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立ち尽くすわたくしとエミリオに、お兄様はお辛そうにおっしゃった。


「幸い、シュリー州長官が素早くシュリー州を閉鎖されたため、他の地域は無傷だ。王は国境障壁を張りなおされた」


「国境障壁を張り直しって……、シュリー州が閉鎖されているのにかよ!?それって、今のグラッハの王の守りが、シュリー州には届かなくなるってことだろ!? まさか王はシュリー州を見放されたのかっ?」


エミリオはお兄様につかみかかるようにして、尋ねる。


「エミリオ!お兄様に乱暴するのはやめて……!」


エミリオの腕をおさえようと手を伸ばすと、エミリオはすぐにお兄様から手を離し、


「悪い……。動揺した。マリオとねーちゃんが、いまザッハマインにいるかもしれねーんだ。海からの貿易を扱っているのって、ザッハマインだけだろ?新婚旅行がてら、あっちに行ってくるって……」


必死で平静を保とうとするエミリオは、けれど崩れるようにその場に座り込み、両手で顔を隠した。


「タイミング悪すぎだろ……。なんで今なんだよ……」


「だいじょうぶ、だいじょうぶよ、エミリオ……」


わたくしはエミリオの震える肩を抱き、願望のような慰めを口にする。

エミリオのお姉さまとお義兄様のことは、わたくしは直接は知らない。

けれどその名は知っている。お二人のご結婚のなれそめも。

エミリオにとって、とても大切な方たちだということも。


海からの攻撃で、国境の障壁が壊されたと、お兄様はおっしゃった。

つまりシュリー州には、国境の障壁を攻撃して壊すような輩がいる、ということだ。

ただ障壁を壊すだけ壊して、攻撃者が去ったとは考えにくい。

目的は、グラッハへの戦か、略奪か。

どちらにしても唯一の港町であるザッハマインが無傷だとは思えない。

そこに向かわれたというマリオさんたちがご無事だなんて、そんなの願望でしか語れない。


唯一わたくしが頼みにできる「だいじょうぶ」の根拠があるとするなら、それは「プリンセス・ルールズ」の情報だけだ。

ゲームの中のエミリオの人生に影をおとしていたのは、ハッセン公爵家の面々に冷たくされ、家になじめないということだった。

けれど、エミリオがあんなに大切そうに語っていたお姉さまや、慕っていたマリオさんを今うしなったのなら、1年後のゲーム開始時間に、エミリオがその悲しみから立ち直っているはずはない。

ハッセン公爵家の面々に冷たくされたことなど比較にもならないほど、エミリオを悲しませるだろう。


だからマリオさんとお姉さまは無事だと思う。

そう信じたい……!

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