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ハウアー(シャナル王子付き側仕え)-1

リーリア・ハッセンの姿が見えなくなってしばらくすると、シャナル王子の態度がすこしずつ変化する。

先ほどまでのあまったれた子どもの所作が消え、傲然としたふてぶてしい普段の王子へと戻られる。

王子の変化は微妙なもので、気づくのは私たち王子の側付きだけのようだが。


自室のあるエリアへ歩かれる際も、もちろん「手をつないでほしい」などとはおっしゃらない。

もし王子が私に「手をつないでほしい」とおっしゃるなら、私は喜んでそのお手をおつなぎするのだが。

王子にそう申し出れば、きっと「嫌がらせなの?」と首をかしげられるだろう。

もちろん、嫌がらせである。


魔力量が高いからといって、礼式も迎えていない年少者を王族に迎えることに、私は反対だった。

いくら能力が高いといっても、7歳の少年は、あまえたいざかりの子どもである。

本来なら10歳で養子にだすのもはやすぎるというのが、私の持論なのだ。


もちろん、国に役立つ人材を早々に手元におき、教育を施したいという大臣方のお気持ちもわかる。

ただでさえグラッハの王となれるほどの魔力量をもつ人間は、なかなか生まれない。


魔力量は、比較的親の能力を受け継ぎやすいといわれるが、現王のお子はアール様は礼族レベル、第二子であるコンラッド王子もこのまま王族としてとどまれるかは成人までの努力の結果によるというレベルで、とても王の重責はになえない。

クベール公爵家から養子に来ていただいた第二王子・ユリウス王子は魔力量は現在の王と同じほどあり、王の役割を果たせるだろう逸材だが、できればもう一人……言い方はわるいがスペアになりうる人材が欲しいのだ。


それに、ユリウス王子は一見華やかで社交的な方だが、もともとの性質は工学オタクで、将来は工学大臣になるのが夢だったという。

魔力量が多すぎたせいで自分の夢をあきらめ、王の重責を負われたユリウス王子は、けれど小翼として働いていた工部ではやばやと実績を認められ、成人とみなされるほどの実力をしめされた。

工部では、表立ってはいえないものの、王子が工部大臣になってくれれば……とささやかれているという。

一緒に研究しているだけで、新しい可能性を見いだせる。工学者としてのユリウス王子も、また逸材だったのだ。


王の年齢を考えると、ユリウス王子は成人年齢である20歳になれば、まもなく王位をつがれるだろう。

来年には留学を終えて国に戻られ、カルーセン学院へ入学。成人と同時に、王位を継がれる。

これが我々の予想であり、ほぼ決定したこの国の未来である。


けれど、12年後……、あるいは20年後でもいい。

シャナル王子が成人されたころには、ユリウス王子が退位され、シャナル王子に王位を譲られるという未来はありえないものではない。

退位されたユリウス王子が工部に戻られれば、工部の人間は欣喜雀躍するだろう。

ご自身のお立場を理解されているユリウス王子は決して口には出されないが、留学先での王子の御様子をきけば、王子が本当に望んでいらっしゃるのは、工部だということは誰にでも察せられる。


問題は、シャナル王子である。

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