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お兄様にたくさん褒めていただいて、幸せな気持ちで昼食をいただく。

今日のメインはチーズをはさんだカツレツ。

とろとろのチーズとお肉、さくさくの衣がとってもおいしい。

そういえば、前世のわたくしはコルドンブルーがお気に入りだった。

それからフライドポテトも。


異性の好みは前世と異なるのに、食べ物の好みは変わらないみたい。

不思議ね。


フォークにフライドポテトをつきさして、口に運ぶ。

ほくほくしていて、とってもおいしい。

夢中で食べていると、お兄様が「おいしいね」と笑いかけてくださる。


「ええ、とっても」


おいしいお食事を大好きな人といただくって、考えてみればとても贅沢なことかもしれない。


「エミリオ。お食事はお口にあいますか?」


お兄様と笑みをかわしあって、またうっかりエミリオの存在を忘れるところだった。

この子は、まだ我が家になれていなくて、フォローしてあげなくてはいけないのに。


先ほどもこの新しい髪形をお兄様に褒めていただいて、うっかりエミリオの存在を忘れてしまっていた。

エミリオは、お兄様とわたくしの仲の良い家族ぶりに、自分の居場所を探し求めるようにおそるおそるわたくしたちに声をかけてくれたので、その存在を思い出したのだけど……。

慣れない生活と知らない人に囲まれて困惑する弟を気遣うのを忘れるなんて。素敵な「悪役令嬢」失格だわ。


エミリオの不安をとかすように、親し気に微笑みかける。

けれどエミリオはぎこちなく笑って、端的に答える。


「あぁ、はい。おいしいです」


「そうですか?よかったわ。なにか好きな食べ物や、食べたいものがあれば従僕に言ってくださいね。その日すぐには無理かもしれませんけど、近々料理人が用意してくれるはずですから」


「ありがとうございます」


困ったわ。

エミリオってば、返事は一語以上お話してくれないつもりかしら。

これでは、話の糸口もつかめない。


「ちなみに、今なにか食べたいものはございます?」


「特には思い当たりません。強いていえば、ボリュームのあるものかな。肉とか、揚げ物とか。だから今日の昼食は最高です」


「あら。気があいますわね。わたくしもお兄様も、お肉や揚げたお食事が大好きですの。ハッセン公爵家の人間は、みんな健啖家だって笑われるんですよ」


「リーリア姉様みたいな華奢な方が、がっつり系の食事が好きだなんて意外です。……ハッセン公爵家といえば、武で有名なお家柄です。皆さんが健啖家でいらっしゃるのは、武術の訓練をたくさんされるからでしょうね」


そう言って、エミリオはごく自然に笑ってくれた。

よかった。少しはお話も弾んだみたい。

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