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前世のわたくしが、なぜエミリオに着目していたのか。

これはいたって単純で、前世のわたくしはエミリオが好みの異性だったらしい。

研究対象なのに、自分の好みの相手を選ぶなんて軽薄だけれど、好きな人のことをよく知りたいと思う気持ちはよくわかる。


同じ魂をもつはずなのに、前世のわたくしと現世のわたくしの異性の好みがぜんぜん違うのは不思議だけど……。

きっとゲームでは、お兄様の魅力がうまく描けていなかったんだろう。


お兄様のわたくしを見つめる優しい眼差しや、艶やかな声でわたくしの名前を呼ぶ時の、あの凄まじいまでの魅力。

あれをゲームでもきちんと描けていたのなら、前世のわたくしもきっとエミリオではなく、お兄様に恋をしたと思う。

あんな素敵なお兄様の表情を、他の女性がうっとりと眺めているなんて、想像しただけでも悲しくなってしまうので、ゲームでうまくお兄様の魅力を描けていなかったことは少しだけ嬉しい。

けれど、そのせいで、前世のわたくしのゲームでの記憶のほとんどがエミリオの情報で占められているのは残念だ。


ヒロインの恋の相手となる可能性がある男性を、攻略対象という。

攻略対象は、他の乙女ゲーム等でもある程度共通した性格的・外見的特徴を備えている。

それらの特徴を、前世のわたくしや研究者仲間たちは分類し、ラベリングしていた。

彼女たちはそれを「属性」と呼んでいた。


彼女たちの研究成果によると、「プリンセス・ルールズ」でのエミリオとお兄様の属性は下記の通り。


・エミリオ ゲーム開始時の年齢は15歳で、攻略対象の中では最も年下。

      子犬のような素直な笑顔と人懐っこい性格、それとは裏腹な強力な魔術が特徴。

      属性は、「弟」属性。

・お兄様  ゲーム開始時の年齢は、18歳。

      魔術・武術・学問すべてトップクラスの成績をたたき出す秀才。

      怜悧な男らしい美貌と、誰にでもクールな対応をすることから、属性は「クール」属性。


ちなみに、わたくしはといえば、エミリオとお兄様の兄妹として名前はあがるものの、ゲームでの影は薄い。

せいぜい唯一ハッセン公爵家の血が流れる令嬢であることを笠に着て、ふたりにまとわりついたり、ヒロインとふたりが親しくなろうとするのを邪魔したりする脇役として描かれているだけだ。

こういったヒロインと攻略対象の関係をはばむ女性を、前世のわたくしたちは「ライバル令嬢」と呼んでいた。

わたくしのように積極的にヒロインの邪魔をする場合は「悪役令嬢」と呼ばれる。

……つまり、わたくしの属性は「悪役令嬢」。

「悪役」だなんて、なんだか落ち込んでしまうわ。

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