表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

126/190

シャナル王子-14

軍部会議所は、重大な軍事会議の時にのみ使われる会議所。

ここで話されることは、軍事の最重要機密だから、盗聴禁止の魔術とかがかけられている。

あと外国の偉い人との軍事的な話し合いにも使われるから、会議所の中での魔力の無力化、武器使用の無力化のわりと強い魔術がかけられているんだよねー。


だからここに出入りするのは、軍部のお偉いさんたちや王族がほとんど。

王子である僕も、滅多に入る場所ではない。

軍部の所属でもないリアは、このエリアに来るのも滅多にないらしくて、軍部会議所の扉を見るのも初めてだったみたい。

会議所を取り巻く魔術に気づいたのだろう、その膨大な魔術に驚き、息をのんだ。


けれど、それも一瞬だった。

リアは毅然とした表情で、僕を見ると、握ってくれていた手を離してしまう。


「ありがとうございます、シャナル王子。ここからは、もうだいじょうぶです」


……だいじょうぶって顔には見えないけどね。


さっきまで僕の手を握ってくれていたリアの指を見つめながら、僕はいつもどおり「僕が怖いから。手をつないでいて」って、リアに甘えているふりをしてその手を握ろうとした。

けれど、リアは静かに首を横に振って、断った。


「お恥ずかしいところをお見せいたしましたが、わたくしもハッセン公爵家の者です。これ以上の醜態はさらせません」


青ざめた顔のリアにきっぱり言われたら、それ以上何も言えない。


醜態、かぁ。

だよねー。

いっつも「貴族としてー」って気合いれているリアにしてみたら、青ざめて子どもに手をひいてもらうなんて、醜態だよね……。

そんな姿を王城のやつらに見られるの、嫌だったんだろうな。


よかれとおもってしたことも、リアに関してはいつも空回りばっかりだ。

悔しくて唇をかむと、リアはぎこちなく笑う。


「シャナル王子のお心だけ、ありがたく受け取らせていただきます」


リアの笑顔は苦しそうで、こんな時まで気を使わせてしまう僕が、僕は自分で嫌だ。

けど、ちょっとだけだけど、リアはほんとうに嬉しそうにしてくれたから。

こんな僕でも、ちょっとはリアの気持ちの支えになれたのかなって、救われた気がした。


「シャナル王子、どうぞ」


ハウアーに促され、軍事会議所の扉をくぐる。

魔力制約の魔術が、体を覆うのを感じる。


まぁ、この程度の魔力制約なんて、規格外の魔力の持ち主である僕には、たいした影響力ないんだけどね。

……僕で影響ないってことは、サラベス王にとっても影響力ないんだろうなー。

案外この魔術、ザルじゃないの?

こんなんで警備とか、大丈夫なのかな?


ま、僕には関係ないけどね。


けどこの魔術も、リアにとってはけっこうキツい魔術みたいだ。

扉を通った瞬間、もともと青かった顔色がさらに青ざめる。


扉の横に控えていたハウアーが、リアに手を貸す。

成人男性なハウアーは、小柄な女性であるリアより背が高い。

ふらりと足元をよろけさせたリアの肩を抱くように支えたハウアーに、一瞬、殺意ににた怒りを感じる。

ハウアーがリアに触れていたのは一瞬だったけれども、リアがはずかしげにハウアーを見て礼を言ったのが気に障って仕方ない。


そりゃリアよりずっと小さい僕じゃ、あんなふうに支えられなかったけどさ。

必死でリアを守るんだ!って思っていても、手を握るのが精いっぱいだったよ。


あああー、ムカつくなぁ。

こんな場面でもいちいち、自分がリアには釣り合わないお子様だって思い知らされる。

だからって、あきらめる気なんてないけどさ。


「子ども」ってことを武器にしてリアに近づく作戦は、昨日の告白で使えなくなったみたい。

異性として僕のことを見るっていってくれたリアは、今日は僕へのスキンシップが控えめで、僕からくっつこうとしてもかわされる。


ま、予想はしていたけどさ。

でも、僕はリアに比べて年下で、「子ども」なわけで。

これが覆せない以上、「子ども」を武器にして近づけないのは痛い。


リアは愛する父親が行方不明で倒れそうなのに、なんで僕ってこんなことばっか考えちゃうんだろうなー。

はー、やだやだ。

でも、つい考えちゃうんだよなー……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ