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珍しい結末が見られたからだろうか、前世のわたくしは大喜びし、その「監禁エンド」を迎えるためにはどうするべきか研究を始めた。
その結果、たしかにヒロインの選択によって導かれるエンドが変わるけれども、ヒロイン自身の行動によってエミリオが起こす行動が変わるというよりも、ヒロインの選択によってエミリオが明らかにする過去の寂しさの度合いが変わり、それによって結末が左右されるということに気づいた。
たとえば、ある時点でヒロインがエミリオのデートの誘いを断ると、エミリオの「監禁エンド」へ一歩近づくのだけれども、同様に断っても「友情エンド」に近づくときもある。
ヒロインが断った時、エミリオが「……公爵家で育ってから、誰かと遊びにいったことはない。自分が遊ぼうと誘うと、兄も姉も拒否した。彼らの態度をみていた他の子どもたちも、自分とは遊んでくれなくなったからだ」というような、過去の悲しい独白を始めたら「監禁エンド」に近づく。
逆に、「ちぇっ。じゃぁ今度は絶対デートしてくれよな!」などと言っている時は、「友情エンド」に近づいている。
ヒロインの選択が同じなのに、結果は異なる。
これに前世のわたくしは苦労し、なかかなか「監禁ルート」を出せないと嘆いていた。
……それにしても、いくら珍しいエンドだからといって、「監禁ルート」なんて恐ろしいものを出すための条件を嬉々として探るなんて、前世のわたくしはなんと研究熱心だったかと思う。
おかげでエミリオに寂しい想いをさせるのは危険だと参考になったので、とてもありがたいけれど。
監禁は、犯罪だ。
ハッセン公爵家の身内から、そのようなおぞましい犯罪者をだすわけにはいかない。
それにエミリオが、そんなことをする人間になってしまうのも嫌だ。
……とはいえ、これがお兄様で、相手がわたくしなら、監禁というのもロマンティックかもしれないなんて思ってしまう。
ずっとお兄様とふたりだけの生活なんて、ちょっとあこがれる。
あぁでも、お父様は一緒じゃなくちゃいやだわ。
……ルルーとか、シスレイとかにもたまには会いたいかも。
それに貴族としての義務をおろそかにするわけにはいかないから、参内もしなくては。
あら、それじゃぁ、今の生活と、あまり変わりないかしら。
……でも、そんな普通の生活を、はやくまた送りたい。
お父様もお兄様も、はやくご無事で帰ってきてください……。
いいえ。今はそんなこと考えちゃだめ。
エミリオのことを考えなくては。
シャナル王子は、わたくしに時々王子宮に泊まってほしいってお願いされた。
きっと非常事態で王城の人間が苛立っているのを感じ取って、怯えていらっしゃるのだろう。
わたくしでお役に立てるのなら、お傍でお守りしたい。
けれど王子宮に泊まるとなれば、エミリオがハッセン公爵家で一人になる。
まだ公爵家に来て3日なのに、家族がみんな家をあけるなんて、だいじょうぶかしら。
使用人たちにはお願いしていくけれど、さみしくておかしくならないかしら。
食前のワインをいただきながら、わたくしは実家やファラン商会からの感謝を伝えるエミリの様子をうかがった。
次は、エミリオです。
くるくる視点がかわってごめんんさい。