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膝をついたままのシスレイが、頭を下げて王子に願い出る。

シャナル王子は大きな緑の目をやわらげて、わたくしを見た。


「そうだね。リアも一緒に僕の宮で働いてくれるなら、僕がそう取り計らってあげてもいいかな?」


「わたくしがですか!?」


シスレイの勢いにのまれて呆然としていたわたくしは、とつぜん自分にお話がきたことに驚いてしまった。

シャナル王子は「うん、そう」とうなずいて、


「リアなら王子宮の仕事も慣れているし、すぐに仕事に入れるでしょ?……それに僕、シスレイのこと、よく知らないもん。あのね、人事部の許可がおりた人以外を王子宮にいれるのって、保安部の人がすごく嫌がると思う。シスレイだけ連れて行ったら、ダメって言われると思うんだ」


「それはそうでしょうけど……」


そもそも文化部に所属しているわたくしたちが、王子宮で働くこと自体が許可されないだろう。

あぁでも今は、他の文化部の官吏たちも、他部署でお手伝いをされているから、許可される可能性はあるのかしら。

けれど王城の中でも政府組織の集まる場所と、王族の方々が使用されている場所は、扱いが違う。

王子宮で働くのは、たとえ雑役であってもそれなりの信用を必要とするはずだ。


ラットン子爵も子爵位にあられるのなら、王からの信用はあついのだろうと思う。

わたくしがハッセン公爵の娘であることで信用され、王子宮で働くことをいったん許可されたのなら、ラットン子爵の娘であるシスレイにもその資格はあるはずだ。

けれども、一度人事部に王子宮で働くことを許可されたわたくしとは異なり、王子が保安官たちに無理を通すための説得材料には弱いだろう。

王子自身、シスレイのことはよくご存じじゃないようだし、王子がシスレイの人となりを保証しても説得力なさそうだ。


わたくしが考え込んでいると、王子は言葉をつづけた。


「リアが一緒なら、説得できると思うんだ。リアと一緒に働いていた官吏も多いし、みんなリアの仕事ぶりを認めていた。わざわざシスレイに仕事を教えるのは手間だけど、それもリアがしてくれるなら実践力になるって言えるしね。リアには以前人事部が宮で働く許可をしているから、保安部としても安心だろうし。シスレイのひととなりは、リアが保証してくれるなら問題ない。そしたら、ね。僕、絶対許可してもらえると思うよ」


いつのまにか、王子はわたくしの手を握りしめていらした。

王子の澄んだ声で語られた言葉が、わたくしの心をゆさぶる。


王子宮の官吏たちが、わたくしの仕事ぶりを認めてくださっているというのは本当なのかしら。

王子のお世辞だとしても、すごく嬉しい。


帰宅せよというリンダ様の命令に逆らうことになるのは申し訳ないけれど、わたくしを必要としてくださる部署があるのなら、そこで働くのは許して下さるかもしれない。

王子のお申し出を受けたくて、わたくしはこのお話を受けてもよいものかと考えた。


「リーリア、お願い!わたくし、わがままだってわかっているけど、この非常時に家で守られているだけなんて嫌なの!! 王城で働きたいの!!」


王子の横から、シスレイが期待に満ちた目でわたくしに迫る。

王子もシスレイをおしどけるように、ますますわたくしに肉薄して、


「リアは、僕のところで働くのいや?しばらく文化部はおやすみなんでしょ?その間だけでも、僕のところにいてくれない?……僕ね、ほんとうはちょっと怖いんだ。サラベス王たちは心配することはないっておっしゃるし、リアのお父様はすごくお強いからだいじょうぶだって思っているんだけど、大人はみんなピリピリしているし。いつもよりいっぱい魔力充もさせられるから、疲れちゃうし。リアが傍にいてくれれば、がんばれるっておもうんだけどな」


「かしこまりました。王子のお傍でお仕えできるよう、わたくしからもお願い申し上げます」


王子ににそんなふうに願われて、わたくしが拒絶などできるはずなかった。

次はたぶんシャナル王子です。

ちょっとクズっぽいです。

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