シャナル王子-4
でも、僕は腹が立ったけど、それだけだった。
実の両親からの扱いにはちょっとむかついたけど、王城に連れて行かれたら、今度は魔力充魔力充って言われてさ。
僕って、どこでもこんな扱いなんだなって。そういう人間なんだなって、開き直った。
義理の両親になるサラベス王や王配スノー様とは、たまに顔を合わせるぐらいだった。
実の親よりはいい人たちで、ちょいちょい話しかけてきたり、食事を一緒にしたりするけど、基本的にあの人たちは「魔力量が多くて王位につけそうな僕」に興味があるだけなんだと思うんだよね。
ま、本人たちも「王である自分」「王配である自分」の役目を果たすことに苦心していて、個人としての自分は後回しになっているっぽいから、責める気はないんだけど。興味もないし。
ただあの人たちは、お互いのこととかはすっごい大切にしあっていて、それは羨ましかった。
王様になるなんてごめんだけど、サラベス王と王配スノー様みたいな夫婦に、リアとなれるなら。王様やってもいいかなーって思ったくらいだ。
王族に対しては、それくらいかな。
兄様たちは、一人は留学中だし、もうひとりは影が薄いから、たまに食事をしても「あー、いたっけ」って感じ。
でもって、王城の官吏たちは…、ここでも僕は「子ども」っていうか人間じゃないんだなぁっつくづく思いしらされた。
魔力充、魔力充、魔力充!
僕の存在価値って、9割それだと思ってそう。
魔力充できるすっごい装置ができたら、僕よりそっちを選ぶだろうな。
あ、もちろんリアはべつだと信じているけどね。今はね。
当時の僕は、リアも他の人と一緒くたに扱ってた。
まぁそういうわけで、僕は開き直ったってわけ。
あっちが僕を人間扱いしないならさ。僕だって、他の人を人間扱いしなくたっていいよねー?って思うようになったのは、そのころかな。
で、ちょうど目の前に「愛されて育っています」って顔のリアがいたから、いじめたってわけ。
僕の見た目は、天使みたいにかわいいらしい。
自分としてはがっしりしてたくましい、リアが好きそうな外見のほうが憧れるけど、この容姿のおかげで、僕はだいぶん助かってきたので、自分の容姿が嫌いというわけじゃない。
なにしろこのおめめぱっちりまつ毛ばさばさの美少女顔で、「お願い」っていえば、かなりの女性がお願いをきいてくれるからね。
こっちはリアを含む。
自分の容姿に感謝もわくってものでしょ。
この容姿にはもうひとつの特典があって、悪いことを考えていてもバレにくいんだよね。
見た目は純粋無垢に見えるらしく、かなりヤバめの現場を見られても「僕…、そんなつもりじゃなかったの」って言ったら許されたりね。
まぁ持続的に活動していれば、いつかはバレるけど。
リアへのいじめにも、この容姿をフル回転したんだよ。
見るからに華奢で体力のなさそうなリアを、休日も出勤させるように言ったり、夜通し絵本を読むように命令したり、池に投げ込んだぬいぐるみをとりにいかせたり。
「さみしいから」とか適当にそれっぽい理由をいえば、リアは疑いもなく僕の「お願い」を聞いてくれた。
リアはぜんぜん堪えた様子もなく、というより努力すれば達成可能な任務を喜んで引き受けていたらしい。
あとで話していても、いじめられていたとはまったく思っていないっぽかった。
助かったけど、あそこまで鈍感だと心配になる。
一度はあの時のことを謝らなくちゃなんて思いつめていた僕がバカみたい。