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マリオさんは遠話という方法でエミリオに連絡してきたけれど、これは一般的な方法ではない。

エミリオの話によると、マリオさんはメリラ州にあるファラン商会の支店をかけずりまわってお金を集め、多額の寄付金をメリラ州庁に寄付することで、メリラ州で2か所しかない遠話を借りられたとのことだ。

ファラン商会の跡継ぎが「多額」というほどのお金と、州庁にわたりをつけられるコネ、そしておそらくはマリオさん自身は口に出さなかっただろうけれども、今後のメリラ州におけるファラン商会の展望。

それが、たった一度の遠話の代償だ。


遠話を政府関係者以外の人間が使用するというのは、それほどにハードルが高いことなのだ。

そのマリオさんだって、義弟がハッセン公爵の養子になっていなければ、王都での連絡先に困っただろう。

一般的な庶民が、遠話を使ってシェリー州の事件を王都にもたらす可能性は、限りなく低い。


王城の人間や州庁の人間は、もちろん事件を知っているだろうけれども、上からの伝達が降りるまでは、基本的には情報を開示しないだろう。

ということは、これらの情報が王都まで伝わるには、数日の猶予があるはずなのだ。


その情報をハッセン公爵家が漏えいするなんて、あってはならない。

慎重を期すなら、マリオさんから連絡があったことをご家族に伝えるのは、シェリー州の事件が王都にも広まるだろう数日は待つべきだ。


……けれど。

お兄様たちは、もう王都を出られただろう。


お兄様のお話では、今回の出動は緊急を要すること、行先が国内であることから、300騎のみの出動になるという。

その間の補給や宿は、各州で用意されているそうで、歩兵や補給部隊は待機だそうだ。

異例の編成の軍騎士が300騎、早朝の王都を疾走していったのだ。

多少の噂はたつだろうし、そういったところからほころびが生じて、なにかの拍子に事件がエミリオやマリオさんのご家族の耳に入らないとは限らない。

なんといってもマリオさんは王都でも著名なファラン商会の方で、ザッハマインやその他のシェリー州にも支店をお持ちなのだから。

とつぜんシェリー州と連絡が取れなくなれば、周辺の州の支店から情報を集めるだろう。

いえ、周辺の州から連絡が入るかもしれない。

ファラン商会が本気で情報をまわしたら、どれくらいの期間で王都まで情報が伝わるだろうか。


いえ、ファラン商会だけではない。

州を閉鎖したのに、なぜ閉鎖したのか情報が公開されないなんて異常事態が見逃されるはずはないのだ。

数日は情報が伝わらないなんて、わたくしの希望的観測なのでは……?


お父様とお兄様の留守を預かったのだからと一生懸命考えても、考えはめぐるばかりで、結論がでなかった。

だから、賭けてみた。


まだ少ししか知らないけれども、エミリオはいい子だ。

お父様だって、見込んでいた。

その子が大切に想うご家族たちなのだ。

口止めをした上でお伝えして、話が広まらないことに賭けてみよう。


……この話が彼らから洩れれば、今後の付き合い方がかわるだけだ。

わたくしがそう考えていることくらい、ファラン商会の方なら察してくださるはず。

そしてハッセン公爵家は、ないがしろにできるような家ではない。

リアのぐだぐだ悩みが長くなりすぎたので、割りました。

次話、連投します。

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