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13

食堂に入ると、お兄様の席を真っ先に見た。

驚いたように目を見張るお兄様の姿に、わたくしの胸は期待でいっぱいになる。


「その髪形も素敵だね、リア」


期待いっぱいの目で見つめていたからか、お兄様はにっこりと笑って、わたくしを褒めてくださった。

頬が赤くなったのを感じて、うつむきたくなるけれど、お兄様から目をそらすのももったいない気がして、わたくしは「ふふふ」と笑った。


「ありがとうございます、お兄様!ルルーと一緒にがんばりましたの」


わたくしは壁際にひかえているルルーと目をあわせ、合図をかわす。

ルルーの目にもやり遂げたという自負が宿っている。


目の端に見えるわたくしの髪は、綺麗にまかれていた。

耳の上部あたりからくるくると縦のロール状にまかれたこの髪形は、前世の記憶の中で「悪役令嬢」が好んでしていた髪形だ。

彼女たちが使用していたコテという道具はこちらの世界にはないけれど、幸いわたくしたちには魔術というあちらの世界にはない技術があるので、ルルーとふたりでせっせと髪に熱を加えて、縦ロールにセットした。

そして髪をふたつに分け、耳の後ろでリボンで結ぶ。

と、顔の周囲が金の巻髪で囲まれて、わたくしの地味な顔が一気に華やかな印象になったのだ。


すこしずつ髪を巻きながら、わたくしの顔に華やかさが生まれていくのを、ルルーと一緒に感じていた。

リボンを結び終えた時、ルルーの口からは感嘆のため息がもれたし、わたくしは前世のわたくしの研究成果に感謝の祈りをささげた。


ふだんは顔から浮いてしまうからお化粧もしないのだけれど、すこしだけ口紅で唇に色ものせてみた。

これならお兄様もわたくしを「地味な子だ」と見放さないかもしれない。

安堵と期待で胸がいっぱいで、けれど実際にお兄様に見ていただいて評価をしていただかなくては安心できなくて。


「これなら絶対、ガイ様は褒めてくださいますわよ!」


というルルーの励ましを受けて食堂に来たのだけど、ルルーの言葉通り、お兄様はわたくしの新しい髪形をめいっぱい褒めてくださった。


「見たことのない髪形だけど、リアのかわいい雰囲気をよくひきだしているね。普段のリアは清楚なスズランのようなかわいらしさだけど、今日のリアはピンクの薔薇のような華やかなかわいらしさだ。どちらのリアも私は好きだけどね」


「お、お兄様ってば。褒めすぎです……」


「そう?リアのかわいらしさを言い表す言葉が思いつかなくて、困っているんだけどね」


こ、この髪形は自分でもよく似合っていると思ったけれども、さすがにお兄様のお言葉は過分だと思う。

お兄様のお優しいお心遣いだとわかっているけれど、そんなふうに言われたら、どきどきしてしまう。

目をふせたわたくしを、お兄様が優しく見つめてくださる。


ありがとう、前世のわたくし!

ありがとう、「悪役令嬢」さまたち!

幸せをかみしめるわたくしに、申し訳なさそうな声がかけられた。


「えっと、俺もいるんですけど。挨拶してもいいですか?」


すっかり存在を忘れていたエミリオが、わたくしとお兄様をうろんな目で見ながら、おそるおそる声をかけてきていたのだった。

次は、エミリオ回です。

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