表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

189/190

ユリウス王子-5

シャナルと結婚するつもりなのかと尋ねると、リーリア・ハッセンの顔色は、みるみる蒼くなった。

その姿は、噂が本当だと白状しているようだ。


マジか。


自分で聞いておいてなんだが、噂は噂でしかないと思っていた。

まさか、リーリア・ハッセンが、本当にシャナルと結婚するつもりだなんて。


帰国したばかりの俺にも、即座に耳に入るほど、いまこの王城ではその噂でもちきりだった。

シャナルは以前からリーリア・ハッセンが好きだと公言していたが、この度リーリア・ハッセンもそれを受け入れたと。

父の行方がわからず悲しみにうちひしがれる彼女を、シャナルが支え守る姿は一幅の絵のようだったと。

この非常事態のなかでうまれたひとつの光だと。


聞いては、いたが。


……まぁないだろうと、おもっていた。


ただの無責任な噂だろう、と。

あるいは、シャナルの意図をくんで、シャナルづきの侍官たちが暗躍して、勝手に噂を広めているんだろうと思っていた。


だが、このリーリア・ハッセンの態度はどうだ。

真っ青になって震える小柄な少女の姿はいたいけだが、どうみてもやましいところがあるようにしか見えない。


おいおい。


リーリア・ハッセンは、確か…15歳、だったよな。

シャナルは、8歳か。


年の差は、7歳。


なくは、ない。

なくはないが……。


いや、ないだろ。


え?

え?


いや、だって、8歳だぞ。

7歳の年の差は、恋人だろうが夫婦だろうが、アリだと思う。

しかし、それはもう少し二人の年齢が上だったらのことだろう。


いくらなんでも、8歳と15歳っていうのは、ないだろ?

8歳っていえば、子どもだよな?


そりゃ、シャナルはなにかと規格外な子どもだが、しかし8歳だぞ?


俺が15歳のときだって、8歳の女の子は恋愛の対象外だった。

それが、普通だろ?

え、違うのか?


「違うんです……!」


涙目で、リーリア・ハッセンが言う。


そうか。

違うのか?


いまどきの若者としては、そのくらいの年の差は関係ないと。

恋愛に年齢を問うなんて、ねーよと。


いや、俺もリーリア・ハッセンと3歳しか年齢かわらいないのだが。

世事にも目をむけるようにしているが、基本が工学オタクだからな。

この手のことには、疎いのは否めないが……。


やはり、抵抗を感じるのは、俺の倫理観が保守的だからか……。


いや。

王城中に、二人の恋は暖かく見守られているようだった。

それこそ、俺の祖父母であっても不思議はない年齢の方々も、二人の恋を喜ばしそうに口にしていたな。


ということは、俺は彼らより保守的というわけか。

それは、ちょっとばかり抵抗があるのだが。


平静を装いつつ、思考は横滑りしそうになる。

苦手ジャンルの衝撃って、破壊力が大きいものなんだな……。


だが、そんな俺の視線を、リーリア・ハッセンは非難の視線だととらえたらしい。

涙目で、訴えてくる。


「わたくしは、シャナル王子と結婚だなんて。そんなこと、考えていません!」


「つまり、シャナルとの関係は、ただの遊びだと?」


耳を疑う。

目の前の、小動物的な少女が、そんなことを言うなんて。


なんだ、これ?

シャナルは、年上のおねーさんにもてあそばれたということか?


ちょっとうらやましい、ではなく。


義理とはいえ、シャナルは弟だ。

あまり会ったこともないし、その顔合わせでも生意気な子どもという印象だった弟だが、まだ子どもだ。

加えて、国への貢献度も高い王族でもある。


ちょっとその発言は、聞き捨てならないな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ