表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/102

二十一話 避ける ④

「賑やかですねぇ」

「そうだね。うるさいぐらいだねー」


 お昼前の商業都市を歩く。リンさんの言う通り賑やかというより、もはやうるさいぐらいの都市の中。


「でも、このうるささは嫌いじゃないなぁ。なんかキラキラしてるよね!」


 うるさい都市の中はキラキラしている。その通りだと思う。この都市のうるささは活気に溢れている証拠。色んな人達が頑張っている証。それはキラキラしてるみたいに感じるのは私も分かる。 


「ギルドのうるささも、こんなキラキラだといいのにねぇ……」

「……そうですよねぇ」


 都市の中を抜けていき、冒険者ギルドの方へと進んでいく。進んでいくに連れ景色も変わっていく。キラキラした輝きの店が並ぶ景色から、武骨な感じの店や怪しい感じの店が並ぶ景色へ。そして、その一番奥にあるなんというかギラギラ? ギスギス? してるようなギルドへ。


「ああん!? やんのかてめえ!」

「てめえが言い出したことだろ! 殺すぞクソが!」


 ギルドに入る前から聞こえる罵声の応酬。ああ、さっきまでのキラキラが恋しい。


「……入ろっか」

「……入りましょうか」


 あまり乗り気じゃないけど、仕方なく二人でギルドの扉を開け中へ入る。中へ入ると予想通りの光景が広がっていた。


「死ね雑魚が!」

「てめえが死ねカス野郎!」


 ギルドの中では喧嘩が起きていた。二人の男が睨み合い罵声を浴びせ合う。わあ、片方でっかい。そして、それを止めることなくむしろ煽り、それを肴にして酒を飲む野次馬達。なんてことはない。いつも通りの光景。あっ、殴り合いが始まった。


「ランチ二つお願いします」


 私達はそんなことに目もくれずランチを注文する。ここに来てから一週間。もうこの光景にも慣れた。って言うより、前にいた田舎町のギルドも似たようなものだった。どうして冒険者ギルドはこうもギスギスしてるんだろう。


 こんなのだから冒険者ギルドは都市の隅っこの方にある。常に喧嘩が絶えずギスギスしてて、街のみんなから嫌われている。だから、冒険者ギルドの方に行くのいつも嫌なんだよなぁ。街の人からの視線が痛い。


「はっ! クソ雑魚が! 二度と俺様に逆らうんじゃねえぞ!」


 どうやら喧嘩は終わったみたいだ。勝ったのはでっかい方。縦も横もでっかいなあ。顔もいかついし怖い。関わらないようにしよう。


「てめえらもだ! 俺様こそが最強だ! てめえらも俺に逆らうな! てめえら全員俺の下僕だ!」


 喧嘩に勝ったでっかい方が喧嘩を見ていた野次馬達へと言う。あーあ。なんであんな煽る様なこと言うんだか。ほら、さっきまで賑やかだった野次馬達もシーンとして殺気立ってきた。


 もう喧嘩は止めて欲しい。いや、やってもいいから外でして。私は絶対巻き込まないで。


「ぷっ。ミッちゃんミッちゃん。あんなので最強だって。あれだね。井の中の蛙湖を知らずだね」

「それを言うなら海ですよ」


 湖じゃなくて海ですよ。大海を知らずです。リンさんってちょくちょく間違えるのよね。可愛いしいいけど。


「ああ!? 誰だ今の言った奴は!?」


 やばっ! 聞こえてた! ひえー。こっち見ないで。違います違いますから。私でもリンさんでもないですから。私達はランチを食べにきたただの善良な冒険者ですから。


「……はい! この人だよ!」


 ちょっとリンさん何言ってるんですか。言った人なんて居ないですよ。それなのにこの人って。そんな嘘ついたおかげで巻き込まれた人が可哀想でしょ。それに人を指差すのは駄目ですよ。まあ、今は私だから許しますけど。……え?


「ほおー。てめえか」

「は!? え!? はあ!?」


 リンさんは私を指差しニコニコ笑う。それを見たでっかいのは、私の方へピクピクと何かを堪えるように笑いながらこっちへ来る。


 そんな……。師匠が弟子を売るなんて……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ