも思ってた。悲しきかな、(才)能無し。


「でもね、その人なんかズルいんだよ!」

「ズルい?」

「なんか特別扱いされてるんだよ! 登録した時からどんなクエストでも受けていいとか、クエストボードに出ないようなクエストも受けられたりとか。特別扱いされてたから、一週間でSランクになれたんだよ!」


 特別扱いされたから一週間でSランク。いいなあ。私も特別扱いされたい。でも、そんな扱いされたところでクエストクリア出来そうにない。


「ボクは真面目に頑張ってるのに! ズルくない!?」

「はいはい。分かった分かった」


 ムキッーと何故かプンプン怒ってるリンさんをシオンさんがなだめる。それにしても、リンさんもAランクか。すごいなあ。こないだまで私と一つしか変わらなかったのに。まあ、実力は雲泥の差があったけど。


「はぁまったく! それで! ミッちゃん達はどうなの!?」


 リンさんこっちにまで怒らないで下さいよ。けど、怒ってる顔も可愛いしいいや。


「受身の修行が終わりました。次、そう言えば次は何するんですか?」


 そう言えば次何するんだろう? 防御の続きをやるのかと思ってたら違うみたいだし。


「次か。次は実戦だな」

「実戦……!」


 実戦。ついに実戦か。実戦ってことはギルドのクエストをこなしていくんだろう。まだFランクの私。これを機に、私もリンさんみたいにどんどんランクアップしていかないと!


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