修行します
7歳になった。
朝日が登り始めた頃、エマリウス邸の庭では、ゼレフが走り込みをしていた。
「ふっふっ」
(そろそろ、家の回りだけじゃ、楽に(・・)なってきたなぁ)
この世界の人々の為に補足をしておこう。エマリウス邸の家は普通の家よりかなり広い。普通の家が三件分は広いのだ、その敷地を7歳の男の子が楽に(・・)なるなどないのだ。
ゼレフが異常なのである。
ちなみに今のゼレフのステータス
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ゼレフ・エマリウス
ジョブ『武拳師』
属性 火・雷・光
攻撃 40
防御 40
敏捷 55
魔力 35
魔耐 40
スキル:"武踏乱舞"固有スキル
"魔拳"固有スキル
武術 Bクラス
赤魔法 Cクラス
加護:女神エルヴィスの加護
装備:"焔雷の黒拳"
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かなり強くなっているのである。これならそこらのF~Dクラスの魔物なら余裕で倒せるのである。
「さて、日課の走り込みも終わったし、次は筋トレっと」
ちなみに、普通の7歳の子供なら何とか3時間くらいで走り終わるのに、ゼレフは1時間足らずで、走り終え、汗をちょっと掻いたぐらいで、あまり息切れはしていない。
そのまま足を伸ばしたりして固くなった体をほぐして、筋トレを始めた。
「1、2、3、4、5.....」
腹筋→背筋→スクワット→ストレッチ、どれも30回を3セット、それでもちょっと汗を掻いたぐらい、まだまだ体力はありそうだ。
「さてと、終わったし、"武踏乱舞"の練習しますか」
ゼレフは、足を肩幅まで開けて、右手を自分の目の高さに、左手を自分の胸の高さに、ゼレフが我流で編み出した独特の構えだ。
「はぁぁぁ.....」
そのままゆっくり息を吐いて、左手で突きを放った。そのまま流れるような動作で、右手で拳を突き出した。次に膝蹴り、回し蹴り、裏拳、正拳付き、様々な技を流れるように放っていく。いずれもかなりのスピードだ。そのまま風を切るような勢いだ。
一通り技を出したら、動きを止めて、ゆっくり深呼吸をした。
「ふぅ、だいぶできるようになってきたな。最初にやったときは、しょっちゅう転んだけど、今じゃかなり使いこなせるな、"武踏乱舞"」
ゼレフがやったのは、『武拳師』の固有スキル
"武踏乱舞"だ。このスキルの効果は、
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"武踏乱舞"
・自身が身につけたあらゆる技をまるで踊り舞うように繰り出すことが出来る
・鍛練を続ければ続けるほど、その連度は高まる
・"気"を纏うとこが出来る、が鍛錬が必要
・魔拳と併用できる
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このような能力である。
「次は、"魔拳"の練習だな」
また武踏乱舞の時と同じように、構えをとった
「火球を右拳に付与」
ゼレフがそう言うと、右手に火球のような火の玉が纏った(・・・)
そのまま右手でパンチをすると、
「焔拳!」
右拳から、火球が回転しながら発射した。
それはとても、Fクラスの赤魔法の威力ではなかった。少なくとも、Dクラスの威力はあった。
これが『武拳師』二つ目の固有スキル"魔拳"の能力である。
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"魔拳"
・自身の拳に魔法を付与できる
・付与された魔拳に威力補正がかかる
・どんな魔法も付与できる
・武踏乱舞と併用できる
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此方のスキルもかなり協力なスキルである。
このスキルの最大の強みは、魔法を拳に付与し、
纏うことが出来るということだ。
皆さんも想像してみてほしい、本来飛ぶ筈の魔法が、拳に纏われて至近距離から喰らい、威力補正も、かかっている。まさにチート。
「次は、左拳に雷球を付与」
今度は左手に雷球が纏われた。
そのままパンチ!
「雷拳!」
左拳のパンチからの雷球の回転アタック!此方もDクラス並の威力だ。
「よし!」
("魔拳"も、かなり慣れてきたな。最初は、かなりビックリして、そのまま爆発しちゃったからな~、俺も随分成長したな~)
自分の技に満足し、昔を思い出して、懐かしんでいると、
ぐぅ~
と、ゼレフのお腹の音がなった。
「あれ?もう朝ごはん?」
「昼御飯よ、ゼレフ...」
ゼレフが声のした方を向くと、呆れたような表情でバスケットを持ったリベリアが来た。
「もう、夢中になってて気付かなかったの?もうお昼になってるわよ」
「え...」
ゼレフは慌てて時計を見ると昼の12時を、過ぎていた。
それに気付いたゼレフは顔を赤くして俯いた。
《かわいぃですねぇ(о´∀`о)
やっぱり、7歳の体だから、精神もそっちにいっちゃうんですかねぇ?とりあえず記録記録♪》
〈姉さんが真面目に仕事してる....?〉
[明日は雪が降りますね]
《リベリアもエルヴィス様もひどいですよー
私もたまにはちゃんとやりますよー
プンプン(・ε・` )》
〈いつもそうしてください〉
[そんなことより、赤面ゼレフ君すごくかわいいです(//∇//)]
《〈それは同感ですね(♪)》〉
「全然、気付かなかった....」
「まぁ、あんなに楽しそうだったからね。夢中になって時間を忘れちゃうのは、私にも経験があるわよ?」
それを聞いて、ゼレフが驚いた顔をしてリベリアを以外だとばかりに見た。
「ほんとに?」
「えぇ、私もゼレフ位の時は、魔法を使うのが楽しくて楽しくてしょうがなかったわ♪」
「そうなんだ、以外だなぁ。母さんはもっと清楚な感じだと思ってた。今もきれいだし」
「あら♪嬉しいことをいってくれるわね♪ありがとう、ゼレフ♪」
そう言って、リベリアはゼレフを抱き締めた。
「ふわ!?」
だが、ゼレフははねのせたりせず、されるがままにしていた。
やがて、満足したのか、ゼレフを開放して、リベリアは、
「そろそろお昼にしましょうか」
と言って、庭のベンチに腰かけて、ゼレフを座らせて、バスケットを開いた。
中身はサンドイッチだった。
「うわぁ!美味しそう!」
「ふふ、召し上がれ♪」
そして、ゼレフはよっぽどお腹がすいてたのか、すぐにサンドイッチを平らげてしまった。
お昼を食べた二人は、そのまま家の中に入り、ゼレフはお風呂に入った。
この世界では、電気の代わりに、魔石を使っている。火の魔石と水の魔石で湯を沸かして、石鹸のようなものを使って体を洗っている。光の魔石で明かりを、水の魔石と風の魔石で洗濯を、魔石はこの世界になくてはならない、電気のようなエネルギー源なのである。
ゼレフはそのまま疲れたのか、眠ってしまった。
その寝顔を見て、少し悲しそうな表情でリベリアが、
「この子も、15歳になったら、この家を出ていくのよね...でも、この子の人生だもの、私とオルターのように、自由に生きてほしいわね」
そう言ってゼレフの頭を撫でた...