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二十四話 受身

「よし! 防御の修行を始めるぞ!」

「はい!」


 シオンさんの指導は避けるから、次は防御の指導へと移ろうとしていた。


「……言いくるめられてるのに……」

「え、なんですかリンさん?」

「なんでもないよ」


 リンさんなんて言ったんだろう。まあ、いいか。そんな大切なことじゃないだろうし。さあ、防御の修行! 


 ……だけど、嫌になってきたなぁ。だって、どうせ避けるの時みたいに二人に攻撃されて、それを今度は避けないで防御するんでしょ。ああ考えただけで痛い。


「まずは受身からやってくぞ」

「受身?」


 受身? 受身ってなに? あっ、攻撃を受ける身? 分かりました。ひたすら殴られるんですね。


「受身って言うのは、地面さんからの衝撃を軽減するための動作だ。例えば、投げられた時は、地面さんから体当たりを食らうことになり、かなりの衝撃に襲われる。それを軽減するための動作だ」


 へえー。地面さんからの衝撃を軽減するためかぁ。それは重要だ。地面さんは強いから。


「受身には色んな型があるが、どれでも重要なのは首を守り、衝撃を軽減させることだ。これは絶対忘れるな」

「はい」


 大事なのは首を守り、衝撃を軽減させること。確かに、この二つが出来ないとすぐやられるもんね。首なんてちょっと痛めるだけで大ダメージだし、衝撃をそのまま受けると動けなくなったりするし。


「と言うことで、まずは後ろ受身からだ」

「後ろ受身」

「見本見せるから見とけよ」

「はい」


 そう言うとシオンさんはゴロンと後ろへ倒れ、手で地面を叩いた。そして、起き上がった。……え?


「分かったか。これが後ろ受身だ」

「……それがですか?」


 あれが後ろ受身? ただ後ろへ倒れこんで手で地面叩いただけが? あんなので地面さんからの衝撃を軽減出来るの?


「後ろ受身は後ろへ倒れる際、倒れる直前に手で地面を叩き、衝撃を軽減する。それに首を丸くすることで首を守り、足を蹴り上げることでも軽減を行う」

「へえー」


 そうなんだー。手で地面叩いて衝撃軽減するんだー。……効果あるのかな?


「……ミイナこっち来てみ」

「え、はい」


 なんだろう? こっち来いなんて。まあ、行きますよお!?


「ぐえっ!」 

「これが受身なしで受けた衝撃な」


 ぐえっ! い、いきなり投げられた! シオンさんひどい……。


「げほっげほっ……。な、何するんですか」

「次にちゃんと受身取れた時な。受身取れよ」

「ちょっ、待っ、……っ! ……あれ?」


 あれ? 全然痛くない。また投げられてちょっとは衝撃があったけど、さっきのと比べると天と地ぐらいの差がある。


「これが受身の効果だ。結構軽減してくれるだろ」

「はい……。すごい……」


 本当にやるとやらないとじゃ全然違う。ちゃんと衝撃から身体を守れてる感じがした。


「じゃ、始めてくぞ。後ろ受身」

「はい。……あれ? でも、さっき私出来ましたよ?」


 シオンさんに二回目投げられた時に、私の身体は勝手に受身を取っていた。それも多分だけどかなり完璧な形で。これってもう修行しなくても出来るってことじゃ。 


「そりゃ俺がミイナの影操って、取らせてやったからだろうが。なら、試しに投げられてみるか?」

「あっ、いいです」


 なるほどー。そりゃそうだよねー。さっきまで知らなかった私が瞬間出来るとかないよねー。そんな才能ないよねー。


「ほら、さっさとやってくぞ」

「はぁい」


 こうして私は後ろ受身の修行を始めた。……けど、


「いーち!」

「……いーち」

「にーい!」

「……にー」

「はい、さーん!」

「……さーん」

「声が小さい! 一からやり直し! はい、いーち!」

「ええー……、……いーち」


 受身の修行って全然楽しくない。それにかっこ悪いしますます笑われる。上達してるのかも分からないし、そもそも出来てるのかすら分からない。


「やる気あんのかー! ろくー!」

「……ありまーす。ろーく」


 シオンさんは熱血系みたいな感じで指導してるけど、顔は常にニヤニヤして私を笑ってるから全然熱血じゃない。言葉だけは熱血系のなんちゃって熱血系指導。


「下手くそー! 全然なってないぞー!」

「ええ……」


 そんなこと言われても。私はちゃんとしてるのに。こうでしょ。倒れる前に手で地面を叩くんでしょ。


「ちがーう! もっと首を丸めろ! へそを見ろ! へそを!」


 へそ? へそを見るの? ……あ、へそを見ようとすると首が丸められる。こうか。でも、しんどいなこれ。


「地面を叩くのは倒れる直前だ! それにもっと強く叩け! そんなペチペチじゃ効果ねえぞ!」


 もっと強く叩く。いや、痛いでしょ。手痛い。


「手がちょっと痛くなるだけか、身体全部が痛くなるのどっちがいい? 実感してみるか?」

「きゅうー!」


 やばいまた投げられる。ちゃんとやろう。手痛いし、首も腹筋もしんどいけど。


 シオンさんのなんちゃって熱血指導は、こうして続いていった。

  



「……ボクやることない……」

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